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社会保障と税の一体改革は進んでいるか? その1

2016/09/04
前回も触れましたが、社会保障と税の一体改革について、政府は、「消費税の引き上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます。社会保障制度は、すべての世代が安心・納得できる全世代型へ改革されます。」と説明をしてきていました。これにつき、最近の新聞に、「一体改革が国民に受け入れられない最大の理由はそのスキームにある」として、「消費税は計5%引き上げられるが、そのうち4%が財政健全化(社会保障財源の赤字国債から税財源への振り替え)に回され、社会保障の充実分は1%にすぎない。増税による増収分の2割しか社会保障充実に回すことができず、これでは国民の将来不安解消にほとんど効果がない。」とする内容の記事が掲載されました。

 

また、同紙は、「このままでは経済成長も財政再建も達成されず、国民はある日突然訪れる危機で死んでしまう『ゆでガエル状態』にある」として、この状況をどう変えていくかは、国民や政治が増税を受け入れやすいように、発想の転換をはかるべきだとしています。具体的には、社会保障と税の一体改革の取り組みをより進化させて、「消費税の増税による税の増収分についてのすべてを社会保障の充実・安定化に充て、国民の将来不安の解消に使うべき」としています。それに加え、「高所得者により多くの恩恵が及ぶ軽減税率を廃止し、増税分の5兆円強のすべてを勤労世代を中心とする社会保障や給付型の奨学金創設の財源に充てるべき」との提言をしています。

 

これにより、勤労世代は安心して財布の紐を緩め、結果としてマクロ経済の需要喚起がはかられるとし、他方で財政再建については、「高齢富裕層にも支給している年金や医療を徹底的に見直すことにより、経済成長と財政再建の同時達成が可能」になるとしています。同紙のここまでの指摘と提言に異論はありませんが、ただ、ひとつ足りないものがあるのではないかと考えています。それは、軽減税率を廃止した場合の消費増税に伴ういわゆる逆進性の問題(低所得者対策)についてはどうしようというのでしょうか?この点については、直接触れられ、あるいは明示されておらず、筆者とは、若干、考えを異にするところです。

 

軽減税率については、事業者を含め国民全体にも多大な負担を伴うものであるところから、そのデメリットにつき、これまでに何度も触れてきました。しかし、政府与党は低所得者対策といえば、軽減税率しか念頭にないかのように、強引にその導入に舵を切ろうとしています。増税が2年半延期されているこの時期に、悪評高き軽減税率に代えて、かなりの予算を既に投じて導入されているマイナンバー制度を活用し、低所得世帯(ex.年収300万円以下)に消費税負担分を還付(給付)する政策を検討し、その制度導入の実現化をはかるべきだと考えています。これにより、低所得者ほど消費税負担割合が高くなる、逆進性が緩和されることになります。

 

経済政策と財政政策そして税制、これらは相互に密接な関係を持っています。すなわち、経済状況は税収を左右し、税収状況は財政出動を旺盛にしたり、抑制的にしたりすることができるからです。このことから、既に国民に1000兆円を上回る借金をしている政府が取るべき対策としては、従来型の経済政策ではなく、わが国の体質を変えるような構造改革を行うことが肝要であり、そのヒントは、少子高齢化対策にあると思われます。

 

先にも触れましたが、発想を転換し、社会保障と税の一体改革により、これまで高齢富裕層にも厚かった保障を勤労世代にシフトさせ、その恩恵が及ぶようにしていくべきだと考えています。また、女性の社会進出を促進する税制としての配偶者控除の廃止や年金制度の改革が議論されるべきですが、この点について、自民党税制調査会の宮沢会長は、専業主婦や年収103万円以下のパート主婦のいる世帯の「配偶者控除」の見直しに向けた議論を本格化させる方針を明らかにしています。 (次回に続く)

文責 (G・K)

 

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