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税法違反被告事件の裁判を傍聴して No.5

2018/03/12

前回に引き続き、今回も「特異の経過」と感じたことについて述べてみたいと思います。本件事件においては、会社の代表取締役(A氏)およびその妻である専務(B氏)が昨年の223日に同時に逮捕、その後、拘置支所と刑務支所に分かれてそれぞれ拘留され、そのままの状態で1年以上が経過していました。その間には、弁護人から数度にわたって保釈請求が裁判所に出されているようでしたが、「罪証隠滅のおそれ」及び「逃亡のおそれ」を理由に保釈請求は却下され、認められてきませんでした。本件は、否認事件であることから、やむを得ない対応ともいえますが、これまでも何度か言及してきましたように、法律に基づいて有罪が確定するまでは、無罪推定を受けるべく人権上の配慮が、よりなされてしかるべきと感じていました。

 

幸いともいうべきでしょうか、第6回公判期日の後の保釈請求が認められ、A氏とB氏は228日に漸く保釈が認められ、条件付きながら、自由の身となりました。本件裁判が進行中ということもあり、筆者の憶測で事件の内容を述べることはできませんが、これまでに明らかにされている事実、それに対する旧顧問税理士としての対応、そしてそれに関連する検察側の証人の法廷での証言には、毎回、驚かされています。裁判という事態に、自分達の事務所を守らなければいけないのは当然のことでしょうが、それは、あくまで第二義的なものではないでしょうか。先ずは、長年にわたる信頼関係で結ばれている関与先の利益を守るのが、この士業の使命ではないでしょうか。そのためには、平素から「危ない橋」を渡らせないよう指導したり、時として忠告や苦言を呈する勇気を持つべきだったと筆者は考えています。また、税理士法38条においては、税理士の守秘義務も規定されています。

 

前回も述べましたが、納税者のうちでも会社を代表するような立場の人達(社長、専務、常務等)には、一般的に、脱税を考えたり、それを具現化したりする暇はありません。自らの職責を果たすべく、業務に専念するのが本来の経営者の姿というものです。とはいえ、税を無視した経営は成立しませんから、経営者は如何にして税制上の有利選択をし、その合法的極小化を図るかは小さくない関心事といえます。しかし、それはあくまでも、「節税」の範疇といえ、その相談を受けたりアドバイスをするための業務には、高い専門性が必要とされ、顧問税理士なり通知弁護士がこれを担当することになります。そのことから、税理士法は52条で、いわゆる「無償独占」の規定を置いているものと考えられます。

 

これを少し敷衍しますと、本件事件における法人税について課税当局、検察官が、いわゆる「裏金」だと主張する元請企業からの協力金の出捐要請は、元請企業の下請企業への死命を制するものであり、これを下請け企業が無視してその後の取引は成立しません。この要請に困惑した、さほど会計、税務処理の知識のないA氏とB氏らは、旧顧問税理士に相談した結果、本件事件においては、旧顧問税理士の判断と処理によって、当該協力金分を現場責任者の給与を水増しする形で申告をしたとされています。したがって、非違が存在するとしますと、旧顧問税理士の判断ミスが招いた結果であることも見逃してはならないと感じています。このような事態(納税者が白紙委任の状態で税理士に会計税務処理の業務を委任すること)を想定して税理士法は制定され、他の士業にも珍しい、52条の「無償独占」の規定が置かれているものと思われるところです。 (つづく)

文責(GK

 

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