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所得税における源泉徴収制度と年末調整について その1

2016/12/05
今回からは、少し固い内容になりますが、毎年この時期になると多かれ少なかれ話題になる年末調整と、これとセットになっている源泉徴収について触れてみたいと思います。わが国では、現在、殆どの国税で申告納税制度が採用されていますが、所得税においても、原則的には、この方式が採られています。しかし、例外的に給与所得者(会社員や公務員等=受給者)については、給与を受け取る際に、その給与の支払者が給与を受け取る人、すなわち受給者の所得税分を天引きし、受給者に代わって所得税を国に納付する仕組みである源泉徴収制度も併用されています。
 
源泉徴収制度と年末調整との関係は、月々の源泉徴収額の総額は概算であるため、1年間の給与収入に対応する所得税額と必ずしも一致しないことから、年末の給与支払時にその過不足分を精算する仕組みであるということができます。このような形で年末調整をすることになる受給者は、現行の制度下では、年間給与収入が2,000万円以下の給与所得者で、この時期、生命保険、地震保険や個人年金の保険料の控除証明書、また、住宅ローンの残高証明書等の添付書類を取り寄せ、それらの書類を支払者に提出して、年末調整をしてもらうことに備えるのが一般的です。
 
こうした手続きを経て確定した税額と源泉徴収によって既に納めている金額との差は、12月(1月の場合もある)の給与で精算されるところから、この呼び名が付けられているものと考えられます。年末調整は、申告納税制度よる確定申告の手間を省くことになるところから、支払者に年末調整を行ってもらった給与所得者は、原則として、確定申告をする必要はありません。しかし、その給与所得者が2ヵ所以上から給与の支払を受けていたり、給与以外に一定額以上の所得があった場合や、雑損控除、医療費控除、寄付金控除等の所得控除を受けようとする場合には、あらためて確定申告をする必要があります。
 
このように、源泉徴収制度と一体化して機能している年末調整制度は、申告納税制度を採るわが国の所得税にあって、例外的な納税手続を経て納税義務を完結させる仕組みであり、給与所得者自らが確定申告及び納付することなく納税義務が消滅するところから、納税者(給与所得者=受給者)が自己の責任において申告する申告納税制度の根幹の理念に沿わないとする議論も見られるところです。すなわちそれは、給与所得者の所得税の申告及び納付が自動的に行われることによる、納税者自身の税に対する関心を希薄化させていることに対する問題意識と言えるものです。
 
しかしながら、今日の社会状況の中で、源泉徴収制度と一体化している年末調整の制度は、当事者としての給与所得者だけではなく、広く国民の間においても違和感なく受け容れられているのが実情です。また、税を徴収する側の国(課税庁)から見ても、この制度は、源泉所得税を早期に確実に効率よく徴収することができる大きなメリットがあり、支持され、定着しているのも事実です。その一方で、そのような課税庁にとっての徴税の合理性の実態は、納税者、とりわけ源泉徴収義務者が無償で行う徴税協力行為によって成立するのも事実であり、その意味においては、問題を内在する制度とも言えます。(続く)

文責 (G・K)

 

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