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消費税、その増税延期と増税時期 その2

2016/07/21
前回までに、わが国の「構造的要因」によって財政赤字が累増、既に巨額の国債残高が積み上っており、消費増税なくして財政規律の健全化は難しい旨を述べてきました。そこでは、中長期的には、10%台の半ばから後半の税率の引き上げは避けられないとの見通しを述べていたところです。とは言うものの、消費増税によって景気が腰折れしてしまっては元も子もありません。一方、そのような状況下での増税延期は、国の債務をますます膨ませ、社会保障費の削減を含めた「政策に必要な経費」は大きく見直しが迫られることになります。では、増税時期は今かと言えば、それも難しく、アベノミクスの3本目の矢とされた成長戦略による経済成長に頼らざるを得ないのがわが国の置かれている実情だろうと思われます。

 

さらなるアベノミクスの加速を前面に打ち出しての参院選の結果、衆参両院で安定的多数を手にした安倍首相は、今後具体的にはどのような政策を打ち出すのでしょうか。今年度も基礎的財政収支(税収・税外収入などの「歳入」と、国債費を除く「歳出」との収支差額を表し、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標) は、かなりの赤字となる見通しで、これを黒字化するには、消費税の引き上げなどで「歳入」を増やしたり、社会保障費を抑制するなどして「歳出」を抑えたりする必要があります。安倍首相は会見で「財政再建の旗は降ろさない」と述べ、消費税率の引き上げを延期しても財政健全化目標は堅持する考えを示していますが、その具体的内容と勝算はあるのでしょうか。

 

増税延期の影響は財政だけではなく、私たちの生活にも直接及ぶことになります。というのも、安倍政権は当初、消費税率を8%から10%に引き上げた場合、年間5.6兆円程度の税収増が見込めるとし、そこから軽減税率の導入に伴う減収分を差し引いた年間4兆円程度のすべてを社会保障費に当て、その制度の充実と安定化を図るとしていました。すなわち、「子ども・子育て支援の充実」としての、「待機児童の解消に向けた保育士の給与の引き上げ」や「保育施設の整備や運営等の支援」、また、「所得の低い高齢者に最大で月5000円の給付金の支給」、さらには「年金の受給資格を取得するための期間を現在の25年から10年に短縮」するというものでした。

 

しかし、首相は6月1日の記者会見で、「社会保障については、給付と負担のバランスを考えれば、引き上げた場合と同じことをすべて行うことはできない」として消費税が10%になった時に予定していた、上に触れたような充実メニューは、当面実施を見送ることを明らかにしました。これに関連しては、経済同友会の小林代表幹事は、「国民の支持が高い政権が増税できないとなると、他の政権では無理だと思われる」と述べています。また、日本商工会議所の三村会頭は、「消費税率の引き上げは消費にいい影響は与えないが、社会保障制度を維持するためにも必要で、残念だ」とし、さらに、「2年半後に消費税率の引き上げがなされないようなら、日本は財政的に破綻する」との、かなりショッキングな考え方を示しています。

 

わが国の債務残高が増えているのは、単純に政府の収入以上に政府が使ってしまっていることを示しています。消費税収は国税の3割程度であり、その税収だけでは社会保障費さえも賄い切れず、既に巨額の残高が存在する中、今後も社会保障需要が増大していくことを考慮すれば、政治的要因で消費増税ができないなら、当面は消費税以外の税収を確保する方策を取らざるを得ないことになります。その場合には、所得税の配偶者控除を廃止することが議論の端緒となるべきであり、大多数の国民が負担を共有することで財政健全化の歩みは進められるものと考えています。(次回に続く)

文責 (G・K)

 

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