Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 所得税における控除について その1 配偶者控除再考

所得税における控除について その1 配偶者控除再考

2016/11/09
アベノミクスでは、女性の経済社会における活躍がその成長戦略の最重要事項となっていました。その女性の活躍(働く意欲)を阻害すると言われる配偶者控除について、再度、考えてみたいと思います。これまでにも再三触れてきましたが、政府税調は、当初、今年の秋口に配偶者控除を廃止する方針を示していましたが、その方針を転換して存続する公算が大きくなっています。そもそも、配偶者控除を見直す動きが政府内で議論されるようになってきたのは、ネコの目のように毎年変わる税制の仕組みをパッチワークのように繋ぎ合わせてきたため、経済社会の変化に対応できなくなってきたのも理由の一つです。そこでは配偶者控除の対象を103万円から引き上げる案も議論されてきていました。しかし、パートの女性を、より長時間働けるようにしようというのですが、廃止される筈の制度が一転して、拡充されるという変な方向に動き出しているようです。
 
配偶者控除の制度は、高度成長期の1961年に導入されましたが、当時、中小企業等の事業者は、妻が事業の専従者になると、その給与相当額を夫の所得から控除できる制度になっていました。ところが給与所得者は、それができないので、その調整の必要に迫られ、そうした家族を税制面から援助するのが目的でした。しかし、時代が進展し、男女雇用機会均等法が立法されるなど、共稼ぎを含めて女性が働くことが一般的となり、配偶者控除の当初の役割は終わり、近時は、どちらかと言えば、専業主婦優遇税制と捉える人もいるようになってきました。そこで、安倍首相は「働き方改革」を掲げ、働く人を増やし、消費拡大などの経済活性化につなげ、女性の活躍できる環境を整備・拡大し、それによる就労の拡大を目論み、配偶者控除の見直しも、それらの改革の一環として議論されてきました。
 
配偶者控除が女性の就労を妨げている例として、制度の適用範囲が年収103万円以下である、いわゆる「103万円の壁」が指摘され、この壁より収入を低く調整することが一般的な現象として見受けられています。その壁対策として、配偶者特別控除の制度が存在しますが、これで充分と言う程の効果はなく、配偶者控除を見直すことのみでは、結局、堂々巡りとなってしまいます。そこで、「専業主婦を優遇する配偶者控除に代わって結婚世帯を広く援助する仕組み」と言う謳い文句の財務省案である「夫婦控除」が登場し、政府税調も一旦はこれを支持し、これで決まりかと思いきや、早々に退けられ、昨今は、ひとまず控除の適用範囲を「年収150万円」にする検討が始まっているとの新聞報道がなされています。
 
先日の新聞に、配偶者控除の適用範囲を150万円にして年収の上限を高くしたら、主婦は今より働くのでしょうか?という、興味深い記事が掲載されていました。結論は、「案が実現しても女性の就労に中立的な仕組みにはならない」としてNOでした。また、企業の配偶者手当制度や現行の社会保険料を加味した上で、配偶者控除の適用範囲を150万円以下にした場合の試算(夫の年収500万円)として、夫婦の手取り額の増加が認識できるのは妻の年収が200万円台になってからであるとし、結局、130万円の壁の範囲内で働く女性が増えるとする記事もありました。安倍首相の唱える「働き方改革」によって働く人を増やし、消費拡大などの経済の活性化を図り、女性が活躍できる環境を整えて就労の拡大を目指すためには、正社員の労働時間を見直し、家事、育児を妻と分担できるようにする、そうすれば、妻の「働き方」の選択肢は増すものと考えています。 (了)

文責 (G・K)

 

金山会計事務所 ページの先頭へ