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租税不服申立について(国税不服審判所への審査請求編…その3)

2020/02/20

看做されるといっても、それは「真の事実関係」を無視した原処分庁の恣意的ないしは一方的な判断であり、「先に結論ありき」の原処分庁が“偽りその他不正の行為”を認定するために有利なように、敢えて事実誤認、誤導、虚偽表示等を重ね、殊更、請求人らの悪性を印象操作していることを強く疑うのに十分なものとなっています。原処分庁が示した証拠の中には、当然、原処分庁が採用したくない、ないしは自らにとって不利な意見や証言、証拠も存在しているわけですが、それらには敢えて目を瞑って無視し、原処分庁自らにとって有利と思われる意見や証言のみを誇張表現(虚偽表示)し、判断の根拠としています。

 

このようなことから、原処分庁が答弁書において、如何に「処分の適法性」を強調したとしても、それが請求人に妥当する、そして客観的に受け容れ可能なものでなければ、それは、原処分庁の主観に過ぎず、証拠とはなり得ないものということになります。そのような状況にある中、HS株式会社においては、法人設立後、現在に至るもその事業は継続しているところ、2年で関係法人を解散したとの前提で、T氏に消費税の免税期間を悪用することに関する知識があったとの判断をなし、消費税等を軽減ないし免れていたとする認定は、論理矛盾も甚だしく、杜撰な調査及び杜撰な認定そのものであり、全く論外という他はありません。

 

そこで、改めて原処分庁の答弁書に摘示、認定されている事実関係等のうち、明らかに事実とは相違するものについて取り上げてみたいと思います。というのも、請求人(代理人)は、本件法人税等及び消費税等の更正処分に先立って、金融機関の紹介で請求人及びその関係法人であるHS株式会社と顧問契約を締結しています。金融機関から紹介を受け、当時の請求人の代表取締役であったX氏及び同専務取締役であったT氏との初面談の折、その後に予想される税務調査、査察調査に関連して行われる聞き取り等(質問調査及び顛末書並びに応答記録書等の作成)に際して、必ず、当日どのような質問をされ、それらに対してどのように回答したかを記録するようアドバイスをしています。(後に告発を受け、検察官による検面調書及び録取書等の作成時においても同様に被疑者ノート及び被告ノートをつけるようアドバイスしています。)それらを総合して、原処分庁による答弁書と比較すれば、どのような質問に対してどのように回答したかが概ね明らかとなり、同時に虚偽表示ないし悪性を印象付けるような誘導による表現等も明らかになると考えられます。

 

原処分庁が答弁書において認定、判断の前提としている「事実」には、以下に述べるように、「先に偽りその他不正の行為ありき」の意図に基づくと思われる、杜撰な調査(計算を含む)が多く含まれており、多くの事実誤認及び虚偽表示等が存在し、結果として、誤った法令の解釈、適用がなされていると思われます。というのも、答弁書におけるX氏の申述とされる部分は、総じて、国税当局による請求人の悪性を印象付ける誘導による表現ではないかと思われます。例えば、国税局職員が二次下請以下の、いわゆる下流下請を束ねる一次下請としての心構えないし気構えを質問した内容に対する次のような回答です。「本件各関係法人及びC施工は、言うなれば請求人と一体であるといってもいいくらいなので、これらの会社のことは常に把握し、管理するようにしている。」と述べたとしており、これは本件各関係法人に実体がないにも拘らず、実体があるように仮装していることを暗に印象付けるべく意図的に印象操作をしていると思われます。文章化する上では“一次下請として”が加えられていなければなりませんが、それが意図的に省略されているように思われます。

 

同様に、国税局職員に一次下請による二次下請以下の管理、監督関係等を質問され、それに対してX氏が申述したとされる次のくだりです。すなわち、「現場の従業員の勤務時間の管理や休暇は、各現場の職長、いわゆる親方が自分の班員の分を取りまとめて、請求人の本社へ報告させていたので、最終的には請求人の本社で管理していた。」とされるものです。これも、枢要な部分に、関係法人の実体を否定すべく意図的な文章の省略があり、本来は、(一次下請としての責任を負担する)請求人の本社で(も)管理していた」と表示すべきものです。また、同様に「…社会保険を掛けない従業員を所属させることは、(最終的には私に責任があるものと認識していたので)私が決めた」とすべきであったものを、意図的にかっこ書きの部分を省略したものと思われます。文章を省略することで、意味内容が変化し、殊更、悪性への印象操作に繋がるのは、当然の帰結です。

 

答弁書におけるT氏の申述とされる部分は、国税局の職員からの、一次下請が負担する元請けに対する責任等で、二次下請以下の下流下請である本件各関係法人及びC施工等に関する質問です。すなわち、「本件各関係法人、C施工等の法人についても、夫が自由にできる会社であり、それらの法人の代表取締役についても、名義上、親族がなっていました。」と回答しています。しかし、それは、元請等に対する最終責任は夫にあるとの趣旨を回答したものに過ぎないものと思われます。これを、関係法人には実体がない→仮装であり→偽りその他不正の行為であるとするには、印象操作を超越した意図的な虚偽表示、論理の飛躍であり、租税法律主義の観点からは、大きな問題となります。同じく答弁書におけるT氏の、「本件各関係法人の所属とした従業員の勤務時間の管理又は現場の割り振りなど、従業員の管理は請求人がやっていました。」とする申述を、原処分庁は答弁書において、上記に述べたような理由で問題視していますが、これについては、本件各関係法人はもちろん、一次下請の責任上、請求人においても関知しているのは当然のことであり、問題にはなるべくもないように思われます。

 

同じく原処分庁は答弁書において、本件各関係法人は建設業許可を取得しておらず、建設業法に違反していると指摘しています。しかし、本件各関係法人のような形態の二次下請には建設業の許認可は必要ではなく、“なすべきことをなしていないかのような”すなわち、意図的とも思われる手法で、何らかの法令違反を想起させる答弁書における表現方法が随所に見られ、曩にも述べた印象操作を超越した意図的な虚偽表示といわざるを得ません。因みに、請求人の関係法人のうちHS株式会社にあっては、一般建設業許可を取得しています。また、二次下請として建設業許可が義務付けられているのは、1件の工事の請負代金が500万円以上(材工)の工事を請負う場合であって、本件各関係法人の場合、請求人から請けた工事は、各現場ごとに細分化されており、全体としては、ほぼ1件当たりの平均請負金額は500万円未満となっています。なお、現況においても、同様の請負方式は本件各関係法人に限らず、建設業においては広く観察されている事象でもあります。(つづく)

文責(G.K

 

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