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租税不服申立について(国税不服審判所への審査請求編…その11)

2020/07/20

請求人は、以前にも述べたように、再調査の請求を経由したのち、審査請求を行っています。ここで、念のため、再度、審査請求の流れについて確認してみたいと思います。原処分庁は、審査請求書に対する反論主張としての「答弁書」を審判所に提出しますが、その複写は請求人にも送られてきます。その答弁書に対する反論を請求人は、「反論書」として審判所に提出します。原処分庁は、請求人の「反論書」に対する反論として、原処分庁の意見書を提出し、請求人は、原処分庁の意見書に対する反論を請求人の「意見書」として提出します。その間に請求人は、口頭意見陳述を申立てることができ、原処分庁の担当者らに質問をすることができますが、その場で回答ができない事項に対しては、後日、その回答書が審判所に提出され、請求人においてこれに反論がある場合は、さらに請求人意見書を提出することになります。


こうして、主として書面による遣り取りによる双方の主張が出尽くすと、担当審判官は必要な審理を終えたと認め、審理手続を終結することになります。ここでは、それらの審理の流れのうちの、当初段階にあたる部分について述べています。すなわち、請求人は、自らが提出した審査請求書に対する原処分庁からの反論を記載した答弁書に対する、請求人の反論を主張すべく、答弁書の項目立てに沿い反論を述べているものです。前回から続く原処分庁の評価として、本件各関係法人が2年で解散していることについて以下の記載が答弁書にあります。「請求人は、本件各関係法人は、(中略)2年で解散することで社会保険加入を望まない従業員の受け皿となっており、(中略)租税法上の責めを負わされるものではない旨主張して」いるが、「T氏は、基準期間のない法人の消費税の免税義務の知識があったとし、この制度を悪用すべく請求人の従業員を事業実体のない本件各関係法人の従業員とさせ、当該従業員の給与を請求人の外注費とし、請求人の消費税等の仕入税額控除の対象とすることで、消費税等の納税額を軽減した」を概略主旨として結論を導くものです。


しかしながら、関係法人の1社であるHS社は、平成2〇年に設立後、現在も法人としての業務を継続しているところから、本件各関係法人を一括りにして結び付けて結論とし、「したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。」とする原処分庁の主張は明らかに誤りと言えます。また、原処分庁は、この結論に至る認定(推認)の根拠として、上記の内容虚偽の「事実」の認識からの認定を補強すべく旧関与税理士であるI氏及び同氏の事務所職員並びにK司法書士らの申述を挙げています。しかしながら、それらは虚偽証言及びそれに基づく虚偽記載、司法取引類似の特別な事情による虚偽証言をしていることが強く疑われるところです。何故なら、本件事案を主導したI税理士と請求人らは「通謀」したと原処分庁は主張していますが、通謀は一人では成立せず、必ずその相手方が必要になります。


しかし、通謀したとしながら、その相手方であるI氏及びその事務所は、その責めを負わされておらず、嫌疑なしの扱いとなっています。通謀の一方の相手方に嫌疑がなければ、他方の相手方である請求人らにも嫌疑がないことは明らかです。また、原処分に先立つ税務調査に関して、請求人の代理人の一員であるH税理士は、平成2〇年〇月の税務調査に関する情報収集のため、平成3〇年〇月に原処分庁に対し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)41項に基づき開示請求しましたが、同法8条の規定を盾に、当該文書の存知を明らかにしないままで、本件開示請求を拒否する旨の通知を受領しています。よって、請求人らは、原処分庁が上記調査の存在、調査における担当者の発言及び手持資料の存在等を否定する場合は、証拠として事前準備資料を含む調査書綴り全体の提示を求めてきましたが、現在に至るも応答はありません。


原処分庁は答弁書において、原処分の適法性を主張していますが、請求人は反論書に述べているように、法人税法11条の規定及び消費税法131項の規定は、いずれもその要件を満たさず、適用できないことから、請求人及び本件各関係法人は、原処分は法律の解釈・適用を誤っており、直ちに取消されるべきものと考えています。また、請求人は審査請求書で述べているように、原処分は、当該処分に先立って行われた当初処分について、処分の基因となった事実、更正の理由及び処分の理由に係る記載が不十分であったとして、令和〇年○○月〇日付でこれを取消し、理由を差し替えて同日付で原処分として行われており、原処分は理由の差し替えを目的とした処分であることは明らかであり、法の趣旨を無視した違法な処分と考えています。


仮に原処分庁が主張するように、T氏が消費税の免税期間の特例を知っていて、当該基準期間内において、社会保険料の負担節減や従業員の定着目的で法人の設立、解散を行っていた場合であっても、税法がそれを処罰することはできないと考えています。何故なら、当該設立・解散行為が“偽りその他不正の行為”であると断定できる直接証拠がない情況で、上述した基準期間のない消費税の免税制度という「法の缺欠」、「法の不備」が存在し、これが不公平であると判断されるのであれば、立法によって解決すべきであるからです。また、行政手続法は、その141項で、「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。」との規定を置き、これを受けて国税通則法は、74条の112項に「国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。」との規定を置いています。しかし、本件法人税等及び消費税等の更正処分等に当たって原処分庁は、請求人代理人からの書面による質問に対しても、本件更正処分等の理由に係る何らの回答も示しておらず、本件更正処分にはその手続き面において、明らかな瑕疵が存在しています。


原処分庁が答弁書において「事実」であるとして摘示、強弁するものは、伝聞に基づく主観を推測ないし憶測によって誇張、虚偽的表示がなされているものが多く、悪性を殊更に誇張しようとする印象操作が強く窺われ、それらはいずれも、請求人及び本件各関係法人が「故意」により法人税等及び消費税等を免れたとする直接証拠を明示するものではありません。また、原処分庁が平成2〇年○○月○○日付で行った更正処分等(当初処分)に対して請求人は再調査の請求をしましたが、これに対しては、標準的期間を遥かに超え、荏苒と時間を要し、令和〇年○○月〇日になって、漸く法人税額等及び消費税額等の更正処分取消通知書及び同日付でほぼ同一内容を原処分であるとする法人税額等及び消費税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書の送達を受けました。


この間、累度にわたって原処分庁から再調査決定書謄本の送達を示唆する電話を受けましたが、それらの「約束」は全て履行されることはなく、その後、令和〇年○○月○○日になって、確たる論拠や明確な答弁もないまま、再調査の請求を却下するとした再調査決定通知書が請求人に送達されたことから、本件各関係法人らとともに国税不服審判所に審査請求をしています。このように、当初の処分を取り消し、同日付で理由を差し替え、若しくは追完して新たな処分をすることで、当初の処分の瑕疵が治癒するものではなく、最高裁もこれを禁じる判決を出しているところです。このように答弁書においては、法令の解釈・適用を誤っており、また、手続的にも瑕疵があり、本件各更正処分等は違法であると評価されることから、直ちに本件更正処分等の全部は取消されるべきであるとするのが請求人の反論、意見です。(反論書についてのコラムは終ります。) 

文責(G.K

 

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