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衆院法務委を通過した民法(債権法の一部)改正案を読む

2017/04/17
今回は、少し硬めの文章と内容になりますが、先般、衆議院法務委員会を通りました民法改正案についてその概略を述べてみたいと思います。

 

現行の民法は、明治29年の制定以来、大きな改正が行われてこなかったため、現在までのおよそ120年の間の時の経過の中で、情報化や高齢化社会の進展、また、経済状況の変化による取引形態の多様化・複雑化に対応できず、さまざまな場面でさまざまなトラブルが発生していました。このような中で、2009年に法務大臣が法制審議会に、社会・経済の変化への対応を図り、国民に解り易いものとするなどの観点から契約に関する規定を中心に見直しを諮問、法制審議会民法(債権関係)部会において民法改正について審議が重ねられ、2014年8月に改正要綱仮案が公表されていました。なお、今回の改正案は債権法のうち契約に関する規定を中心とした見直しとなっており、事務管理、不当利得及び不法行為はその対象となっていません。

 

その一方で、民法総則のうち契約と密接な関係がある法律行為、消滅時効が見直しの対象となっており、契約など企業実務に関連する分野には大きな影響があると考えられます。例えば、企業がインターネットを利用した通信販売などで契約者に提示する約款について、契約者の利益を一方的に侵害する内容は、合意をしなかったものとして、無効とする規定が新設され、消費者保護を図ることが打ち出されました。また、これらを内容とする民法の債権や契約の分野の改正案は、4月14日の衆議院法務委員会で採決され、賛成多数で可決されました。しかし、改正案には、従来の商慣習と相容れないルール化も存在しているところから、企業にあっては、早期にこれらの改正内容の全体像を把握し、特に取引先との関係で必要な対応策を準備する必要があると思われます。

 

改正案のうち、法律行為と消滅時効については、重要な改正点がありますので、先ずこれらについて見てみたいと思います。法律行為のうち錯誤については、動機の錯誤(意思と表示は一致しているが、そもそもの動機で勘違いしている場合。)が明文化されたことと錯誤の効果が無効(最初から当然に効力がない。)から取消(取消すまでは有効であるが、取消されると行為時に遡って効力を失う。)になった点が大きな改正点です。また、消滅時効では、債権の消滅時効の起点や期間について、「権利を行使できる時から10年間」に加えて、新たに「権利を行使できることを知った時から5年間」も加わり、消滅時効が早まりました。また、小売店の売掛代金などで適用されていた短期消滅時効が廃止され、上記の一般債権と同じ消滅時効が適用されることになりました。

 

次に、債権法では、法定利率を3年毎に見直すこととし、その見直し方法を定めています。改正法施行時の法定利率は3%を予定し、商事法定利率は廃止されることとなりました。債権者代位権、詐害行為取消権は、大幅に条文が増えることになり、従来、解釈・判例に委ねられていた部分が明文で定められています。明文の定めの中には、現在の判例・実務に従うものだけでなく、判例を変更するものもあります。また、連帯保証制度は、中小零細企業への融資などで第三者が個人で保証人になる場合、公証人による自発的な意思の確認を必要とするようになります。これは、親族らがリスクを十分に認識せずに保証人になったため、自己破産に追い込まれるケースが続出していたことを考慮したものと思われます。

 

債権譲渡では、譲渡禁止特約の効力について特約に反する譲渡も当事者間では有効という観点からの立法としつつ、預金についてのみ譲渡禁止特約に絶対効を認めることとしていますが、これは、マネーロンダリングを防ぐという社会的要請に基づくものといわれています。また、契約解除については、催告期間を経過した時点で存在する債務不履行の程度が契約及び社会通念に照らして軽微なときは、解除できないとしています。現行法下でも、不履行が数量的にごく僅かないしは付随的義務に違反したのみのときは、原則として解除できないと解すのが一般でしたが、この点を明文化したものです。このほか、判例によって既に定着しているルールも盛り込まれることになっています。 (了)

文責 (G・K)

 

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