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連載中の話題から一旦、離れて・・・その2(政治の劣化と内閣人事局)

2018/04/18

前回、国有地の払い下げ問題及びその決裁文書が改ざんされた問題を取り上げた時は、一応のエチケット考え、固有名詞をイニシャルで表示していましたが、その後、やっぱりと言うか学校法人加計学園が今治市に獣医学部を新設する計画について、平成254月に愛媛県や今治市の職員、当該学園の幹部らが柳瀬首相秘書官(当時)と面会したされる記録文書が存在することが発覚しました。また、いわゆる「森友・加計問題」に止まらず、霞が関のあちこちに軋みが生じているように思われます。それらに対する報道は、今や国営放送はじめ広くマスコミも実名報道していることから、イニシャルで表現する必要性は薄れたように思われますので、ここでもその例に倣いたいと思います。

 

安倍首相本人の認識はともかくとして、自民党の内部や首相経験者からも批判の声は日増しに高くなっているように思われ、政権は窮地に立たされています。この度の騒動の原因は、森友学園の小学校建設用地売買の契約に関し、当時の財務省理財局長の国会での虚偽答弁とこれに辻褄が合うように財務省の公文書が密かに改ざんされていたことが明らかになったことです。官僚が国会で虚偽答弁する事態・・・国民の誰が予想できたのでしょうか?明治期における太政官以来、霞が関が守り通してきた「官は間違いを犯さない」という「無謬性の推定」という国家統治の原則が、もろくも崩れ去ってしまいました。その原因の一端が、首相夫人にあることに国民の多くは気付いてしまっているところに、哀れさに似た感情を覚えるものです。

 

すなわち、森友学園をめぐる問題の本質は、「首相の妻」という立場が財務省や国交省の官僚に「忖度」という圧力をかけ、その結果、ただ同然の価格で首相と同様の思想を持つ者が主宰する学校法人に国有地が払い下げられたことです。加計学園の問題の本質は、いわゆる「官邸のご意向」がもたらした文部行政の歪みであり、安倍首相と昵懇の間柄にある友達のために官邸と内閣府が動き、その結果、本来、公平無私であるべき国家戦略特区という特例を悪用したと思われる不透明な獣医学部新設が決定したことにあります。前々回のコラムでも触れたように、これらのいずれも、政治が行政に圧力をかけ、官僚が無批判にこれに従った結果と思われ、その背景にあるものは、官邸政治(内閣人事局)の強大化であり、霞が関の官僚を腐らせたのは政治主導と言う名の下での人事制度にあるように思われます。森友・加計問題の対応に苦慮する中、財務次官のセクハラ報道や厚生労働省の不適切なデータ処理、自衛隊の日報隠蔽問題と、軋みも多様ですが、それらの全ては同根だと考えられます。

 

平成26年、安倍政権の目玉政策の一つとして、それまで官僚主導で行われてきた役所の人事権を内閣人事局で一元管理し、官邸主導で審議官級以上の幹部人事を決定することを目的にして内閣官房に「内閣人事局」が設置されました。ここでのトップは国家公務員制度担当相ですが、実質的に同局の業務を取り仕切っているのは、官房副長官の中から首相が選任する内閣人事局長とされています。平成2711月以降、それまで停滞していた森友学園への国有地売却が、一気呵成に進みだし、加計学園の獣医学部新設問題についても、この年から国家戦略特区の関連会議で議論されていました。加計学園の理事長は、先にも触れましたが首相と昵懇の間柄である加計理事長であるところから、森友・加計両学園問題への官房副長官の関与というシナリオもあながち絵空事とはいえないような気がするところです。一連の騒動について、官僚のみにその責任を押し付けるのではなく、その背景にある、内閣府が握るとされる圧倒的な「官邸主導」の強大な人事権それ自体の問題を見直すことで、政治が責任を取るべき時が来ているのではないでしょうか。(了)

                                   文責(GK

 

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