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税法違反被告事件の裁判を傍聴して No.4

2018/02/26

前回は、本件事件の概要と一般的な税法違反被告事件の一連の流れについて触れましたが、その折、「特異の経過」を辿っていると感じたと書きました。今回は、その「特異の経過」と感じたことについて述べてみたいと思います。というのも、税法違反事件を偶に新聞紙上で目にすることがありますが、その場合の大抵は、「課税庁側の見解とわが社との見解に相違が見られましたが、課税庁の指摘に従って修正申告し、既に納税も済ませています。」とのコメントが掲載されるもので、この種の事件で逮捕されるケースはそれ程多くはありません。況して、本件事件のように会社を代表する社長(A氏)と専務(B氏)が逮捕、拘留され、そのまま1年以上が経つケースは、皆無だと思うからです。

 

前回も述べましたが、公訴事実は、「第1.人件費を外注費に仮装し、もって不正の行為により消費税を免れた。第2.売上の一部を除外するとともに、架空の外注費を計上するなどし、もって不正の行為により法人税を免れた」とするものです。しかし、納税者、況してや会社を代表するような立場の人達(社長、専務、常務等)にそんなことをする暇があるのでしょうか、そんなことをする位なら、本来の業務に専念するのが一般的な経営者の姿というものではないでしょうか。現に、その種(どうしたら税制上有利か、節税が図れるか等)の相談は、その企業の顧問弁護士なり税理士が専門的に担当していることが殆どです。かつて、「森友学園」からの献金問題に関してマスコミから質問を受けた安倍夫人は、現金の支出入に関しては、すべて税理士に任せているから自分は分からない旨の回答をしています。

 

本件事件の被告人とされるA氏とB氏は、夫婦二人三脚で事業を開始し、寝る間も惜しんで働き、今日の規模の会社にしたもので、その間一貫して、顧問税理士に会社の会計、財務、税務申告の業務を全面的に委任し、当該税理士の指示どおりにそれらの業務が行われていました。しかし、平成2710月に所轄税務署の税務調査が行われ、28年には国税局査察部(通称マルサ)の国税犯則取締法による査察調査に引き継がれ、その後、検察庁に告発されました。平成292月に逮捕、3月に起訴されて以来今日現在で、冒頭にも触れましたが、身柄拘留が1年以上も続いている状態です。その意味において、税理士の選任の良し悪しは、企業にとっての死命を制するものにもなり得るといえます。

 

本件事件においては、企業を守ってくれる筈の税理士が、逆に企業の内実をあることないこと課税庁側に告げた結果、告発を経て脱税事件として裁判にかけられることとなったものです。何やらマッチポンプの様相を呈していて、同業の筆者としては、傍聴席でいつも驚かされています。例えば、消費税法には基準期間が設けられていて、平成26年の改正前の消費税法では、起業して2年間は基準期間として、原則的に、消費税が免税となっていました。この期間を利用して、起業して3年目にその会社を廃業し、また新たに新規開業し、また3年目に廃業すれば、消費税がかかりませんでした。これは一般の企業経営者が思い付き、なせる業ではなく、専門家でなければ…。否、普通の感覚を持ち合わせている専門家なら絶対に実行はさせないでしょう。悪くすると、自分のクライアントが脱税行為をしたこととなり、本人はその幇助に問われることになる可能性がありますから。裁判を傍聴した筆者にとって、この点につきどんな感覚を持った専門家であるかが関心事でした。(つづく)

 文責(GK

 

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