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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その3)

2020/12/10

前回、原処分庁が、再調査の請求人からの再調査の請求を受け、更正処分の理由附記が不備であることを理由に原処分を一旦取り消した上で、再更正処分を行ったことにつき、「禁じ手」と表現しましたが、それには以下の理由等が考えられるからです。⑴更正処分の理由附記に不備があっても、それを追完することが許されるのであれば、本件がまさしくそうだったように、原処分庁等は、当初の更正処分では抽象的ないしいい加減な理由を附記しておき、請求人(納税義務者)が再調査の請求等の不服申立や取消訴訟を提起した後に追完すればよいとの安易な態度、行動をとること、⑵処分時に完全な理由が示されないことにより、納税義務者の予測可能性を喪失させ、無用な心理的負担等を強いること等が考えられることから、最高裁も繰り返し、違法判断を示しているところです。

 

ともあれ、再調査請求人には、原処分庁が平成2910月6日付で行った平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度以後取り消した青色申告の承認の取消処分の取消通知書が、また、同年1122日付で行った平成24年4月1日から平成27年3月31日までの事業年度の法人・消費税等の更正処分の取消通知書が令和元年10月7日付で送達され、同年同日付で、上記事業年度以後の青色申告の承認の再取消処分通知書及び上記事業年度の法人・消費税等の再更正並びに加算税の再賦課決定処分等の通知書が送達されました。その後、令和元年1025日付で再調査請求人がした平成291124日付再調査の請求及び平成30年1月18日でした再調査の請求について、いずれも却下とする再調査決定書謄本が送達されました。

 

また、再調査請求人の関係法人3社のうちの1社(K社)が、原処分庁(N税務署)に平成30年2月6日付でした平成24年2月1日から平成26年1月31日までの事業年度に係る法人・消費税等の更正処分等についての再調査の請求は、令和元年1024日付でいずれも却下、同様に、他の1社(H社)が原処分庁(S税務署)に平成30年2月6日付でした平成25年2月1日から平成26年1月31日までの事業年度に係る法人税等の更正処分についての再調査の請求は、令和元年1023日付で棄却及び却下、残りの1社(HS社)が原処分等(S税務署)に平成30220日付でした平成26年2月3日から平成27年1月31日までの事業年度に係る法人・消費税等の更正処分等及び平成291220日付でした平成28年2月1日から平成29年1月31日までの事業年度に係る欠損金の繰戻しによる還付請求に理由がない旨の通知処分についての再調査の請求は、令和元年1023日付で、いずれも棄却及び却下とする再調査決定書(謄本)の送達を受けました。

 

これらの決定を受け、再調査請求人(審査請求後は(審査)請求人)及びその関係法人3社は、原処分庁の「決定」に不服があるとして、令和元年1122日、S国税不服審判所に審査請求書をそれぞれ提出しました。この後の、審判所を介しての原処分庁と請求人との遣り取りの大部分については、これまでにも述べているので、ここでの税務コラムにおいては必要最小限度の重複を除いて、主として、審判所と請求人との関係におけるテーマ「審判所の役割と機能」について述べてみたいと思います。その前に、内容が前後して恐縮ですが、前々回の税務コラムで、書き残したもので重要な事実について若干、触れておきたいと思います。

 

平成291110日に再調査請求人の所轄税務署であるS税務署庁舎内において、同署法人7部門T統括国税調査官及び関係法人のK社の所轄税務署であるN税務署法人8部門N統括国税調査官と、それぞれの法人の税務代理人であるKG税理士との間の修正申告に係る打ち合わせ及び調査結果等の説明に係る当日の面談の詳細については割愛したいと述べました。それは、既にこの税務コラムで、これまでに何度も触れてきたこともありますが、その主たる要因は、代理人としての筆者(KG税理士)の逡巡があります。法治国家の枢要な使命に携わる機関(の職員=国家公務員)が、ここまでも平然と国民を欺き、嘘をつき通し、無辜の国民を陥れなければならないその機構(と職員)に、呆れるとともに、幾ばくかの良心の呵責はあったであろうとの惻隠の情からの躊躇がありました。

 

というのも、仮に当日、原処分庁の幹部職員である統括国税調査官2名が、代理人の筆者に調査結果の説明等の国税当局がなすべき手続等を遺漏なく行っていたとすれば、当日から19日後の平成2911291650分にS国税局調査査察部査察第三部門の主査のST氏が、代理人の筆者に、「これまでの経緯、調査結果等については、説明しないことになりました」との電話をしてきた趣旨が支離滅裂、理解不能となり、前後関係の文脈からも全く不合理です。このことは、すなわち、国税通則法74条の11第2、3項に定められた「調査の終了の際の手続」を行わなかったことを明らかにするもので、国税通則法の規定に違反することから、本件更正処分等は当然無効となることを意味しています。

 

因みに、国税通則法74条の11第2項は、「国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。」とされ、第3項は、「前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。」と規定されていますが、代理人は当該書面の交付も受けてはいません。

 

S審判所においては、令和元年1122日付の請求人及びその関係法人3社からの審査請求を受けて、令和元年1218日、審判所と請求人(代理人)との第1回打合せを行い、その席で、HS副審判官は次のような説明をしています。すなわち、審判所においては、事実に基づき、「税務行政上に係る事項の判断をするのではなく、(事実についての)純法律的な判断をする」との説明です。これを受け請求人は、(審判所を経由する)原処分庁からの答弁書に対する「反論書」、原処分庁の意見書に対する請求人の「意見」、「証拠説明書」、口頭意見陳述に係る「質問」及び審判所から送付された二度にわたる「争点の確認表(以下、「確認表」という。)についての請求人の意見書」等は、一貫して法律的視点からの主張を展開し、審判所に対しても、その視点からの公平・中立な審理を求めてきました。

 

しかし、原処分庁はもとより、本来、執行機関である国税局や税務署から分離・独立した第三者的な立場で、請求人によるそれらの法的側面からの質問等に対応する筈の審判所及び審判官が、それを疑うような行動をとっているように思われます。KT審判官は、令和21141520分頃、S審判所において、これまでに請求人が時間と労力をかけて書き上げ同審判所に提出した、審査請求書、反論書、累度にわたる請求人に対する原処分庁の意見書に対する請求人の意見(書)、証拠説明書、口頭意見陳述の(原処分庁に対する)質問書及び確認表についての請求人の意見についてさえも、読んだかどうかを明らかにしませんでした。

 

また、当日新たに提出した「確認表についての請求人の意見」を反映した審判所からの確認表を(作成せず)、請求人に送付しないことを明らかにしました。加えて、令和2年1116日9時50分頃に代理人であるK税理士に電話をし、予て代理人らが求めていた国税通則法97条1項に基づく質問・検査等の申立てに対し、これを行わないことを明示しました。本件検査等の申立ては、国家権力による重大な刑法犯罪等を構成する虚偽事実の告知及び公文書の偽造、改造の真偽を検証するものであり、徹底した調査が求められるものですが、その割には、当事者に電話するだけで検証可能な簡易な業務です。(つづく)

文責(G.K

 

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