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さる税法違反被告事件判決に対する疑問 その9

2019/08/19

前回までのコラムで、本件事件における課税当局による検察庁への告発は信義則(=禁反言の法理)に照らして問題があること。すなわち、所轄税務署による行政指導及び修正申告を含む二度の税務調査を経て、一旦は、既に平和裏に決着した事案を、その一月後には強制的な査察調査を経て、国税局が検察庁に告発されていること。また、本判決には背理、矛盾があること。すなわち、消費税法第30条第7項の解釈において、裁判司法は、一方で、「形式上は被告会社のものとは別に関係法人の帳簿等として保存されていたにすぎない」として被告会社とその関係法人は同一といっておきながら、他方では、「…関係法人のものとして保存されていた帳簿等は、被告会社の帳簿等と同視できるものではない」とし、同一ではないとしています。しかし、将にこれは課税当局が逋脱行為を認定せんがために、根拠法もないまま、「有権解釈」として、全く別の法人である被告会社と関係法人とを無理矢理「同一」と看做したがために生み出されたコロラリーであり、裁判司法もこれを踏襲しているところに問題があるように思われます。

 

背理について、若干、敷衍しますと、本判決は、上に述べたように、税務処理上、被告会社と関係法人とを一体とみて、両法人の業務(行為)について、「そのいずれも被告会社が行ったもの」としていることから、当然、消費税法第30条第7項にいう「事業者」とは被告会社のことを意味することになります。ということは、関係法人の行為もまた「事業者」たる被告会社の行為であると看做すことを意味しています。そうすると、仮令、形式的に帳簿等の表紙に記載された法人名が関係法人のものであったとしても、それらは「事業者」たる被告会社が作成し保存していたものと考えなければ、論理的な一貫性がないことになります。被告会社と関係法人との一体性の検討についてのみ、その実質面を強調しておきながら、帳簿等の作成者名義については、既に触れたように、課税当局が逋脱行為を認定せんがために有権解釈した、いわばその「効果」として発生したに過ぎないものを踏襲しているにも拘らず、条文を文理解釈してその形式面のみを捉えるのでは、明らかな背理、矛盾であるといわざるを得ないと考えられます。

 

加えて、関係法人が作成した帳簿等は、原始証憑類に基づいて詳細かつ、正確に作成されており、国税通則法第74条の2に基づく税務職員による検査に当たって、適時にこれを提示できる態勢で、被告会社事務所に備え置かれていたもので、仮に、本判決のように被告会社と関係法人の一体性を認めたとしても、消費税法第30条第7項にいうところの「保存」の要件は(読み替えることにより)充足していると認めることができると考えられます。そうすると、本件事件において、消費税法第30条第7項の、「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書を保存しない場合」に該当するとし、消費税法には否認規定が存在しないにも拘らず、関係法人の行為・計算を否認して被告会社の行為・計算に付け替え、かつ、本来課税仕入れに該当するものについて仕入税額控除を認めないとする本判決は、明らかに租税法律主義に反しており、法令の解釈・適用を誤ったものと考えられるところではないでしょうか。

 

以前にも述べているように、本判決は、逋脱の概括的な認識について、「具体的なほ脱額や計算根拠・方法等についての認識がすべて必要なものではなく、消費税等をほ脱することの概括的な認識があれば足りる」と解されるとしています。しかし、租税刑法(行政刑法)領域の議論、しかもその議論、には「個別的な認識を必要とする」との両論が併存し、未だ確定的になっていない中、予断とも思われる公訴事実に沿った「推認」によって逋脱への概括的な認識を認定していますが、そうすることの必要性、理由については一切触れられておらず、ここでの「推認」のみならず、本判決中に用いられている「推認」は「為にする議論」風であり、極めて説得力に欠けているように思われます。

 

また、本判決は、I税理士が本件事件において、「税務処理が違法・不適切なものであることを認めた上、これを行ったことについて自らが関与しており、かつそのことを自ら認識していた旨認める供述をしている」としています。その一方で、「I税理士が実際に存在した事実関係や現に存在している証拠と全く異なる事実関係があったと作出して供述することは困難であり、…殊更自らの責任を否定し、被告人らに対して責任を押し付けるような内容になっておらず、(彼の事務所)職員らの供述についても同様である」としています。しかし、これらの判断、認定には驚くばかりで、本件事件における「裁判司法が思い描く結論に向かってまっしぐら」という感覚を強くするものでした。

 

というのも、I税理士は、いわば本件事件の始まりともいえる、国税局の査察があった翌日に被告人らの会社事務所を訪れ、「お願いがあって来ました、実は決算のときの1億円(利益額を少なく申告することを)、社長に頼まれたということにしてもらっていいですか、(そうでなければ)税理士資格を剥奪されますので…」と懇願したり、自らが犯したミスを取り繕うべく、税務署による税務調査、また国税局による査察調査時に「関与先会社の社長の指示に基づいて売上を除外したり、追加で外注費を計上したりして法人所得を約1億円に圧縮したが、本来の所得は1億円多かったはずだった」等々の事実に反する内容の供述をしていることがあるからです。

 

さらに、非常に残念に思われることは、このような事態に至った時、納税者の唯一の味方である筈の関与税理士が検察側証人となって事実に反する証言をしていることです。被告人らの名誉のために、一般的に関与税理士に経理、決算、申告等の業務を委任する場合は、白紙委任的に、一連の業務の「丸投げ」するのが通例ですが、それらの委任業務の中に逋脱(脱税)行為が入っていることはありません。(つづく)        

文責(G.K

 

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