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審査請求制度について思うこと その1

2019/11/24

10月の中央ヨーロッパ訪問に続いて11月も4日から11日までポルトガルを訪問してきました。これは、前回も触れていましたが、時間的な余裕がなくここ3年半は海外旅行に行く機会がなかったことから、体力の衰えないうちにと、今年の年頭に当たって決めていました。しかし、帰国してからは十分に睡眠時間が確保できず、かなり苦しい体調の中、溜まっていた業務を続ける破目となりました。というのも、これまで長きにわたって、このコラムで取り上げてきた「租税逋脱」といわれていたものについての、いわばその行政面から見直してもらうべく、予て税務署長に取消や変更を求めていた「再調査の請求」に対する回答としての「決定書謄本」の送達が1026日にあったからです。

 

ご案内のとおり、わが国の租税争訟制度として、税務署長が行った処分に不服があるときは、納税者は、その処分の取消しや変更を求める不服申立てを行うことができます。なお、再調査の請求をした場合について、その「決定」後の処分になお不服があるときは、再調査決定書の通知を受けた日の翌日から1か月以内に審査請求を行うことができると定められています。今回は、再調査の請求に対する「決定」後の処分に不服があったことから、「決定書謄本」の送達を受けた日の翌日から1か月以内、すなわち1126日までに審査請求を行うための書類一式を整えなければならず、審査請求人代理人としてはその手続期限が迫っていました。(もちろん、税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服があるときには、再調査の請求手続きを経ることなく、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、直接、、国税不服審判所長に対して「審査請求」を行うこともできます。)

 

今回は、税務署に再調査の請求をした結果、その「決定」後の処分になお不服があったことから、半徹夜を含む寝不足が続く中、1022日、午後240分に国税不服審判所に審査請求書、添付書を提出しました。なお、審査請求の理由は、「原処分には、虚偽事実の記載を含む事実誤認あるいは法令適用の誤りがある」、「更正の理由の附記に不備がある」、「数額、計数及びそれらの計算過程及び算出根拠が不明である」、「請求人、株式会社A社、株式会社Bの関係法人2社及びこれにC社を含めた3社である本件関係法人に対する原処分は、請求人に対する一連の税務調査及び国税局調査査察三部門における反面調査の関連で行われているが、当該調査は法令に違反している」こと等が明らかなことから、原処分は取消されるべきである。」とするものです。

 

課税庁の主張は、大要、請求人の関係法人には法人としての実体がないから、法人税等、消費税等のすべての税目について、売上等の益金、経費等の損金は全て請求人に付け替えるとするものです。これに対し、請求人及び本件関係法人は、以下のように反論しています。まず、消費税について、「わが国に欧州型の付加価値税(消費税)を導入するに当たって、小売業を中心とした国民(納税者)の強い反対に遭い、その中で導入を急ぐあまり、政治的妥協から様々な特例を敢えて設けた制度のうちの一つが基準期間(免税期間)である。この制度の合法的利用についての問題点は、消費税導入当時から懸念された、いわゆる「法の欠缺」といわれるものである。だからこそ、平成232011)年9月には法改正し、平成252013)年11からの特定期間制度を設け、また、4年後の令和5年(2023年)にはこれまでの帳簿方式から脱却し、インボイス制度が導入されるなどの法改正が行われ、最終的には簡易課税制度の廃止も視野に入れられているところである。欧州型のVAT付加価値税)をモデルとしながらも、インボイス方式ではなく帳簿方式を採用し、国会における強行採決により、拙速に立法されたわが国の消費税法は、その意味でも、法規定が十分には整備されていない不完全な部分(欠陥)が多い課税制度である。」

 

原処分と消費税法の適用関係については、「原処分における、本件関係法人が請求人に対する役務の提供を行った事実はないとの認定は誤りである。請求人に勤務する社員を含めた全従業員は、求人募集に応募し、採用に至る過程で、応募者の希望により、社会保険加入を希望する者については請求人に、また、大多数の加入を望まない者は本件関係法人に在籍していたもので、本件関係法人はその受け皿としての機能を果たしていた。当時の建設業にあっては、元請企業(ゼネコン)から一次下請企業(請求人)が工事を受注するに当たって、厚生年金を含む高額な社会保険料(利益の1518%に相当)のゼネコン負担はなく、一方、従業員も給与額から社会保険料分を天引きされることを望まない事情があった。因みに、現在では、ゼネコン負担が法令により厳格化され、ゼネコンに社会保険料を含めた工事代金を請求することが可能となり、事実上、一次下請企業がその目的で関係法人を設立することは激減している。そのことは、請求人の関係法人であるS株式会社(以下、「S」という。)が、2年で閉鎖することなく、現在も存続していることを考慮すれば明らかである。法人を設立し、当該法人を社会保険加入逃れ目的のため2年で解散することは、決して推奨されるべきものではないが、当時、そのことが租税法上の責めを負わされるものではなく、法律と道徳とは峻別されるべきものである。」   (つづく)

                       

文責(G.K

 

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