Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 租税不服申立について(原処分庁に対する再調査の請求編…その2)

租税不服申立について(原処分庁に対する再調査の請求編…その2)

2019/12/23

9項目にわたる一方的な判断要素を挙げ、本件関係法人には事業実体が認められないと主張する原処分庁に対して、請求人は、再調査の請求における反論として、全体としては前回述べたように、3点から、また、適示された個別の主張9点については、以下のように主張しました。すなわち、原処分庁は、①関係法人の出資金の拠出者について、実質的に、「請求人の当時の社長であったA氏あるいは専務であったB氏が拠出しており、本件関係法人には事業実体がない」と主張しています。この主張の反論として、請求人は、「仮に、本件関係法人の出資金の拠出者がA氏あるいはB氏であったとしても、第三者の出資あるいは借入金により新たに会社を設立することは通常あり得る事情であり、これをもって本件関係法人の事業実体を否定する理由とはなり得ない」と主張しています。

 

②経理処理・決算内容の報告について、原処分庁は、「B氏が中心になって関係法人の経理処理、給与計算及び税理士事務所とのやり取りを行い、関係法人の代表取締役は決算内容を存知していない」と主張しています。これに対する請求人の反論としては、「本件関係法人の決算書類は、T税理士事務所(以下、「T事務所」という。)において作成され、税務申告も行われていた。決算に当たっては、I税理士が本件関係法人の事務所を訪れて決算内容の確認を行なっていたが、同税理士が、B氏に対し断片的な事実確認を行なうことはあったが、B氏が決算の内容等について異論を唱えたり、指示したりすることはなかった。また、同税理士は、上記確認を行ないながら手元で計算作業を行ない、計算終了後に大概的な売上や利益を説明し、全体の納税額を説明することはあったが、具体的な決算内容や税目ごとの納税額を説明することはなく、B氏から確認を求めることもなかった。T事務所において作成した税務申告書類の提出も、T事務所の職員が本件関係法人の事務所に来て、事務机の上にある代表印を勝手に押して帰ることが常態化しており、申告書類をB氏や請求人の代表者らに示して説明したり、了承を求めたりすることはなかった。このように、本件関係法人の決算内容は、T事務所に全面的に委ねられていたことから、本件関係法人の代表者らが決算内容を逐一把握する必要はなく、したがって、本件関係法人の代表者らが決算内容等を充分には存知していなかったことと本件関係法人の事業の実体との間に関連性はなく、本件関係法人の事業の実体を否定する理由にはならない」と主張しています。

 

③経理事務について、原処分庁は、「B氏は、自分で本件関係法人の日常の経理を行っている旨申述しており、T事務所の事務員も同様の申述をしている」と主張しています。一方、請求人の反論としては、「B氏が自ら本件関係法人の日常の経理を行っている旨の申述をしていたとの表示は虚偽表示であり、本人はそのような申述をしたことはないと断言している。B氏は、顧問契約を締結していたT事務所の指示に従い、本件関係法人の現金出納帳や領収書、振替伝票などを区別し、T事務所に渡していたが、あくまでT事務所の業務の補助的なものであり、それを『日常の経理を行って』いたと『申述』したとするのは、虚偽表示に他ならない。同様に、T事務所の事務員の『申述』とされるものも虚偽表示の疑いが濃厚である。それは、T事務所における会計処理に当たっての原始証憑を確認すれば明らかとなることである。B氏は、顧問契約を締結していたT事務所の指示に従い、本件関係法人の現金出納帳や領収書、振替伝票などを区別し、T事務所に渡していた。T事務所においては、かかる原始証憑(会計資料)を基に、請求人と本件関係法人のそれぞれについて、総勘定元帳や試算表の作成等の会計処理を行なっていたものである。このように請求人と本件関係法人とは、それぞれ別個に会計・税務の専門家である税理士の関与のもとで明確に区分された経理事務及び経理処理が行われており、それに基づく申告・納付も行われており、このことが本件関係法人の事業実体を否定する理由とはなり得ない」と主張しています。

 

④給与の支給について、原処分庁は、「本件関係法人が給与を支給していたとする者らは、本件関係法人で勤務した事実はなく、請求人の会社で勤務していた旨の申述をしている」と主張しています。請求人の反論としては、「本件関係法人が給与を支給していたとする者が、請求人で勤務していた旨を申述しているとの指摘は、上記③と同様、虚偽表示ないしは事実誤認であり、悪性を印象付けようとするものである。本件関係法人の職場で働く社員を含む従業員と請求人で勤務する社員を含めた従業員とは、求人募集に応募し、面接から採用に至る過程で、本人の希望により、主として社会保険に加入を希望する者及びそれを望まない者とに分けられ、前者については請求人に、それ以外の後者は本件関係法人に在籍し、それぞれの所属先から給与が支給されていた(それらについては、通年雇用であれば自らの預金通帳の振込先を確認すれば明らかとなり、季節雇用であれば、通帳の他、離職票を確認すれば明らかとなる)。­したがって、本指摘も虚偽表示の疑いが強く、ないしは意図的に事実関係を誤認したように見せかけ、殊更に悪性を強調しようとしている疑いが濃厚である。これをもって本件関係法人の事業実体を否定する理由とすることはあってはならない」と主張しています。

 

⑤現場における従業員についての原処分庁の主張は、「A氏は、元請先に本件関係法人が給与を支給していたとする者らを請求人の従業員であると伝えて現場に入れていた旨申述している」と主張しています。これに対し、請求人は、「元請先(ゼネコン)が契約を締結していたのは請求人(一次下請)であることから、A氏がその施工を担当する本件関係法人(二次下請)の従業員を、元請先に請求人の従業員として伝え、現場に入れていたのは当然であり、従業員においても、対外的にはそのような認識を示すのもまた当然である。したがって、指摘は上記④と同様、事実関係を誤認、殊更悪性の印象操作をするものであり、これをもって、本件関係法人の事業実体を否定する理由とはなり得ない」と主張しています。

 

⑥指揮命令系統について、原処分庁は、「上記④及び⑤の事実から本件関係法人が給与を支給していたとする者らは、A氏の指揮命令下にあり、本件関係法人との雇用関係が認められない」と主張しています。一方、請求人は、「前記④においても述べているとおり、面接から採用の過程において社会保険に加入を希望しない者については、本人の希望により、本件関係法人の職長に紹介され、採用後は当該法人との間で雇用契約が締結され、請求人とは別異の法人に所属し、その指揮命令に服すことになっていた(雇用契約関係の書類を見れば明らかである)。したがって、A氏及びB氏らの指揮命令系統と同一ではなく、その指揮命令を受けることはあり得ず、本指摘は虚偽表示、若しくは事実関係を意図的に誤認して請求人の事業実体を否定する理由とするものであり、本指摘は極めて公正・公平を欠くものである。なお、元請先から工事を受注している請求人が、工事全般について監督し指揮命令することは当然のことであり、その意味において、関係法人の従業員が間接的に請求人の指揮命令下で作業に従事しているものであるが、このことをもって、『関係法人が請求人に対する役務の提供を行った事実はない』と認定することは、極めて不当な評価である」と主張しています。 (つづく)

文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ