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相続こぼれ話  その2(相続人の存在が明らかでない相続...)No.2

2016/04/25
このたびの熊本地震によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さま方に心からのお見舞いを申し上げます。私事ながら、4月14日から23日まで東欧諸国を訪問していて、お悔やみ並びにお見舞いの表明が大変遅くなりましたことを申し訳なく存じております。

 

ここから、前回の続きとなりますが、死因贈与契約として本件手続を進めるために、4度にわたり家庭裁判所の窓口を訪れ、「死因贈与執行者選任審判」について相談しました。窓口の担当者は条文を参照しつつ、死因贈与契約を証明する文書の存在の確認をしましたが、「遺言」としての下書き程度の不完全なものは存在するものの、当該契約を証明する文書は存在していなかったので、「口頭による死因贈与契約」であることを述べました。担当者としての回答は、当該契約の存在とその内容を証明することの難しさもあってか、当地の家庭裁判所では、過去に一度も受付けたことがないとのことでした。

 

そこで、オールターナティブな手段として、プラクティカルな側面から所有権を移転する手段がないかも検討しました。先ず、被相続人の居宅マンションの所有権移転登記について、法務局に「口頭による死因贈与」を原因とする「登記原因証明情報」及び(代襲)相続人からの当該登記原因証明情報記載の所有権移転等の所要の所有権移転登記手続きに関する「委任状」を添付することで、所有権を移転することができるかどうかを相談しました。ここでも、口頭による死因贈与契約による所有権移転手続についての相談は初めてのケースでしたが、所有権移転登記は不可能ではないことが分かりました。

 

次に、大手金融機関や地元金融機関等に相談に赴き、口頭での死因贈与契約による被相続人の預金口座から申立人の口座への預金移動は可能か、可能とすれば当該預金移動手続に伴う添付書類はどのようなものが必要になるかについての確認をしました。そこでも、口頭による死因贈与契約による口座移転手続に関する相談は初めてのケースであり、すべての金融機関においても通常の相続の際の書類の他に、当該口頭による死因贈与契約によって申立人に口座移転をした後に相続人その他の権利関係を有する者が権利を主張することがないことを明らかにする書類の作成、提出を求められました。しかし、ここでも当該移転手続きが不可能ではないことが明らかになりました。

 

被相続人の居宅マンション及び預金口座の申立人への所有権移転がいずれも可能であることが判明したところから、後日、申立人の都合のよい日に、本人が直接、法務局と金融機関の双方に赴き、必要な手続を済ませました。こうして、一連の"相続人のいない(?)相続"、すなわち「相続人の存在が明らかでない相続」の諸手続を終え、結果として、被相続人の全財産は同人の従弟である申立人に「相続」される形となりました。ここに「相続」と表記したのは、被相続人の財産を法定相続人が承継する一般的な相続ではなく、死因贈与契約により遺贈に関する規定(民法554条)が準用され、結果として、本件の申立人が相続税法における納税義務者(相続税法1条の3第1項)となったものとの区別をしたかったからです。

 

このケースで、仮に当初の「相続財産管理人」を利用して申立人が特別縁故者として財産分与を受けたとすると、先にも触れましたが、相続税法第4条により、「その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したもの」とみなされます。なお、当該財産の評価が「相続時」ではなく、その与えられた時、すなわち「分与時」の時価とされているのは、財産分与が家庭裁判所の審判を経て決定するまでにはかなりの期間(約1年程度)を要することが想定されているためと思われます。

 

ここまでにも触れてきましたように、特別縁故者に対する財産分与は、相続人がいない場合における相続財産の救済を目的とした制度ではありますが、「家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故のあった者の請求によって、その者に、清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定されていて、その認定はあくまでも家庭裁判所に委ねられています。したがって、特別縁故者の請求の全部が認められるとは限らないところは要注意です。

 

相続をめぐる問題は、遺産の分割(金銭の額の多寡)が絡むだけに、親等が近い方にとっても難しい問題(相続が争族になりがち)ですが、普段は比較的疎遠な関係にある兄弟姉妹、あるいはその代襲相続人の間ともなれば、より難しい問題になってしまうケースが多く見受けられます。そうした遺産分割の問題をめぐる相続人間の争いを未然に防ぐためには、遺言書を作成するという解決手段をお薦めしたいと考えております。 

文責 (G・K)

 

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