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経済財政運営の基本方針と消費税の増税議論

2017/08/07

首相は83日に内閣改造を行い、第3次安倍改造内閣を発足させました。政権への支持率急落のきっかけになった加計学園の問題や首相の庇護を受けているとされる稲田前防衛相の南スーダン国連平和維持活動に派遣された陸上自衛隊の日報隠蔽への関与問題での引責辞任なども重なり、このタイミングでの内閣改造となったと思われます。首相は同日夜に官邸で記者会見して、政権の信頼回復・浮揚を目指すため、新内閣を「結果本位の仕事人内閣」と名付け、経済最優先で政策を推進していく考えを示しました。未だデフレの状況から脱し切れていない日本経済にとって、経済最優先の政策を掲げることには大いに賛同するものです。

 

ところで、平成2969日に内閣府が公表した「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太方針)には、「消費の活性化」には触れられているものの、平成3110月に先延ばしされている消費税率10%への引き上げについての記述はありません。肥大化していく一方の社会保障費、すなわち年金や医療、介護費を賄うためには消費増税を避けることができず、現政権もかつての「三党合意」を受け継いでいる筈ですが、政権(政治家)にとって不人気な政策は先延ばしされる傾向が強く、これまで2度も引き上げは延期されてきています。しかし、周知の通り、わが国の財政は危機的な状況にあり、財政再建は非常に難しい状況にあります。

 

消費税が10%に引き上げられ、そしてアベノミクスによる、若干、高めの経済成長が実現できたとしても、年々の政策経費(国の一般会計予算の歳出から国債の元利払いや地方交付税交付金などを除いた額であり、その歳出は景気や経済状況に応じて時の政府の裁量で内容や規模が決められる費用です。)に充てるための税収は、平成32年度時点では82千億円不足すると新聞報道されています。これに関連して、首相は85日のテレビの番組の中で、平成3110月の消費税率10%への引き上げについて、「予定通り行っていく考えだ」と述べています。内閣支持率の急落で与党内からもアベノミクスへの批判が出ており、財政再建に取り組む姿勢を強調したものと思われます。

 

増え続ける一方の社会保障費や子育て支援の受け皿整備等、既に消費増税を見込んで動き出している施策もあるところから、過去2度の引き上げ延期がなされたように、この度は再々延期とはいかないとしても、いわゆる骨太方針に消費税率10%への引き上げについての記述がないのが気にかかるところです。政治評論家の間には消費増税の延期判断は、首相の政権運営のスケジュールとも密接に絡み合うとの見方があるようです。すなわち、首相は平成32年に憲法改正をしたいと表明しており、30年中に憲法改正の是非を問う国民投票を実施する必要があります。衆院選と憲法改正の国民投票を実施するタイミングで、消費税率引き上げの再延期に動く可能性を否定できないとするもので、そうすると、その際に障害となりかねない財政健全化目標を修正する布石を平成29年時点で打とうとしているとの解釈もできるとしています。

 

しかし、首相にとっての大衆迎合的なこの消費増税の再々延期は、言わば両刃の剣とも言え、自らが掲げてきた公約の修正をも意味し、それなりの国民の納得のいく理由付けが必須であり、それをなくしては自身に対する国民の信頼喪失に加えて、政権への支持すら失いかねないと考えられます。況して前回の延期時に首相は景気低迷をその理由としていましたが、その際には、次の増税に向けて景気条項を削除することを明言し、財政再建に取り組む姿勢を強調しました。消費増税の予定が「骨太方針」から姿を消した現在、日本の財政運営は大きな節目を迎えようとしています。

 

                                                                                         文責(GK

 

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