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参院選とその争点の希薄化懸念 その1

2016/06/19
政治資金流用をはじめとする公私混同問題をめぐり、批判にさらされていた舛添東京都知事への都議会自民、公明、民進、共産などの各党の共同提出による不信任決議案を前に、都知事は、自らその職を辞する旨をようやく発表しました。聊か遅きに失した嫌いがあり、また、定例会見を聞いて為政者と都民の感覚に大きな乖離があると感じていたのは筆者だけではなかったようです。都民、否、世間一般の方々からは、政治資金使用の公私混同や高額な海外出張費等々の金銭感覚や法令の範囲内なら許されるとする公用車を利用した別荘通い等が一庶民の感覚からは大きく逸脱するものとして捉えられていたのでしょう。

 

当初、安倍首相は今度の参院選で、消費増税の再延期の是非について国民に信を問うとしていましたが、途中から「信を問う対象」が消費増税の再延期の是非なのか、それともアベノミクスという経済政策なのか、あるいは水面下にある安倍政権の憲法問題、安保法制等の政策全般に対してのフリーハンドを与えることなのかが、ハッキリしなくなってきていました。そこに、舛添都知事の辞任、都知事選のスケジュールが加わったことから、ここにきて今度の参院選の争点が希薄化してきているように思われ、折角、選挙権年齢の18歳引き下げが実施されても、参院選への関心は拡散化(政治への一層の無関心)していくような気がしてなりません。

 

NHKの「日曜討論」で、参院選の争点について、自民党がアベノミクスは「道半ばだ」として一層、前進させるかどうかが問われると主張していましたが、これに対し民進党は、「強い者をより強くする政策だ」としてアベノミクスの軌道修正を訴えていく考えを示しました。上にも触れたように、参院選での「信を問う対象」が消費増税の再延期の是非からアベノミクス継続の是非に変わったのは何故か、また彼我はどう繋がりをもつか、それとも宗旨替えをしてしまったのか、「新しい判断」だけでは説明責任を果たしたことにはなりません。ここは、アベノミクスの現状認識とそれを継続せざるを得ない状況を国民の前に詳らかにする必要があると考えています。

 

与党、自民党の茂木選挙対策委員長は、「安倍総理大臣は、国民の信を問う選挙だといっており、今まで以上に重みを持つ選挙になる。この3年半、アベノミクスで日本経済の再生に全力で取り組み、間違いなく、日本経済は改善の兆しを見せているが、消費の弱含みや地方創生などの課題もある。アベノミクスは道半ばであり、この道をさらに力強く前に進めるのか、それとも民主党政権時代の混乱の時代に時計の針を戻すのか。前進か後退かが問われる選挙だ」と述べていますが、これについては安倍首相が「新しい判断」の具体的説明を含めて、国民に寄り添う形で、直接、丁寧に語り掛けて理解を得ることが重要であると考えています。

 

与党である公明党の斉藤選挙対策委員長は、「道半ばのアベノミクスを続けさせて頂くことができるのかどうかが一番の争点」だとしながらも、「自由と民主主義を基調とする保守中道路線を選ぶのか、社会主義、共産主義革命を目指す勢力が政治の中心になるのか、日本の進路を問う選挙」だとしています。また、民進党の玄葉選挙対策委員長は、「強いものをより強くという経済政策がアベノミクスであり、普通の人から豊かになり、多くの人をおいてきぼりにしない経済政策に軌道修正すべきだ。また、海外で自由に武力行使をする国になるのか、あくまで抑制的であり続けるのかも大きな争点だ」と述べましたが、争点は、シングルイシュー・ポリティックスの方が、今回の参院選からはじめて有権者となる若者を含む全ての有権者にとって解りやすいと考えています。

 

アベノミクスは、これまで国民の「経済成長の期待に働きかける政策」だったように理解されます。打ち出された経済政策等を、異常とも思える強気な手法(日銀による金融の異次元緩和等)をとって推し進めることで、デフレからの脱却を図り、国内外の人々の閉塞感を打ち払い、ムードを盛り上げることで個人消費を刺激してこれを増大させ、企業による設備投資を活発化させようとしたものと評価されています。残念ながら、現在は、アベノミクスのカンフル剤効果が薄れてきているように感じられます。アベノミクスにとって、より肝心なことは、これまでの経験から何を学び、その経験を今後の政策にどのように活かしていくかということだと考えています。 (その2に続く)

文責 (G・K)

 

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