Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 衆院解散の大義と消費税の増税分の使い道

衆院解散の大義と消費税の増税分の使い道

2017/10/07

衆議院が928日に、内閣総理大臣の専権事項だとして解散されました。解散権が真に総理大臣にあるかについては、議論のあるところです。というのも、わが国の憲法は第7条において、いわゆる「天皇の国事行為」を定めており、その3号に「衆議院を解散すること。」を規定しています。しかし、それはあくまでも「内閣の助言と承認により、国民のために」天皇が衆議院の解散を行うとするものです。ともあれ、今回の解散の大義について安倍首相は、当初、2年先の201910月に消費税率を現在の8%から10%に引き上げることについて、国民に信を問いたいとしていました。

 

多くの国民は森友学園、加計学園問題はケリがついていないと感じ、また、野党がその疑惑解明ために憲法に基づいて臨時国会の開催を求めていても、疑惑隠しとも取れる態度でいるうちに訪れた、野党第1党の内部崩壊や北朝鮮が日本上空を通過させる弾道ミサイルの発射を繰り返したり、また、核実験を強行する事態に安倍首相の支持率が回復するに至りました。このチャンスを捉えて、首相は9月の28日に召集された臨時国会の冒頭で所信表明演説も代表質問もなく、また、野党が要求した「森友・加計疑惑」の審議もなく、衆院を解散しました。首相がこのタイミングで解散を決めたのは、自からの支持率回復のほか、自民党の支持率が堅調で、野党が弱体化している状態に乗じての判断だとみられています。

 

しかし、解散が現実のものとなり、安倍首相の対抗勢力として新党結成に国民の注目が集まるや、首相は前言を翻し、「この解散は『国難突破解散』だ」と言うようになりました。北朝鮮をめぐる緊張が続く中で、野党などからは「なぜこの時期に選挙なのか」という批判の声に対して、首相は「むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、北朝鮮問題への対応について国民に信を問いたい」と語り、自ら当初の解散の大義は大義ではなかったことを曝け出す形となりました。それとともに、消費税についても10%に引き上げた増税分は、子育て支援、教育無償化の財源に充てる、「全世代型の社会保障改革」を打ち出し、消費税の使い道の見直しについて「国民の信を問いたい」とも述べています。

 

臨時国会冒頭での解散の大義を、「後からこじつけて作って持ち出してきた詭弁だ」との非難も見られ、事実、誰に対して何を問うのか、その正当性にも曖昧さが感じられるのは筆者だけではないような気がしています。加えて、このコラムにおいても、数度にわたりわが国の財政状態については触れてきましたが、その危機的状態にある財政赤字を201910月からの消費税増税による増収分で手当てするため、当初は見込まれる約5兆円の税収増のうち約4兆円は国の借金返済に、約1兆円を社会保障の拡充に充てるのが、いわゆる「3党合意」だった筈です。首相がそれを子育て支援や教育無償化の財源にも振り向ける方針だとすると、財政規律が緩み、国際公約でもある基礎的財政収支の2020年度黒字化の目標達成は事実上困難となる虞があります。

 

上に述べた3党合意の精神は、社会保障財源を政争の具としないための「社会保障と税の一体改革」に関するものでした。このような中、具体的な提案もなく、その審議もないままに、抽象的な「全世代型の社会保障改革」について国民に信を問うと言うだけでは、どうにも説得力がないように思われてなりません。一方で消費税率の引き上げは別として、子育て支援や教育無償化は従来から野党が政府に要求してきたことでもあり、野党としてもこの「公約」を正面切って反対するわけにもいかないように思われるところです。いずれにしても、支持をつなぎ止めるための税金のバラマキをして財政赤字を拡大させるような「給付」は絶対に避けるべきものと考えています。(了)

文責(GK

 

金山会計事務所 ページの先頭へ