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租税不服申立について(原処分庁に対する再調査の請求編)

2019/12/11

前回のコラムで触れていたように、今回からは審査請求を含めた一連の租税不服申立の具体的内容について再論ないしは再々論してみたいと思います。このコラムで、このような、いわゆる租税争訟に係るテーマを、このように繰返し取り上げているのは、本来、適正に行われるべき「租税の確定と徴収」が違法に行われたことが強く疑われるからです。そのような場合、国民(納税者ないし納税義務者)は、その権利の保護を求めて争うこと、すなわち租税争訟(制度)が保障されていなければ、憲法にその規定を置く租税法律主義は、何らの意味を持たないことになります。租税争訟のうち、租税行政庁に対するものを、一般に租税不服申立と称しています。

 

租税不服申立(制度)は、国税に関する法律に基づき税務署長等が行った更正・決定などの課税処分、差押えなどの滞納処分等に不服があるとき、その処分に不服のある人が、その処分の取消しや変更を求めることができる制度です。その場合、処分の通知を受けた日の翌日から原則として3か月以内に、国税不服審判所長に対する「審査請求」か、処分を行った税務署長等に対する「再調査の請求」のいずれかを選択して行うことができます。審査請求は、再調査の請求を経ずに直接行うこともでき、再調査の請求を行った場合であっても、再調査の請求についての決定後の処分になお不服があるときは、再調査決定書謄本の送達があった日の翌日から1か月以内に審査請求をすることができます。本件租税不服申立は、既に触れているとおり、処分を行った税務署長、すなわち原処分庁に対する「再調査の請求」を経由したのち、国税不服審判所に対して審査請求を行ったものです。

 

ここで、本件再調査の請求の内容について確認してみたいと思いますが、これまでも繰り返し述べているように、原処分庁は、消費税等及び法人税等に共通して、①法人の出資金の拠出者、②経理処理・決算内容の報告、③経理事務、④給与の支給、⑤現場における従業員、⑥指揮命令系統、⑦外注費支払先、⑧下請業者編成表、⑨法人の確定申告書の代表者への報告等の観点から、本件関係法人には法人としての実体がないと判断して、その売上等及び費用・経費等の全てを請求人に付け替え、それに対応する更正処分を行いました。この処分に至った原処分庁の判断に対して、請求人及び関係法人3社は、全体としての反論、そして摘示された個別の各事実についての主張ないし反論を示し、原処分庁に対して再調査の請求を行いました。まず、全体的反論としては、原処分庁の判断には事実誤認あるいは法令適用の明白な誤りがあるとして、①租税法律主義違反、②取引社会の実情との乖離、③本件における判断要素の3点を挙げています。①については、「そもそも、租税法律主義の下では、個別の否認規定によらず、租税公平主義の原則若しくは実質主義による否認は認められない」とし、「法律の根拠なしに、当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取り扱う権限が課税庁に認められているものではない」として、「特に、消費税法では、課税要件たる納税義務者を『事業者』(同法51項)と定め、『事業者』は個人事業者及び『法人』をいうものと規定している(同法214号)。」「『法人』概念については、民商法と同一義に解すべきであり、会社法は準則主義を採用し」ていることから、「,設立登記が適法になされている以上は、『法人』として扱われなければならない」としています。

 

「請求人及び本件関係法人は;税法上も独立の納税義務者の地位にあり、かつ、消費税法には行為計算の否認規定がないにも拘わらず、目的論的な解釈や評価によって安易に本件関係法人の事業実体を否定し、外注費を仮装しているとし、その売上等及び費用・経費等の全てを請求人に付け替えるという取扱いが税務当局によって恣意的になされるならば、あたかも法律に規定のない新たな課税要件や課税措置が創出されるだけでなく、納税義務者の予測可能性や法的安定性を著しく阻害することは明白」であるとしています。「したがって、このように法律の規定なく独立した法人間の一体性を安易に認めることは、憲法84条の定める租税法律主義に反する違法な処分」となるとしています。

 

②については、「異なる法人であるにも拘わらず、明確な法律上の要件もないまま一体のものと看做して租税法上の効力を拡張することが安易に許容されれば、取引社会に著しい混乱を招く」としており、「グループ企業間においてアウトソーシング(外注)が取り入れられていることは、取引社会においてはごく一般的な事象として広く社会に普及しており、グループ企業内における経営判断が、実質的には主たる企業の経営者によってなされていることも少なくなく、それが『資本の論理」である。「企業のオーナーと代表取締役が別であり、代表取締役が実質的に経営に参画しないいわゆる雇われ社長であることも、また珍しいことではなく、そのような場合であっても、当該企業において現実に事業が遂行されている以上は、法人としての実体を否定されることなく取引が行われ、その成果には法人税が課されている。このような実情に照らしても、法人間に厳格な分離を求めることは著しく取引社会における社会通念に反しており、その間の取引が外注費となることもまた自明であ」るとしています。

 

③については、「本件各原処分は、請求人から本件関係法人への外注費が仮装されたかどうかという民事上の契約(請負)関係を前提とした法的評価を問題としているのであるから、より本質的には、請求人と本件関係法人の間の請負契約(外注)が民事上有効に成立したといえるか否かというメルクマールにより判断されるべきである。具体的には、(1)各法人の従業員の帰属が雇用契約上区別されているか、(2)請負代金の積算方法等からして請負契約としての実質や経済合理性を備えているか、といった私法上の観点が特に重視されなければならない。その上で、(3)資本関係、(4)役員関係、(5)決算・帳簿・申告などの状況、(6)関係法人の業務の実態などの要素をも勘案しつつ、私法上における法律関係及び事実関係に即して総合的に判断されることになる。そして、本件では、請求人と本件関係法人との間に、一定の取引上の関連性や協力関係が認められることは否定できないとしても、上記の各判断要素を総合的に考慮すれば、少なくとも、請求人から本件関係法人に対する当該各事業年度における支払いは、税法上、外注費として処理することが許容される程度には経済合理性を有しており、その意味において本件関係法人の事業実体が認められることは明らか」であるとしています。 (つづく)

文責(G.K

 

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