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税法違反被告事件の裁判を傍聴して No.6

2018/04/09

前々回に述べましたが、本件事件の公訴事実は、「人件費を外注費に仮装して消費税を免れたこと及び売上の一部を除外し、架空の外注費を計上して法人税を免れた」とするものです。また、本件事件の主たる争点は、①被告会社と関係会社とは実質的に一体か、②故意に消費税及び法人税を免れたか、③(故意でないとしても)概括的な指示により決算を主導し、(税理士が)申告したものか、の3点です。このうち、①に関するものとしましては、刑事事件ではなく、課税処分の取消請求事件としては、多く目にすることができます。典型的には、「外注費」として会計処理していたものが、税務調査では「給与」と認定され、消費税や源泉所得税を納めなければならなくなったというケースです。

 

本件事件においても、基本的には同様ですが、ただ、違うところは国税局による査察調査で、外注費としていたものが給与と認定されたところにあります。そのために、刑事罰に加えて、行政罰として本税の他にも加算税や延滞税等、本来は納めなくてもよいものまでも支出することになっています。行政罰について述べますと、仮に、関係会社に実体がなく、被告会社と関係会社とは実質的に一体と看做されると、被告会社が関係会社に支払っていた外注費は、被告会社の給与とされることから、「仕入税額控除」が受けられなくなります。消費税の計算は、売上に係る税額から仕入れに係る税額を控除(仕入税額控除)して算出しますから、仕入税額控除がなくなると、売上に係る税額をそのまま納めることになります。さらに、「偽りその他不正の行為」によって給与を外注費に仮装したと認定されると、行政罰のみならず刑事罰が科されることになり、将に、それを本件事件に適用するかどうかの判断がされるべく裁判が進められているところです。

 

その裁判において、課税庁及び検察官は以下の9項目を摘示し、被告会社と関係会社とは実質的に一体だと主張しています。すなわち、①関係会社の出資金の拠出者が被告会社の取締役であること、②関係会社の代表取締役が決算内容を存知していないこと、③関係会社の日常の経理が被告会社の取締役によって行われていたこと、④関係会社が給与を支給していたとする者は、被告会社で勤務していた旨申述していること、⑤元被告会社の代表取締役A氏は、元請先に関係会社が給与を支給していたとする者らを被告会社の従業員であるとして現場に入れていたこと、⑥関係会社が給与を支給していたとする者らは、A氏の指揮命令下にあり、雇用関係が認められないこと、⑦関係会社が外注費を支払ったとする相手先は、関係会社を知らない旨申述していること、⑧被告会社が元請先へ提出した「下請業者編成表」と題する書面の二次下請業者欄に関係会社名の記載がないこと、⑨関係会社の代表取締役は、経営業務に携わったことがなく、法人税の申告書を見たことがない旨申述していること、の9項目です。

 

これに対して、①被告会社及びA氏並びにB氏は以下のような反論を主張しています。すなわち、仮に関係会社の設立に係る出資金の拠出者が、A氏あるいはB氏であったとしても、第三者の出資あるいは借入金により新たに会社を設立することは通常あり得る事象であり、これをもって本件において事業実体を否定する理由とはなり得ない。②関係会社の決算書類は、T税理士事務所において作成・税務申告が行われていた。決算に当たっては、T税理士事務所のI税理士が関係会社の事務所を訪れて決算内容の確認を行なっていたが、I税理士が、B氏に対し断片的な事実確認を行なうことはあったが、B氏が決算の内容等について異論を唱えたり、指示したりすることはなかった。また、I税理士は、上記確認を行ないながら手元で計算作業を行ない、計算終了後に大概的な売上や利益を説明し、全体の納税額を説明することはあったが、具体的な決算内容や税目ごとの納税額を説明することはなく、B氏から確認を求めることもなかった。T税理士事務所において作成した税務申告書類の提出も、T税理士事務所の職員が関係会社の事務所に来て、事務机の上にある代表印を勝手に押して帰ることが常態化しており、申告書類をB氏や関係会社の代表者らに示して説明したり、了承を求めたりすることはなかった。このように、関係会社の決算内容は、T税理士事務所に全面的に委ねられていたことから、関係会社の代表者らが決算内容を逐一把握する必要はなく、従って 、同人らが決算内容を存知していなかったことと関係会社の事業の実体との間に関連性はなく、関係会社の事業の実体を否定する理由にはならない、としています。(つづく)

文責(GK

 

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