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消費税率の引き上げは高等教育無償化のための必要条件

2017/08/20

2カ月前のここでのコラムに、高等教育無償化が政府内で検討されているとして、その趣旨には賛同はするものの、先ずそのための財源としての消費税の再々延期はされるべきではない旨を記述しました。以前にも述べたので重複しますが、筆者はかつて大学で教鞭をとっていたこともあり、高等教育無償化の議論については格別の関心を持っているものです。18歳人口の減少からわが国の私立大学の44.5は定員割れの状態にあり、1992年に約205万人だった18歳人口は、2008年には120万人台まで減少し、その後は横ばいで推移していましたが、その安定期も2018年には終わりを告げることになります。因みに、2019年の18歳人口は約116万人になり、1992年に比べて約89万人減ることになります。

 

このような少子化や経済の低成長期にあっても、大学はその数および入学定員が減るどころか、逆にそれらは増え続けてきました。これには、4年制大学への進学率が伸び、2009年度に初めて50%を超えたことも背景にあり、2人に1人は大学に進学するようになったこともあります。これは、大学を選ばなければ、必ずどこかの大学に入学できてしまう「大学全入時代」や「大学のユニバーサル化」といわれる現象です。このことについてのメリットやデメリットは、多くの若者らに高等教育を受ける機会を与えられるようになったことが挙げられる半面、学力や個性の多様化によって教員の教育活動が困難になること、学生の学習に対するモチベーションの低下等が指摘されてきました。

 

これらの問題に対し、わが国では漸く大学の規模の適正化の議論が始まったと近時の日本経済新聞は報じています。それによれば、「少子化による教員採用減が確実な国立大の教員養成大学・学部に対し、文部科学省の有識者会議は定員削減や他大学との機能集約・統合を求める報告書案を示した」としています。また、「東京23区内の私立大の定員増を今後認めない方針を決め」、「若者の東京一極集中を是正する目的」だとしています。国立大学に限らず、私立大学においても、高等教育の少子化を踏まえた学部・学科の統合・再編成や入学定員の削減等の適正規模の議論・検討がなされ、時代にマッチし、地域にも受け入れ可能な、特性を持った高等教育の役割を果たすべきと考えています。高等教育無償化の議論の前に、先ずは、これらの議論がなされるべきであると考えています。

 

以前にも触れましたが、大学の入学金や授業料を無償化するためには約31千億円かかると試算されているところから、政府、財務省がこの度プレスリリースしているような、評価に応じた大学への補助金の傾斜配分には大いに賛同するものです。高等教育無償化のみならず、高齢化の下で膨らむ社会保障関連の財源不足は年々30兆円を超えるものとなっている現実があります。加えて、高等教育無償化で進学率が上昇するようなことがあれば、さらなる財源を必要とします。この状況の中で、これまで2度延期された消費税率10への引き上げが、予定どおり平成3110月に行われなかったとすれば、さらなる財政逼迫を招き、それは政府の採るべき政策も制約を受けることを意味します。

 

すなわち、消費税率の引き上げは高等教育無償化のためには必要条件と言えるのではないでしょうか。教育国債を発行して高等教育の費用を無償化する案もあるようですが、その負担を将来世代に先送りするよりは、現世代の国民全体で確実に広く薄く負担していく方がベターだと思われ、消費税率の引き上げ時期の再々延期はないものと考えられます。

文責(GK

 

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