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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その4)

2020/12/15

つまり、国税通則法74条の11第2項の更正決定等をすべきと認めた場合の納税義務者への説明義務に関し、当日面談した当事者である所轄税務署(原処分庁)であるS税務署の統括官T氏及びN税務署の統括官N氏を審判所に召喚し、請求人の代理人K税理士の双方から当日の情況を聞けば原処分庁と請求人(代理人)のどちらの主張が真実であるかは、直ちに判明します。さらに簡易な手段を選択したいのであれば、審判官自らが電話で、直接、両統括官に糺せば直ちに真相が明らかとなります。これ程明解でしかも簡易な手続きを請求人が求めてさえも行わないこと自体、国税局や税務署から分離・独立した第三者的な組織とは名ばかりで、その実態は、国税局や税務署などの意向を受けてその業務を行う執行機関の一部であることを体現しているのではないでしょうか。

 

審判所は、本来、国税局や税務署等から独立した中立的、公正な立場で、原処分庁と請求人との主張を十分に聞いた上で、公正妥当な判断を示すところにその存在意義と役割があるとされます。しかし、実際には、上に見るように、期待されている役割と機能は十分に果たされておらず、逆に、国民を欺く、原処分庁がつく「嘘」を容認、むしろこれを擁護し、代理人の租税法学者としての名誉を棄損したり、また、税務代理人としての業務をも妨害する機能として作用しているやに思われます。原処分庁等は「はじめに結論ありき」の方針に基づき、本件更正処分等に係る調査等を進めてきた結果、最初の「小さな嘘」の上塗りが、やがて法令をも犯す「大きな嘘」で塗り固めざるを得なくなり、抜き差しならない帰結となっているのが現実と思われます。中立、公正な立場を標榜する審判所は、そのことにつき、請求人が証拠を挙げて主張、反証していることからも、それらを十分に知る得る立場にありながら、これに頬被りして、それらの許されざる事実の悪性を矮小化、むしろ原処分庁等の主張、方針に協調ないし同調しているように思われます。

 

審判所から請求人に送付される「争点の確認表の送付について」なる文書があり、その送付案内に表示されている文章に、「審査請求事件を適正かつ速やかに解決するためには、当事者双方の主張を正しく把握し、争点を共通して認識する必要があ」るとして、「争点の確認表は、これまで当事者双方から提出された書面や面談等において主張されたことを基に、①争われている原処分、②争いのない事実、③争点及び④争点に対する当事者双方の主張を簡潔に取りまとめたものとしています。しかし、令和2年6月15日付で送付された当該文書の内容は、到底、請求人が納得できるようなものではありませんでした。このような場合、上記送付案内の文面によれば、「最終的に整理されるものとは内容が異なる場合もあり」、「お気付きの点又は御不明な点があ」れば、連絡するようにと書かれています。

 

しかしながら、それは表面的な外部に向けられたレトリックであり、実際には、前回述べたKT審判官の対応が現状の国税不服審判所の実態を具に物語っていると言えるものです。S審判所担当審判官KT氏は、当事者双方の主張を簡潔に取りまとめたとしながら、その実、必ずしも法的視点から中立的、公正な立場によるものではなく、請求人が手間暇かけて作成、提出した、審査請求書、反論書、累度にわたる請求人に対する原処分庁の意見書に対する請求人の意見(書)、証拠説明書、口頭意見陳述の(原処分庁に対する)質問書及び確認表についての請求人の意見についてさえも読むこともなく放置していた、ないしは斜め読みしていたことが強く窺われ、情緒的観点から叙述するのみの原処分庁等の主張をほぼ丸のみにして、請求人の法的視点からの主張を反映させることなく、敢えて言掛かりのようにみえる表現にしています。

 

これを審判所が示しているように、書面上の審理を中心に調査・審査して判断するのであれば、「言わずもがな」な裁決が示されることは必定であり、当該裁決を目で確認する本件審査請求事件の原処分庁等や国税不服審判所の関係者らは、大いに快哉を叫び、満足するでしょうが、そのような国家公務員としての業務のあり方、仕方に、果たして大多数の職員は誇りを持てるのでしょうか。これこそは、将に国家権力の横暴、濫用のように思われてなりません。審査請求事件に対する審判所の対応については、一旦、措くとして、審査請求書提出後の審判所を通した原処分庁と請求人双方の主張及びそれに対する反論等に戻って、その主たるものについて、以下に触れてみたいと思います。

 

既に述べているように、令和元年1218日のS審判所と請求人(代理人)との第1回打合せがありましたが、これについては、重複を避ける意味からその内容については割愛します。当日は、予て提出していた審査請求書に対する原処分庁からの答弁書の期限が令和2年1月17日、これに対する請求人の反論書の提出期限が令和2年2月12日であることを告げられました。請求人が、当該反論書及びその後の原処分庁等の主張の中で特に反論しているのは、事実をありのまま表現するのであればまだしも、原処分庁等が本件事件の関係者と推定している関係者(質問対象者=申述者)に質問する際、請求人の代表者個人(A氏)の全く虚偽の情報等(かつて、やくざ・暴力団等の反社会的組織に所属していた等の誤った情報)を伝達して、申述者の精神面に圧力をかけ、原処分庁等に有利な情報を得るべく誘導、誤導している法令違反の事実についてです。また、それ以外のすべての申述や事実も、大部分が誇張表示されており、申述者の任意で真実による質問てん末書とは言えない内容となっており、これに基づく誤った事実認定が行われていることです。

 

例えば、自白、タマリ等直接証拠がない中で、本件事件は、当時の関与税理士I氏(税理士事務所職員を含む)の申述(間接証拠)に大きなウェイトが置かれています。I氏は、本件事件の比較的早い段階の平成271125日の国税職員による質問調査において、「社長が『そんな税金払えない』と言ったと述べましたが、いつもの期に比べ、利益及び税金の額が多額であり、その金額を社長に伝えた時の社長の表情から私が感じたことで、社長が言っていたことはないですので、そのように訂正してください」と発言したと質問てん末書には書かれています。思うに、S国税局の職員が、「社長(A氏)が税金を減額するよう指示したでしょう、そうだよね?」とでも誘導し、I氏が一旦はその誘導に同調したものの、良心から訂正を申し入れたものと考えられます。ともあれ、原処分庁等はこの事実を隠蔽し、逆に、請求人(A氏)とI氏との通謀虚偽を主張している有り様です。

 

消費税においては、本件各関係法人は適法に設立された法人であり、当然に新設法人に係る基準期間の納税義務免除制度の適用を受けるべきところ、法的根拠がないにも拘らず、これを適用せず、請求人から本件各関係法人への外注費を否認し、請求人の給与としています。消費税が免税事業者制度を温存し、帳簿方式を採る限り、その判定には基準期間(免税期間)を設けることが必須ですが、これは制度の持つ宿命と言えます。わが国は、政治的妥協から様々な特例を敢えて設けており、当該制度の善意・合法的利用についての問題点は、消費税導入以前から懸念されており、これに対して法的制裁が及ばないのは、「法の欠缺」であり、わが国の消費税制度の持つ欠陥でもあります。この「法の不備」に由来する責任を、他の根拠のない法令を強引に当て嵌め、納税者に転嫁することは、明らかにわが国の憲法の規定に違反することになります。(つづく)

文責(G.K

 

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