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来年度税制改正としての所得税の控除をめぐる議論を展望する No.2

2017/12/06

前回に触れた所得税の控除見直しや、その後に明らかになってきた議論の内容について紹介してみたいと思います。新聞の報道によれば、自民党税調は、年収800万円超のサラリーマンを増税する方針を固め、公明党との調整をし、また、1千万円以上の年金受給者や年金以外に1千万円超の収入がある人も増税とする検討をなし、その実施については、3年程度の時間をかけて平成321月にしたいとしています。この外、所得税とは直接の関係ありませんが、政府は賃上げや先進技術へ投資した企業に対する2段階減税を来年度改正に盛り込み、対象企業の法人税の実質負担を20%程度へ下げる方針も固めたとされています。

 

これらについては、いずれも与党が1214日に決定する平成30年度税制改正大綱への盛り込みを目指すとされています。仮に、上記どおりの所得税改革が実現すれば、年収800万円超のサラリーマンは増税ということになりますが、22歳以下の子供がいる子育て世帯や在宅介護を利用している人がいる世帯のサラリーマンには、負担増を避けるため年末調整により増税分を還付するよう工夫がなされるとのことです。これにより、増税対象は公務員などを除くサラリーマン全体の約9%、そのうちから子育て世帯や在宅介護世帯を除くと約5%程度になる見通しが示されています。

 

今回検討されている所得税の改革は、既に触れたように、3つの控除の見直しが柱となっています。すなわち、誰もが受けられる「基礎控除」、サラリーマンに適用される「給与所得控除」、年金受給者が受けられる「公的年金等控除」であり、これらを一体的に見直すものです。これまでにやや固まった基礎控除は、現行の38万円から一律10万円上げて48万円とする一方で、給与所得控除と年金控除を一律で10万円引き下げるものです。その上で年収が800万円に達すると給与所得控除が190万円で頭打ちになる仕組みとし、それを上回る年収を稼ぐサラリーマンは増税になります。なお、800万円以下のサラリーマンは控除の増減額が一致することから、税負担に変化はありません。

 

前回も述べましたが、高所得のある年金受給者への控除は薄くする手だてが採られ、年金収入が1千万円以上の人の控除額は、1955千円で頭打ちとなります。年金以外に1千万円超の年収がある人は10万円、2千万円超は20万円控除額を減らす方向で検討がされています。これにより、増税となる年金受給者は20万人程度とみられ、全体の約0.5%と想定され、現在、検討されているとおりに改革が実現すれば、基礎控除の増額分だけが上乗せされる自営業やフリーランスの人は減税の恩恵が受けられることになり、3年程度を見込む一連の所得税改革で、トータルで1千億円程度の税収増につながるものと考えられています。

 

その他、所得税とは直接の関係ありませんが、来年度税制改正の中で検討されているものとして、先に触れたように、賃上げと設備投資に積極的な企業を対象に2段階で法人税の減税を実施する方針を打ち出しています。具体的には、3%超の賃上げなどを実施した企業の法人税の実質負担を25%程度とし、先進技術に投資した場合は、さらに優遇し、実質負担を20%程度へと引き下げるものです。この外には、たばこ税の引き上げがあります。これは来年10月から3年かけて1本当たり合わせて3円増税する案を検討するものです。

 

また、税の創設としては、「観光促進税」が挙げられ、観光分野の政策に使うため日本を出国する際に外国人、日本人を問わず1人当たり1000円を徴収する案が検討されます。もう一つ、来年度の税制改正で議論される新たな税が「森林環境税」です。大雨による土砂災害などを食い止めるために、森林整備を行う費用を確保するのが狙いで、市町村が集める個人住民税に上乗せする案が検討される見通しです。 (つづく)

                             文責(GK

 

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