Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 番外編…政府の閣議決定(反社会的勢力の定義は困難?)

番外編…政府の閣議決定(反社会的勢力の定義は困難?)

2019/12/16

本題から一旦離れ、今回は、時事問題を取り上げてみたいと思います。首相主催の「桜を見る会」に「反社会的勢力」とみられる人が出席していたとされる問題で、去る1210日に閣議決定された政府側の答弁書において、「反社会的勢力の定義」は、「形態が多様であり、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的に定義することは困難」であるとするものでした。翌日の官房長官の記者会見の模様を視聴していて唖然としましたが、これは、予て野党議員から出されていた質問主意書に対する政府側の公式な回答ともいうべきものです。この他にも、「桜を見る会」については、1700万円ほどの予算にも拘らず5000万円を超える支出が続き、参加者も現政権以前の1万人程度から18000人ほどに増えていると、予てより野党議員から指摘を受けていました。

 

曩に政府は、07年策定の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」において、「反社会的勢力」を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」と明記していました。この指針に従って、全国津々浦々に至る信用組合から銀行に至るまでのすべての金融機関の応接室には、彼等との関係遮断に関するポスター等の掲示がなされ、また、一般社会においても同様の取り組みがなされているところであり、将に今回の答弁書の内容は詭弁というほかありません。今回の決定は、指針に真摯に向き合って関係遮断に取り組む企業等に対し、それらのはしごを外すような行為ではないのでしょうか。これに関連し、記者会見において、「定義が困難なら、反社会的勢力の口座開設を規制する金融機関の取り組みも曖昧になるのでは」と問われた官房長官は、「指針を踏まえ、暴力団をはじめとする反社会勢力との関係の遮断を着実に進めているのではないか」と強調していますが、単なる思い付きの、言い逃れでなければよいのですが。

 

また、今年の「桜を見る会」を巡っては、内閣府が野党議員による招待者名簿等の資料の提出要求があった直後に当該名簿等の資料はシュレッダーにかけられ、電子データも前後して削除されています。しかし、バックアップ・データは最長8週間、保存される仕組みであり、データの復元が可能だったにも拘わらず、しなかった理由として、官房長官は「バックアップ・データは行政文書ではない」と断言しています。廃棄処分したことについて、この会の招待者名簿の保存期限は「1年未満」であり、バックアップ・データは存在したが、そこからの復元は試みなかったと強弁していますが、合理性を欠くものであり、有識者は「資料の提出要求があった時点でその廃棄を止めなければならず、仮に既に廃棄していたとしてもバックアップ・データを復元」すべきであったことを指摘しています。内閣府がこの「公文書」である名簿等の資料を破棄したことには、保存期限もさることながら、それ以外の他の意味があるように思えてなりません。

 

「桜を見る会」の予算が1700万円ほどであるにも拘らず、5000万円を超える支出で、しかも国民の税金が充てられているとすれば、それが適正に使われたか否かのチェックをしなければなりません。このチェックを行うためには、「桜を見る会」の名簿はそのチェックを行う時点まで保存しておかなければならず、それに際しては、参加者の人数と氏名の突合、確認は不可欠です。再三触れているように、1700万円ほどの予算では足りず、数千万円も追加しているとすれば、なおさらです。立場をかえて、仮に税務調査において納税義務者が、本来は帳簿等の保存期間が9年であるとして、それより短い期間で処分したり、あるいは個人情報だからと言い訳して交際費関連の原始証憑等の書類を提示しなかったら、どうなるのでしょうか。

 

官房長官は、バックアップ・データは行政機関の職員が組織的に利用できない状態なので、公文書管理法が定める定義に当たらないといっていますが、では、バックアップ・データは何のために存在するのでしょうか。廃棄処分を正当化するために、将に手前勝手に定義を縮小して構築しているものではないのでしょうか。権力者は、自らを省みることがあるのでしょうか、そして、政治(家)は、彼我の違いには気付いていながら、気付かぬ振りを貫くものでしょうか。政治(家)の劣化が気になるところです。(このテーマ終わり)

文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ