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所得税における控除について その2 扶養控除

2016/11/23
扶養控除は、子どもや高齢の父母ら、要件に当てはまる親族を養う人の税負担を軽減しようとする仕組みで、養われている人の給与収入が一定額以下の場合、所得から38万~63万円を控除できるものです。控除額は、主として、養われている人の年齢で変わり、年末の時点で16~18歳及び23~69歳は「一般扶養控除」で、1人当たり38万円です。同じく年末時点で70歳以上なら「老人扶養控除」で、1人当たり48万円(父母が同居の場合等は58万円)です。また、年末時点の年齢が19~22歳の人を養っている場合の「特定扶養控除」は63万円です。したがって、年収500万円で所得税率が20%の人が「一般扶養控除」を1人分受けるとすれば、一般扶養控除額38万円に20%を掛けた7万6千円の所得税が減額されることになります。
 
扶養控除の中でも、「特定扶養控除」は控除額が最大となり、その分、税負担は軽減されることになります。これは、この控除の対象となる19~22歳の被扶養者の大学生や専門学校生に当たる時期であり、入学金を始め、授業料などの納税者(扶養者)の多大な出費に配慮したものとされています。また、高校までとは異なり、子どもが遠方の学校に通うために1人暮らしをするとなれば、二重の生活費がかかることになり、家計の負担が重くなります。このような、出費や負担を減らすための政策として、特定扶養控除という制度が誕生したと説明され、かつては、特定扶養控除の対象年齢は16~22歳でした。平成22年以降、高校教育の実質無償化によって高校在学中の家計の負担は軽減されているとして、平成23年分より、対象年齢は現在の19~22歳という設定に変更されています。
 
特定扶養控除は、納税者(扶養者)の年収によって控除金額が変わったり、控除が受けられなくなったりすることはありませんが、被扶養者側には制限が置かれています。被扶養者自身の年収によっては、世帯主の扶養枠から外れてしまうため、アルバイトなどをしている場合は、この点に注意が必要です。特別扶養控除の制度は、一応、学生のいる家庭を想定したものですが、この制度を受けるのに必ずしも学生である必要はありません。「控除対象扶養親族」であり、19~22歳であれば、学生でも浪人生であってもフリーターでも対象になります。ただし、アルバイトやフリーターの場合は、扶養親族の条件となっている、「年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」を満たしていることが要件となっているので要注意です。
 
ここで、所得税における扶養控除をも含めて、大きく所得控除制度全体に目を遣れば、わが国の所得控除制度は、超過累進税率が適用されているため、ピンポイントでその効果なり、役割を果たしておらず、その税負担軽減額も所得の大きさによって異なり、低所得者よりも高所得者の方が有利に働くものとなったりしています。このため、所得税が本来担うべき機能も十分に果たしていないと考えられたりします。前回までに何度も触れてきた配偶者控除然り、今回の扶養控除然りです。もとより、国民(納税者)の租税負担は、相対的に平等・公平であるべきで、それに近づく制度が考慮され、導入されるべきものと考えています。近年の扶養控除は、「年少扶養控除」が廃止され、「児童手当」に代わるなど、新たな政策の財源にするための廃止や縮小が目立ちますが、結局のところ、税制を複雑にしているだけのような印象を持つのは私だけでしょうか。 (了)

文責 (G・K)

 

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