Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 消費増税の延期とアベノミクス その2

消費増税の延期とアベノミクス その2

2016/06/05
安倍首相は、正式に、消費税を10%に引き上げる時期を2019年10月に再延期することを表明しました。このこと自体は、(軽減税率の導入の延期も含めて)これまでのコラムでも触れてきたように、妥当な判断だったと思います。しかし問題は、先送りした時点で確実に増税できるような環境が整っているか、すなわち「強い経済」が実現しているかという点です。財政規律の観点からは、近い将来の消費増税は必須であり、仮にアベノミクスの1本目の矢である金融政策が十分な効果を発揮せず、2本目の矢である財政出動に重きを置いた挙句に、2年半後の増税にも失敗することになれば、アベノミクスの失敗が顕現化し、日本は財政破綻する虞すらあります。

 

事ほど左様に、報道によれば、海外メディアのトーンは、増税、すなわち10%への引き上げ時期の延期によって、わが国の財政健全化に向けた取り組みも先送りになるとし、この問題への懸念が高まっているとの論調が見られます。また、2014年4月の5%から8%への引き上げで、日本経済が景気後退の局面に陥ったとするコメントが殆どの記事に見られる中、NYタイムスは、安倍政権は「賃上げ・物価上昇に失敗した」と報道し、BBCは、「安倍首相が何よりも避けたかったことは、アベノミクスの失敗を表明することだ」と報じていて、そのいずれも、アベノミクスの効果を否定ないし疑問視する内容となっています。

 

このような国内外からの批判やリスクを振り払うために、安倍首相は、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす必要がある」と述べ、「今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる『新しい判断』をした」と述べています。この発言に対しては、これまでのアベノミクスのエンジンが失速したことを認めるもので、この後もエンジンの「空ぶかし」に推移し、反って「排ガス」をまき散らすのではないかと揶揄されてもいます。これには、これまで一貫して「増税延期はない」と強調してきたにも拘らず、十分な説明責任を果たさず、選挙(参院選)を睨んで引き上げ延期を決定したことへの反発もあるものと思われます。

 

安倍首相は、今度の参院選で「国民に信を問う」としていますが、その信を問う対象が「消費増税の再延期」なのか、それともアベノミクスという「経済政策」なのか、あるいは安倍政権に対してフリーハンドを与える、いわゆる「全権委任」なのかの具体的な説明はなされていません。首相が明らかにしたことは、「これまでのお約束とは異なる『新しい判断』であり、『アベノミクス加速か、後戻りするのか』が参院選の最大の争点だ」と言うことです。明らかなことは、国会が閉会し、既に選挙モードに突入していることです。

 

安倍首相はまた、「総合的で大胆な経済対策を今秋に講じる」とし、2016年度第2次補正予算案を編成し、秋の臨時国会での成立を目指す考えも示していますが、その財源については明らかにしていません。2015年度末時点で約1050兆円にも積み上っている国の借金、与党内(実態は安倍首相個人のリーダーシップによるところが大きいと思われますが)のみの議論で決することなく、国家百年の計の原動力たる税制は、今こそ与野党が小異を捨て協力の下、その構築を図る時期だと考えるものです。

文責 (G・K)

 

金山会計事務所 ページの先頭へ