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租税不服申立について(審査請求「意見書」編…その6)

2020/11/15

前回のコラムでは、更正処分に係る理由附記の不備に関する裁判例等について触れましたが、それら裁判例は、単なる訓示規定に止まるものではなく、更正の理由附記の不備があればそれだけで更正処分は取消されるべきであることを確定させたものと考えられます。というのも、更正処分の理由附記が不備である場合に、その追完が認められるのであれば、原処分庁(課税庁)は当初の更正処分では抽象的な理由を附記するに止め、請求人(納税者)が再調査の請求等の不服申立や取消訴訟を提起した後に追完すればよいとの安易な行動、態度をとることが考えられ、また、処分時に完全な理由が示されないことにより、請求人(納税者)に無用な心理的負担等を強いることにもなるからです。

 

ところで、本件更正処分等において、原処分庁は、最高裁昭和56714日判決(原処分庁表示の716日は誤りである。)を参照したとし、「故意又は重大な過失によるものではなく、証拠関係及び訴訟の経過に照らし、訴訟を著しく遅滞させることにはならないと判断される場合」は、追完(追加主張)をしても、更正処分を争う請求人に格別の不利益を与えるものではないから(更正の理由附記の不備の追完は)許されると主張しています。しかしながら、原処分庁が、本件更正処分等に関して答弁書において「事実」であるとして摘示、強弁するものの多くは、伝聞に基づく主観を推測ないし憶測によって誇張、虚偽表示したものであり、これによって、殊更に悪性を誇張しようとする印象操作が強く窺われるものであり、それらはいずれも、請求人及び本件各関係法人が「偽りその他不正の行為」により法人税等及び消費税等を免れたとする直接証拠を明示するものではなく、明らかに請求人に「格別の不利益を与えるもの」若しくは「格別の不利益を与えようとするもの」と言うべきものです。

 

そしてこれを、請求人における本件更正処分等の審査請求、すなわち「本件法人税等更正処分等の取消を求める審査請求」のケースと比較すれば、その比較の対象となる最高裁判決における事案の状況、内容とは全く相違するものです。また、原処分庁は、国税通則法第70条第4項を根拠として、更正の理由を追記(追完)することに違法はないと主張していますが、通則法704項は更正、決定の期間制限についての規定であり、更正の理由の追完を認める趣旨の規定ではありません。原処分庁は規定を誤って解釈し、主張しているものと思われます。したがって、原処分庁のこの点に関する主張は、目先を他に転じさせようとするものに他ならず、請求人としては、全く受け容れることができず、本件処分等は速やかに取消されるべきと思われるところです。

 

次に、国税通則法第74条の112項に定められた、原処分庁の調査終了の際の手続について述べてみたいと思います。原処分庁は、平成XXXXXX日、S税務署庁舎内において、請求人の代理人であるK税理士に、調査結果の内容及び修正申告をした場合に伴う法的効果の説明を行った上で修正申告等についてと題する書面を交付したとしています。しかしながら、これは原処分庁による明白な虚偽主張です。確かに、上記代理人が同年同月同日S税務署に赴いたのは事実ですが、当日、修正申告の依頼(原処分庁は勧奨と表現していますが、実態は依頼が適切な表現です。)は受けましたが、金額(税額)、内容及び経過等についての説明は一切なく、修正申告をするに当たっても、代理人としては、税額、内容及び経過等を把握する必要性があったところから、それらについてS税務署(原処分庁)に質しましたが、別件の刑事裁判が進行中であることを理由に、請求人のそれらに関する質問には一切答えられないとして、法人課税第7部門の統括国税調査官T氏(他にN税務署の統括国税調査官N氏も同席)らは回答を拒否しました。

 

そこで、K税理士は、「本件の調査から告発に至る一連の税務手続に対する質問」と題するS税務署長宛の文書(質問書)を手交し、同日付のS税務署の収受印を受領しています。しかしながら、当該質問書に対しても、その後、一切の回答も得られませんでした。加えて、後日の口頭意見陳述時の原処分庁に対する質問(口頭とは言っても、請求人には事前に質問の趣旨、内容につき、文書での提出が求められています。)においても、原処分庁の担当者らは、「答える義務はない」との文書に書かれている文言を読み上げるのみの、木で鼻を括るが如きの全く誠意の欠片も認められない答弁をしました。このように原処分庁が「嘘」の答弁をなし、証拠捏造及び証拠文書の改竄をしていることに代理人は、税理士としてのみならず、租税法学者としても驚愕し、MK問題に見られるような財務省の体質そのものと些かも変わるところがないところに恐怖にも似た幻滅を覚えました。

 

禁反言の原則(信義則)について触れてみたいと思います。原処分庁が証拠として採用している平成XXXXX日のI税理士の申述において、同税理士は、「平成XX年の初め頃にS税務署の調査を受けた際に、調査担当者から、関係会社の設立目的や実態について確認されたことがあり…(中略)納得してもらったことはありました」と述べています。この点について、原処分庁は認めないばかりか、その意見書において、以下のように、「公式見解ではない」として原処分庁(課税庁)としての責任を放棄しています。すなわち、上記の税務調査における調査官と当時の税務代理人を含む請求人(C氏)とのやり取りについて、「調査担当者が請求人の主張しているとおりの応答をしたとしても、原処分庁が請求人に対し信頼の対象となる公的見解を表示したという評価には当たらない」とする驚愕の主張です。

 

税務官庁の看板と責任を背負った調査官の応答が公的見解としての信頼の対象とならないとすれば、請求人を含む国民は、税務署の言うことや指導には従わなくてもよいことを意味していますが、税務行政を司る官庁が、このような「その場逃れの嘘」を国民についてもよいのでしょうか。また、調査官の発言等が公的見解として信頼の対象とならないことを理由に、請求人を含む国民は、それまでの税務調査に基づく内容、指導等を、信頼に足る相手ではないとして反故にすることができるのでしょうか、それこそ、未だ世情を騒がすMK問題における財務省元理財局長というべきか元国税庁長官というべきか、その人物の答弁を彷彿とさせるものであり、論外の詭弁であると考えられます。因みに、納税者が税務調査において虚偽の答弁をすると、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。法の下の平等なる観点からすれば、税務調査において調査担当者は嘘を言っても構わず、一方、納税者が嘘をつくと罰せられることになり、不平等が生じることになります。

 

すなわち、原処分庁(国)の義務は縮小解釈し、他方で自らの権利(権限)は拡張解釈する考え方そのものであり、原処分庁の主張は、憲法141項の趣旨に反することは自明です。租税正義を標榜する課税当局(国)は、納税者(国民)に対して誠実な態度での対応が望まれるところです。禁反言(信義則)については、さらに、原処分庁は、請求人に対する平成XXX月の約1週間に及ぶ税務調査の最終盤において、当時の請求人の代表取締役であったA氏に、「(今回の調査では)本来は青色申告(の承認)を取消されるんだけども、初犯ではあるし、今回はS税務署長宛に誓約書を書き、1億円を納めてお咎めなしという、これで終わりということです。」と青色申告の承認の取消は行わないとする旨を約し、そのための必要書類を提出させています。しかし、そのおよそ1月後に、唐突に国税局が査察調査を行い、上記税務調査に伴う、いわば原処分庁の「行政指導」を税務官庁自らが破棄し、脱税嫌疑の告発を行っています。

 

原処分庁も自らの意見書述べているように、最高裁は信義則を租税法の領域で適用する場合として、以下の4要件を挙げているところ、本件の場合の請求人においては、いずれもそれらの要件を満足しています。すなわち、①公的見解が表示されたこと、②その表示の信頼に基づいて請求人が行動した結果、③その表示に反する課税処分が行われ、納税者(請求人)は経済的不利益を被ったが、④その信頼に基づく行動に納税者(請求人)の帰責事由はないこと、を要件とするものです(最判昭和621030日集民15293頁参照。)。これに対して、課税庁としての義務を恣意的に縮小解釈して、責任転嫁を図る原処分庁の主張は理解不能であり、この点における原処分庁の主張にも理由がありません。(つづく)

文責(G.K

 

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