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消費増税への慎重論とアベノミクス その2

2016/03/03
最近の新聞をはじめとするマスコミ報道には、次第にアベノミクスの綻びを指摘する内容が目立つようになってきました。第1次安倍内閣を、不本意な形で自ら幕を引いた人が、民主党の期待外れによる敵失、いわばオウンゴールに救われて再び総理大臣の椅子を得、何やら自己陶酔的な形のうちに進めていく経済政策を含めた政権運営に、一抹の不安とその危うさに国民の多くが気づき始めたのかもしれません。

 

アベノミクスは、金融政策と財政政策で急場を凌ぎつつ第3の矢である成長戦略により経済の底上げを図り、デフレ脱出を目指す筋書であったと考えられます。しかし、その本質は、前回もお伝えしました異次元の金融緩和とひたすら公共事業の拡大に舵を取り続けるものでした。それらの、いわばカンフル剤の効果はここにきて薄れ、ないしは切れて"元の木阿弥"状態になりつつあることが失望の大きな要因になっているものと思われます。

 

政府と歩調を合わせ、日銀がマイナス金利を導入して以降、為替や株価(円高株安)は乱高下していますが、そんな中、政府側の首相を初めとする主要閣僚は、"ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)"は悪くないとしていますが、現状はそれを語っても何も説明ができない程、混沌としている上、アベノミクスに対する国民的関心が高い割には、この用語の意味合いを十分に理解している国民は多くなく、政府としての説明責任も欠如しているように思われます。

 

このような日本経済の足元の不安要因の広がりを受けて、来年4月に消費税率を10%に引き上げることについての首相の考え方を、このところ繰り返し聞かれていますが、それについて首相は、「リーマン・ショックや大震災のような重大事態が発生しない限り、確実に実施していく考えだ」と強気の姿勢で答弁しています。しかし、穿った見方をすれば、それを強調すればする程、取り巻きからも増税延期を求める声が出始めていることもあり、意外にアッサリと重大事態と認識し、消費増税を再延期する可能性があるように思われます。

 

このような中、首相は最近の国会審議で、予定通り税率を引き上げる方針を明言する一方で、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」などと主張するようになってきています。衆議院総務委員会でも、「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」と語るなど、微妙に軌道修正を図っているようにも思われます。

 

国会における首相に対する野党議員の質問でも、「6月に再増税先送りの決断をして、その是非を問うことを大義名分に衆議院を解散し、7月の衆参ダブル選挙のシナリオ」を考えていませんかというものがありました。もちろん、首相は否定こそしてはいましたが、これには伏線があります。すなわち、「税率を上げて税収が上がらないようでは、消費税を引き上げることはあり得ない。税率を上げて税収が下がった経験もある」とする官房長官のコメントです。

 

いずれにせよ、特に年明け以降のこのような閉塞感に包まれた、"いつか通った道"から脱するには、仮令、億劫であっても、前政権時の3党合意で決定した、「社会保障と税の一体改革」の原点に愚直に立ち返り、国民の不信と不安を払拭する実効的な政策の速やかな実施が求められると考えています。  (了) 

文責 (G・K)

 

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