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税法違反被告事件判決への疑問 その2

2019/01/05

新年明けましておめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いします。比較的災害等の少なかったここ札幌に、昨年は地震、爆発などと世間を騒がす事象が相次ぎましたが、本年は穏やかな一年になることを祈っています。さて、前回は「罪となるべき事実第1」の消費税について述べましたが、今回は「罪となるべき事実第2」とされる法人税の逋脱について述べていきたいと思います。公訴事実は、被告人A及びBは、共謀の上、被告会社の事業年度において売上の一部を除外するとともに架空の外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿し、法人税を免れたとするものです。判決は、法人税の逋脱については消費税に比べて驚くほど簡単に、しかも、その大部分において「推認」に基づく、自己満足的な論理による事実認定(≒結論の導出)をしているといえます。すなわち、被告人Aが、被告人B及び被告会社の関与税理士が同席する場で、被告会社の利益を半分程度にするよう指示したとし、このことにつき、被告人A及び被告人Bの両名において法人税を免れることについて故意及び共謀があったとし、また、架空の外注費の計上については、本判決全体の約8分の7を占める「罪となるべき事実第1」として消費税の逋脱について充てた中で、やや強引とも思える手法で外注費の仮装だと認定したものをそのまま踏襲しています。

 

前回も述べましたが、検察及び裁判所が主張する論理は、「被告会社と関係法人が実質的に一体である」という前提の上に成立するものであり、それに沿ってやや強引な結論を導いているように思われます。特に、このような大事件になるような事案において、被告会社の経理を担ってきたとはいえ、会社経理ないし会計的、税務的知識の殆どない被告人らが主導的立場で何かを企図していたとは到底考えられないことは、被告人らの知己ないし取り巻き、利害関係者のいずれからも等しく聞こえてくるところです。このことについては、事情聴取に当たった捜査担当者、検事(おそらく裁判官を含めて)一番よく分かっていたと思われます。前回、何らかの意図をもって予め作出された「筋書き」を疑ったのも、この点にあります。

 

本件の発端は、近年において行われた利益調整にありますが、これを主導したのが旧関与税理士であることは、証拠上は疑いのないところと思われます。すなわち、旧関与税理士は、近年に行った決算準備(変則的期中現金主義のため、例年、決算期を越えて4月末から5月中旬頃)になって当該年度の利益が約2億円にも上ることが初めて分かり、被告人に対し、「社長どうしましょうか、利益のことですけれども幾ら位にしますか」などと問いかけ、利益調整を働きかけています(公判質問調書)。そればかりではなく、「今期で納めようと来期で納めようと同じです」などと述べ、被告人A及び被告人Bに対して、「脱税」ではなく「適法な範囲での節税」である旨の説明を行ったため(公判質問調書)、被告人らは規範に直面することができず、違法性の認識を持つことができなかったと考えられます。

 

しかも、旧関与税理士は、428日になって決算準備を行うことによって初めて2億円もの利益が出ていることを認識したというのです(旧関与税理士公判証人尋問調書)。通常、関与税理士は期中の売上等の状況を踏まえて、適正な納税のための指導を適宜適切に行うべきところ、旧関与税理士はこのような指導等を一切行っていませんでした。加えて、決算準備(4月末)の段階になって漸く過年度(3月期)の利益額を把握したのは、繰り返し述べてきた、旧関与税理士が買掛金について「期中現金主義」という、被告会社の規模では採用することができない、変則的な会計手法を採っていたことにあります。

 

そして、期中現金主義という被告会社の規模には採用してはならないその会計手法を採っていた旧関与税理士が、その特殊な会計手法を採っていたこと故に3月期の利益について、決算準備を行うまで全く気付くことができず、決算整理の結果2億円もの想定外の利益が生じていたことが発覚したことから慌ててしまい、適法な節税であると称して利益調整を図った、というのが本件の実態であると考えられ、このように、被告会社が法人税を免れたことの責任は、全面的に税の専門家である旧関与税理士の重大な任務違背行為に帰するものであると思われるところです。 (つづく)

文責(GK

 

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