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消費増税への慎重論とアベノミクス その1

2016/02/20
アベノミクスにおける1本目の矢と歩調を合わせた日銀による「黒田総裁のバズーカ砲」といわれた異次元の金融緩和は、それが「異次元」であったがために、ある意味においては成功したと評価されると思います。しかし、ここにきて外的要因(中国経済の失速、原油安、新興国・資源国の債務問題等)も加わり、想定され、そして当初観測された効果が十分に発揮されていないところから、日銀は唐突とも思われる形でマイナス金利を導入しましたが、これにより市場は一気に大混乱を来してしまいました。

 

年初以降、世界の金融市場は不安定な動きが広がっていて、日経平均株価は一時、1万5千円を割り、内閣府が先日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%減、年率換算では1.4%減で2四半期ぶりのマイナス成長となり、また総務省が発表した2015年の家計調査によれば、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比2.3%減で、2年連続で前年を下回っています。このことは、一昨年の4月の消費増税後の個人消費手控えムードや増税の後遺症が長引いて、或いは後遺症を引きずったままでいることを示しているものと考えられます。

 

マイナス成長の要因は、上に述べたことに加えて、なりふり構わず政府が企業に強硬に賃上げ要請をしたにも拘らず、昨年の実質賃金は4年連続で減少し、一部の大企業では春闘でベースアップを2年連続実施していましたが、全体的には円安に伴う材料費や物価の上昇に賃上げが追いついていないことが個人消費の低迷に大きく作用していると考えられます。このような状況から、実際には、景気は回復の足踏みというよりは、むしろ後退局面に入ったと疑われるような現状にあるとして、マスコミの多くには、アベノミクスが機能していない或いは失敗したとする報道論調が目立っています。

 

近時、安倍総理大臣を含めて、交代した経済再生担当大臣は、「日本経済のファンダメンタルズは良好であり、その状況に変化があるとは認識していないので、今後は、雇用や所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、景気は緩やかな回復に向かうと見込まれる」と述べていますが、野党は、輸出が減少に転じ景気の牽引役が見当たらない現状を考えれば甘い認識だといわざるを得ないと主張しています。事ほど左様に、年明け以降は、円高・株安が進行し、企業々績には不透明感が強まり、日銀のマイナス金利導入の効果は打ち消され、むしろマイナス面の効果さえ出現している状況にあります。

このような日本経済の状況の中、来年4月の消費税率10%へ引き上げる増税の先送り論が次第に国民の関心事となりつつあります。安倍総理大臣も難しい判断を迫られることになり、現時点においては、おそらく白紙の状態にあると思われますが、2度目の消費増税の延期にはリスクが伴い、野党はここぞとばかりに、「アベノミクスの失敗」を声高に叫び、その批判をするものと思われます。(その2に続く)

文責 (G・K)

 

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