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消費税、その増税延期と増税時期 その3

2016/08/05
最近のIMF(国際通貨基金)の日本経済に関する年次審査報告書によれば、「現状では経済成長、財政健全化、物価上昇のいずれの目標も予定通り達成できず、消費税増税を先送りするなど政策の不透明感も高まっている」と分析し、「アベノミクスは岐路に立たされており、思い切った改良が必要だと提言した」と新聞は報道しています。安倍政権は平成25年から10年間の平均で名目3%、実質2%の経済成長を目標にしていますが、IMFは、実質で、2016年が0.3%程度、2017年は経済対策の効果を除けば、0.1%と予測しています。これには最近の円高が輸出と投資の足かせになると見込んでいることがあるようです。

 

またIMFは、中長期的にも日本経済は0.5%程度の低成長が続くと指摘し、「消費税の10%への引き上げを2019年10月までの2年半先送りするとした決定を撤回し、税率を0.5%か1%ずつ小刻みに引き上げる増税方法に直ちに着手するよう提案し、財政への金融市場の信認を維持し、金利の急騰を回避するために税率は最低15%とするように」との提言をしていると報じられています。8月2日、折しも政府は28兆円を超える経済対策を公表しました。これはアベノミクスの再加速を意識したもので、安倍首相の意向を強く反映したものと言われていますが、首相には、IMFの年次審査報告書における提言はどのように写っているのでしょうか。

 

ところで、今回の経済対策の中身は28兆円の全てを国が支出するものではなく、国と地方の支出は7.5兆円、財政投融資(国から民間事業への資金の貸し出し)が6兆円、政府系金融機関による融資枠の設定等で14兆6千億円となっていて、いわゆる真水の部分は1/4です。このように、事業規模こそ28兆1千億円ですが、既に巨額の財政赤字が積み上っており、国の支出を増やすことが難しい中、実態は民間の支出も加算して事業規模が嵩上げされているところから、一部の業種からは歓迎する声が上がる一方で、「条件不利地域の振興」などの従来型の公共事業も目立ち、低迷する消費や企業の設備投資の本格的な回復につながるか、それらの実効性については未知数だとする見解も多いようです。

 

経済の長期停滞と高齢化社会の下で、経済的格差は拡がり続け、ついには「格差社会」と呼ばれるように社会のあらゆる面で格差や歪みがみられるようになってきました。これらの「社会的強者」と「社会的弱者」との格差に歯止めを掛け、起こり得るリスクを軽減しようとするのが社会保障の考え方であり、それを担保する制度が「社会保障制度」です。しかし、それらの役割を果たすはずの制度が、現状を維持、ないし持続可能性が危うくなっています。デフレを脱却し、景気回復に大きく作用する個人消費が伸びないのは、「将来不安」が払拭されない限り、どのような経済対策が打たれても、その効果は限定的だと思われます。

 

ともあれ、参院選後、政権ないしその経済政策は信任されたとして、「アベノミクス再起動」を大義名分に、実効性については未知数だと言われてはいますが、この度の28兆円を超える経済対策が公表されています。今回の経済対策で政府は、「未来への投資の実現」を掲げ、1.1億総活躍社会の実現加速、2.21世紀型のインフラ整備、3.英国の欧州連合離脱に伴うリスク対応、4.熊本地震や東日本大震災からの復興、5.好循環強化のための構造改革を列挙し、首相は「民需主導の持続的な経済成長と1億総活躍社会の確実な実現を進めたい」としています。これらの経済対策が所期の目的を達成することを期待したいと思うところです。 (次回に続く)

文責 (G・K)

 

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