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相続こぼれ話  その3(自らの相続分を共同相続人に譲り渡したら...)

2016/05/05
お客様からご依頼を頂く相続案件の内容は様々であり、一つとして同じ内容の事案はありません。今回ご紹介する事例は、お子さんのおられないご夫婦のご主人が亡くなられたことによる相談とその相続関係手続きのご依頼を頂いたものです。被相続人であるご主人は3人の兄弟姉妹でしたが、そのうちのお1人は既に亡くなられていて、法定相続人及び法定相続分は、被相続人の妻が3/4、被相続人のご兄弟2人とその代襲相続人お1人が、それぞれ1/12ずつです。

 

前回までにも触れてきましたが、近時の相続をめぐる問題の多くはお金をめぐる「争族問題」になりがちであることがあります。また、少子高齢化が進展する中で、法定相続人が「配偶者と子」という一般的な構成から、法定相続人が「配偶者と兄弟姉妹、ないしはその代襲相続人」といったように、相続のパターンが多様化していることもその要因の1つとして考えられます。日頃はあまり交流のない、比較的疎遠な関係にあるご兄弟姉妹やその代襲人ともなれば、意思疎通もままならず、非常に厄介な問題となる場合があります。そのような問題に加えて、自らの相続分を他の共同相続人に譲渡する場合などは、さらに問題を複雑化させることがあります。

 

分割協議の事前の話し合いにおいて、被相続人の2人のご兄弟姉妹は相続財産の受け取りを辞退(相続放棄をするのではなく、自らの相続分をそれぞれ被相続人の妻に譲渡)され、もう1人の被相続人のご兄弟の代襲相続人は、法定相続分を相続したいという意向でした。当該代襲相続人の主張は、本件の場合には、辞退されたお2人の方の相続分が分割前の相続財産に加算されるのだから、自分の受け取り分は遺産分割後の1/12ではなく、これに相続財産の受け取りを辞退された被相続人2人の兄弟姉妹の相続分が加算される筈だから、ご自分の受け取り分はもっと増えるのではないかというものでした。

 

このように、共同相続人のうちで自らの相続分を他の共同相続人に譲渡する場合、当該相続分の譲渡を認める直接の規定はありませんが、民法は905条1項において、「相続分の取戻権」を次のように規定しています。すなわち、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」 と規定しています。このことから、一般に、第三者はもとより、共同相続人間においても、当然に相続分の譲渡は認められるものと考えられます。(平成5年5月28日の最高裁の判決は、「相続税法55条本文にいう『相続分』には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれる」としています。)

 

従って、譲渡人(被相続人の2人のご兄弟姉妹)の相続分は譲受人(被相続人の妻)である共同相続人に移転し、譲受人である共同相続人は、譲渡人の遺産全体に対する割合的な持分権をそのまま取得することになります。そうすると、譲渡人がその相続分の全部を譲受人に譲渡されると譲渡人の相続分はゼロとなり、譲受人の相続分がそれだけ増加し、遺産分割が行われれば、相続開始の時に遡って被相続人から直接取得したことになり、この結果、代襲相続人の主張はその前提を欠き、法定相続分1/12をそのまま相続することになります。このことは、共同相続人間においては、恰も相続分の譲渡人が自らの相続分を放棄したのと同様の効果をもたらすことになります。

 

税理士業務に係る「余談」を、若干の法律的視点を交えて述べてきましたが、「相続こぼれ話」のテーマに関しましては、一旦、終わりとさせて頂きます。 

文責 (G・K)

 

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