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ノーベル賞受賞経済学者の進言は消費増税再延期の理由となり得るか? その1 

2016/03/21
過ぐる3月12日、航空生徒60周年合同同期会(15~16歳で航空自衛隊生徒課程に入隊した仲間の1期~53期まで合同の同期会)が航空自衛隊入間基地内東体育館で開催され、これに出席して来ました。筆者は4年間の生徒過程の中途で退職して、いわゆる民間人として生きてきていたので、同期諸氏との再会には複雑な思いを抱きながらの参加でした。しかし、同期の諸君と会った瞬間にその蟠りは霧散し、教場で机を並べ、そして厳しい訓練を共に受けていた3等空士の頃の純朴な感情に立ち返っていることに気が付きました。

 

航空生徒は、航空自衛隊において、急激に進歩する技術革新に対応する技術空曹を養成する制度として昭和30年に創設され、若年時から専ら教育技術訓練を受け、3等空士の階級から学年とともに昇任していきます。残念ながら、その制度は現在は廃止となりましたが、その大きな理由が、学力に優れ、志も高かったことから、技術空曹養成が目的だった生徒出身者の殆どが幹部になってしまうことや、18歳未満の子供に火器の使用を伴う軍事訓練をすることを禁止するための国連の勧告にあったこと等と仄聞しています。

 

上記合同同期会の懇親会は入間基地の東体育館で行われ、その二次会は各期ごとの会場で行うことになり、筆者の期は、一次会終了後に稲荷山公園駅まで歩き、そこから所沢駅まで電車で移動して二次会会場に臨みました。一次会、二次会を通して、同期同士の会話は一別以来のあらゆる話題に及びましたが、期間の長短こそあれ、流石、国家公務員特別職として過ごしてきた矜持か、話題が消費税の増税、さらにはそれに伴う軽減税率の導入に及んでも、現政府を非難したり、揶揄するものは聞かれませんでした。

 

さて、その消費増税に関して、報道によれば、ノーベル経済学賞受賞者から近時、注目すべき発言がありました。政府は3月16日、世界経済の情勢について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を開催しました。その会合で、件のノーベル賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏は、中国経済の失速などで日本経済の下ぶれリスクが高まる中、「消費税は総需要を増加させるものではなく、引き上げるのは今のタイミングは適切ではない」と述べ、2017年4月の消費税率10%への引き上げを延期すべきとの考え方を明示しました。

 

また、世界経済の現状について、同氏は「大低迷」と表現し、「2016年は、リーマン危機後で最悪だった2015年よりさらに弱くなる」との指摘をしています。その原因として、需要の不足があるとしていて、5月の主要国首脳会議、いわゆる伊勢志摩サミットでは、「需要を刺激するようなG7各国間の調整策について議論して欲しい」として、各国間で協調して財政出動をすべきであり、特に我が国政府には、日銀の現在の金融緩和策は「限界に近い」とし、追加的な財政政策をとるよう促しています。

 

この会合は、5月の伊勢志摩地域で開催される主要国首脳会議の準備に活かそうとするものであり、首相はこの会合の冒頭に、このサミットで、「世界経済の持続的な力強い成長に向けて明確なメッセージを発したい」としてその意欲を示していますが、その一方で、この会合におけるスティグリッツ氏の発言は、首相に消費増税再延期のための進言ともなり得るものと考えています。財政規律の観点からは、消費増税は近い将来には必須と考えていますが、その時期が来春であることについては聊かの異論を持つところです。

文責 (G・K)

 

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