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審査請求制度について思うこと その2

2019/12/01

原処分庁は、消費税及び法人税に共通して、①法人の出資金の拠出者、②経理処理・決算内容の報告、③経理事務、④給与の支給、⑤現場における従業員、⑥指揮命令系統、⑦外注費支払先、⑧下請業者編成表、⑨法人の確定申告書の代表者への報告の観点から、本件関係法人には法人としての実体がないとして、その売上等及び費用・経費等の全てを請求人に付け替え、それに対応する更正処分を行いました。この処分に対して、請求人及び本件関係法人は、予て、原処分庁に対して再調査の請求を行っていたところ、その回答としての「決定書謄本」の送達が1026日にあり、その「決定」後の処分になお不服があったことから、審査請求(以下、「本件審査請求」という。)を行ったことを前回のコラムでも触れました。

 

本件審査請求の理由は、以前のコラムにも一貫して述べてきているように、原処分庁の上記①~⑨までの認定自体には大きな問題が存在しています。そして、原処分には、それらを理由として消費税額等及び法人税額等を更正するに当たって、虚偽事実が記載され、事実誤認、法令適用の誤り等があること、更正の理由の附記に不備があること、税額等の計算過程及び算出根拠が不明であること、請求人を含めた本件関係法人に対する原処分は、請求人に対する一連の税務調査及び国税局調査査察部門における反面調査の関連で行われているところ、当該調査が法令に違反していること等が明らかであると思われるところから、本件審査請求を行ったものです。なお、具体的な内容についての言及は、本テーマの中では最小限に止め、この後のテーマの中で改めて取り上げることとしたいと思います。

 

行政不服審査法18条によれば、審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に、行政庁に対して行わなければなりません(再調査の請求も同様です)。なお、再調査の請求についての処分庁の「決定」を経た場合の国税不服審判所に対しての審査請求は、その決定書謄本の送達があったことを知った日の翌日から起算して1月以内にしなければならないことになっています。今回のケースで、若干混乱するのは、再調査の請求書を提出していたのは請求人、本件関係法人3社の合計4社、であり、今回の原処分庁からの決定書はそれぞれに届いており、その決定の内容は、請求人と関係法人2社のうちの1社、つまり2社については、処分を取り消した上、理由を差し替えて再処分、残りの2社については棄却と却下でした。

 

そうすると、この決定後の処分には、当然のことながら不服があり審査請求をすることになりますが、その期間は同じではなく、「棄却」と「却下」については、1月以内、取消後の再処分は3月以内ということになります。紛らわしいので、今回は、取消後の再処分についても、棄却、却下の場合と同時に1月の期限内に提出することにしました。ここで疑問に思うことは、禁じ手とも思える、処分の一旦取消、処分理由を差し替え同内容の再処分があった場合の審査請求の対象となる処分について、再調査の請求に係る決定によって取消される前の処分か、あるいは、取消された後の処分かということです。釈然としませんが、審査請求実務では、取消された後の処分が「原処分」になるとのことのようです。

 

というのも、国税不服審判所のWeb上の「Q&Aコーナ」には、以下のように掲示がされています。Q)審査請求の対象となるのは「原処分」それとも「再調査の請求についての決定」?A)国税通則法第75条第3項で、再調査の請求についての決定(以下「再調査決定」という。)を経た後の処分になお不服があるときは、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができることとされています。この場合における審査請求の対象となるのは「原処分」となります。これは、「再調査決定」が国税通則法第76条第1項第1号で不服申立ての対象とすることができない処分とされているからです。

 

また、最高裁昭和47331日判決においては、「再調査決定の附記理由が仮に不備でなかったとしても、これにより遡って更正処分の附記理由の不備が治癒されると解することはできない」、また、最高裁平成23年判決は、処分庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨から、その記載を欠く処分においては処分自体の取消しを免れない旨を判示し、理由附記の追完は認めないことを明らかにしています。いずれにしても、原処分庁は、法人税等更正当初処分の理由附記の不備を治癒すべく、これを一旦取消した上で、理由を差し替えて再度法人税等更正処分を行ったもので、理由の差し替えを目的とした再更正処分であることは明らかであり、根拠法令や課税標準の具体的な計算過程が記載されていない法人税等更正当初処分における理由附記不備は、本件法人税等更正処分によって治癒するものではないと考えられます。

 

このような、原処分にはなかった理由を附記し処分理由を差し替えていることに関連しては、救済手続の全ての段階において、処分理由の差替え・後出しを認めるべきではないとする見解が日本弁護士連合会「国税不服審判所及び租税訴訟の制度改革に関する提言」(201212月)からも発出されています。 (このテーマ終わり)

文責(G.K

 

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