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来年度税制改正としての所得税の控除をめぐる議論を展望する No.1

2017/11/21

政府・与党による来年度の税制改正に向けた議論が始まり、来年度税制改正での焦点となっている所得税改革について、サラリーマンの給与から一定額を控除する「給与所得控除」を高所得者を中心に縮小する一方で、全ての納税者にも適用されている基礎控除を引き上げる方向で検討に入ったと新聞等で報道されています。このように、来年度の税制改正では、所得税を計算・算出する際の控除の見直しが最大の焦点になり、高所得のサラリーマンの給与所得控除を縮小したり、高所得でありながら年金を受け取っている高齢者の控除を縮小するなどの所得税の控除見直しが検討されているところから、これら来年度税制改正の議論を紹介・展望したいと思います。

 

「控除」について若干敷衍しますと、所得税を計算・算出する際には、税の負担を軽くする仕組みがあり、その1つが「給与所得控除」といわれるものです。サラリーマンなどの所得税を計算する際に、給料のうちの一定額は、必要経費になっていると看做して収入から差し引くことで税額を少なくするものです。当然ながら、この控除の額が大きいほど、税負担が軽減されることになります。この控除額は、収入に応じて段階的に増えていく仕組みで、現在は、65万円から220万円になっており、例えば年収400万円の人は134万円、年収500万円の人は154万円と増えていきますが、年収が1000万円以上の人は、一律220万円で当該控除額は頭打ちとなります。

 

このような給与所得控除制度は、高度成長期以降、サラリーマンが労働者の主流になるにつれて給与所得控除額が年々、引き上げられてきた経緯があります。しかし、厳しい財政状況の中、先進諸外国と比べて日本の給与所得控除額は過大だとして、控除の上限が最近は段階的に引き下げられる傾向にあり、現在は、上に述べたように、220万円が上限となっています。ただ、給与所得控除の対象になるのは、サラリーマンとして会社に勤める人達であり、企業から仕事を請け負い、サラリーマンと同じような仕事をしていても、フリーランスの自営業者は「給与所得控除制度」の適用はありません。しかし、冒頭で述べたように、今や、働き方が多様化し、個人で仕事を請け負って会社で働く人達も増えている実情があります。

 

このように働き方が多様化する中、会社員だけが手厚い恩恵を受ける控除の仕組みは、時代にそぐわなくなっているという理由から給与所得控除の縮小が検討されています。年収1000万円以下の人も含め比較的高収入の人は負担が増える可能性があるといわれています。また、高齢世代の場合、年金への課税は所得が同じ現役世代より所得税の負担が軽く、高い収入を得ていながら年金を受け取っている高齢者については、二重の控除があることになります。そこで、高齢者にも相応の負担を求める考えから、政府・与党は高所得者を中心に年金の控除を縮小する方向で検討を始めたものです。その一方で、全ての納税者を対象とした「基礎控除」については控除の額を増やすなど、働き方の違いで控除に差が出ないような仕組みを検討するとしています。具体的には、基礎控除は現在の38万円から50万円程度にする案などが浮上し、フリーランスの自営業者の人達などの減税を見込んでいますが、他方で、こうした控除の見直しで増税になる一部の国民からの反発も予想されるところです。

 

いずれにしても、雇用形態が多様化する中にあって、サラリーマンに手厚い控除の在り方を見直し、働き方の違いによる格差を縮小するのが狙いのようで、自民党・公明党の与党は、1120日から始まる週に、両党それぞれの税制調査会で協議し、年末にまとめる平成30年度税制改正大綱に盛り込むことを目指しているようです。このほか、たばこ税の増税や、観光分野の政策に使うため日本を出国する際に1人当たり1000円を徴収する「観光促進税」の創設なども検討を進め、与党では1214日を目途に税制改正大綱の取りまとめを目指しているようです。 (つづく)

 文責(GK

 

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