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税の徴収とその使われ方の適正性について その

2016/10/21
今回のコラムは、標題と直接の関係はありませんが、前回も取り上げた「夫婦控除」と「配偶者控除」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。もとより税制は中立性が重要視されるものであり、政治的過程によって税制が猫の目のように変化することは望ましいものではありません。「働き方改革」を掲げる安倍首相の強い意向を受け、自民党税調が主導する形で政府税調でも議論され、マスコミリリースされた筈の新「人的控除」としての「夫婦控除」が、こうも容易く、そして、そう時間が経過しないうちに、「新制度」を導入すると税収減になり、世帯でみれば増税になるケースが多く、極め付きは、与党の選挙対策で元の木阿弥になるのであれば、政治家の先生方の発想、信念の程に疑いを持ちたくなります。

 

ともあれ、確認の意味で、前回も述べました「配偶者控除」について触れたいと思います。新たに検討されている案は、配偶者控除の適用範囲を、年収103万円以下で働く妻を対象にして拡大するというものですが、当該範囲の拡大に伴う税収減を防ぐため、控除を受ける側の夫の年収に1,000万円の上限を設け、その適用範囲については「年収150万円」程度にするとの報道がなされています。いわゆる、103万円の壁を無くすために"配偶者控除を拡大"とよくマスコミに取り上げられますが、では、「103万円の壁」とは何でしょうか? 所得が38万円以下の配偶者が、この配偶者控除の対象となりますが、例えば、妻のパート年収が103万円以下ですと、給与所得控除の65万円を差し引くと、所得は38万円以下となり、103万円を超えると、所得が38万円を超えるため、配偶者控除の対象ではなくなることから、所得税の「103万円の壁」と言われています。

 

では、前回も述べました「配偶者控除」が年収150万円までに拡大されるとどうなるのでしょうか?配偶者控除の適用範囲が「年収150万円」程度に拡大されると、例えば、妻のパート年収が150万円ですと、上記と同様、給与所得控除の65万円を差し引き所得は85万円となります。また、妻が配偶者控除対象者になりますと、妻の年収が120万円の場合、夫の年収が200万円から300万円の家庭では8,500円の減税、夫の年収が500万円の家庭では約1万7,000円の減税、夫の年収が700万円の過程だと約3万4,000円の減税という試算がありますが、実際には諸条件によって、この試算どおりにはならないことがあります。また、「103万円の壁」ばかり注目されていますが、その他にも、サラリーマンの社会保険被扶養者の年収「130万円の壁」が存在しています。

 

仮令、年収150万円までに配偶者控除の適用範囲が拡大されて、その対象者となったとしても、サラリーマンの社会保険被扶養者の年収「130万円の壁」はそのまま残ることになります。この他、厚生年金、共済年金に加入するサラリーマンの配偶者は、年収130万円を超えると見込まれた場合、社会保険料を自ら支払う必要が出てきます。これがいわゆる、年収「130万円の壁」で、国民年金と国民年金保険料の負担額は年間約16万円です。この負担額は小さくないので、配偶者控除が年収150万円に拡大されても、103万円の壁同様、年収130万円までに調整するのは必然と思われます。これが、前号で述べた、配偶者控除の適用範囲を拡大しても、「103万円の壁」が、新たに生まれる壁に置き換わるだけと言ったことを意味しています。限られた時間の中で、平成29年度税制改正の濃密な議論がなされ、国民(納税者)が納得できる制度が生み出されることを見守っていきたいと思います。(了)

文責 (G・K)

 

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