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税法違反被告事件の裁判を傍聴して No.3

2018/02/21

今月に入って、風邪を引き、さらにそれを拗らせて日常業務も、大分、手を抜いてしまいました。このコラムも毎月2回の掲載を自らへの義務としてきましたが、それも風前の灯火状態です。余談はさておき、本論に移りたいと思います。本件税法違反被告事件(以下、「本件事件」といいます。)の概要は、起訴状記載の公訴事実によれば、以下のようなものです。「第1.人件費を外注費に仮装し、もって不正の行為により消費税を免れた。」「第2.売上の一部を除外するとともに、架空の外注費を計上するなどし、もって不正の行為により法人税を免れた」とするものです。本件事件は平成293月に起訴されて以来、特異の経過を辿っているように見えますが、先ずは、一般的な税法違反被告事件の手続きに関する一連の流れについて述べてみたいと思います。

 

消費税法違反や法人税法違反等による逋脱(脱税)事件は、租税という極めて特殊性、専門性の高い分野についての犯罪ということもあり、その捜査は税務署やその上級機関である国税局の査察部等によって調査が行われることになっています。一般に、任意の税務調査は税務署で、調査対象の規模が大きく、また強制調査(査察調査)であれば国税局が行うものとされています。このように、税務調査には任意調査と裁判所の令状を得て行う強制調査(査察調査)の2種類があります。両調査の違いは、任意の税務調査は主として申告漏れなどの行政上の処分の対象となる事実を認定するための調査であるのに対して、強制調査は犯則調査として国税局査察部(マルサといわれています。)により、主として刑事事件の対象となる事案についての調査が行われます。

 

国税局の強制調査により、逋脱の事実があると認定されれば、検察庁(検察官)に対して脱税容疑の告発がなされ、その告発を受けて、検察官に脱税事件の捜査が引き継がれ、刑事手続きが開始されることになります。本件事件を含む税法違反事件において、脱税嫌疑(容疑)で告発がなされた段階では、税務署や国税局による調査が既に行われており(その後も行われることがあります。)、それに伴って大量の証拠資料等が押収されていることが一般的であり、また、大きな特徴でもあります。加えて、消費税法違反や法人税法違反等による脱税事件では、検察官の判断によっては逮捕、勾留されるケースも見られます。これは、事件に関する証拠隠滅や逃亡の可能性が高いと検察や裁判所が考えているからです。

 

本件事件のように、消費税法違反や法人税法違反等の逋脱事件では、事件の特殊性、専門性、複雑性から、拘留されたまま公判請求がなされ、正式裁判に移行する可能性も高いといえます。また、本件事件を含む税法違反事件として告発をされると、某テレビ局のドラマに見られるように、被疑者(納税義務者)は、ほぼ例外なく起訴され、その結果も、有罪判決を受けることが殆ど(ドラマ上では99.9%)のため、自身の十分な防御活動を行うためには、課税当局による検察庁への告発前から、対策を講ずる必要があります。すなわち、任意調査の段階であれば、修正申告の勧奨への速やかな対応によって、事件の無用な拡大を防止するよう行動することが重要です。専門の国税査察官や検察官による取調べを受けてこれに答えているうちに、逋脱の認識(故意)を認めたかのような内容の調書に仕立て上げられてしまうケースも数多く見られています。

 

折しも、北海道新聞219日の夕刊に「知らぬ顔」と題した記事が掲載されていたので、紹介したいと思います。「…(前略)『誤審の有罪認定に供された証拠なるものはみな、検察・警察が権力を濫用して寄せ集めたジャンクばかりである』誤審の理由や責任を語ろうとしない裁判所についても、疑問を投げかけた。例えば、車の運転を職業とする人が事故を起こせば仕事を失ったりする。医師も誤診をすれば医療過誤だと追及され、ばく大な賠償金を負うこともある―。なのに『真実究明の義務違反』を犯しても、裁判官はおとがめなしなのか、と。裁判官は、証拠に対する自由な判断を認められている。『疑わしきは罰せず』という鉄則に忠実な法服の人も少なくないだろう。ただ、誤判やその疑いが強い事件への『沈黙』は、開かれた司法とは言い難い。…以下略」 少なからぬ国民の共通の認識ではないでしょうか。(つづく)

 文責(GK

 

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