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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その8)

2021/01/05

新年あけましておめでとうございます。旧年中は拙稿のご愛読を賜り、誠にありがとうございました。新型コロナの感染者数がなかなか収束に向かう兆しを見せない中ではありますが、本年も引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。早速ですが、筆者が本件更正処分等に係る争訟事案に関わって、まる4年、そして足掛け6年目に突入することになりました。今思うと、この間は、長かったような、あっという間だったような気がして、感慨深いものがあります。またこの間に、思い掛けず租税に関わる3つの側面に携わることになりました。その1つは、刑事面からの、国税局から検察庁への告発を受けた刑事裁判、2つ目は、民事面からの、旧関与税理士の事実誤認に基づく一連の税務申告業務等及び指導の誤りによる請求人が被った損害等の賠償請求事案として、そして3つ目は、行政面からの、本件更正処分等の争訟事案としての再調査の請求を経由した本件審査請求事件です。

 

既に述べているように、1つ目の刑事面である租税裁判は、平成291018日に第1回公判が始まり、翌年1128日に判決公判となりました。その間の当初時点では、帳簿、書類等の証拠類の一切が押さえられている中で、検察庁からの任意開示に依存した限られた資料によって証拠を確認する程度の手探り状態でした。その後、芋づる式に開示請求をして、判決公判の数カ月前には、帳簿、書類等から証拠認定されるに至ったかなりの資料とともに情報も入手できました。民事面については、旧関与税理士が誤りを認めて、比較的早く和解が成立しました。しかし、3つ目の行政面の争訟は、既に幾度となく述べているように、本来、法に照らして判断を導き、法に基づいて処分等が進行することからスムーズに進行する筈ですが、実態は租税行政庁の動きがそうではなかったところに、本件事件の異常さがありました。

 

すなわち、原処分庁等による異常な認定に基づく、異常な形での更正処分、それに係る争訟の第1段階としての、再調査の請求に対する原処分庁の決定までの期間及び認定内容の異常さ、特に原処分庁に再調査の請求をしたのが平成30118日、その回答としての決定通知までに19カ月以上も掛かって当初処分を取り消して、同日付で再更正をして原処分としたこと、全く事実無根の虚偽の主張を強弁し続けていること等です。審査請求においては、S審判所はそれらの原処分庁等の主張を前提とするかの言動、行動、換言すれば、原処分庁のついた「嘘」にお墨付きを与えるかの振る舞いを見せるなど、その対応の異常さは、どの段階、どの部分を取りあげても異常としか評価しようのないものばかりでした。また、審判所のパンフレットによれば、裁決までに要する標準的な期間は、1年と公表していますが、本件事件は既に標準的な期間を徒過しています。

 

ともあれ、請求人は、S審判所からの第1回目の「争点の確認表」(以下、「確認表」という。)に対する反論としての意見書を前回のコラムに述べているような内容で令和2年6月24日付で同審判所に提出しました。その後も審判所を経由して原処分庁からは、それまでの自らの主張をなぞるような主張を繰り返し提出してきましたが、請求人としては、「徒に審理を長引かせる」ことを理由にそれらの全てに反論することはしませんでした。一方、S審判所からは、令和2年1026日、第1回目と同様の送付案内文が添えられた第2回目の確認表が送られてきました。早速、第1回目の確認表と第2回目の確認表とを突合、比較したところ、第2回目の確認表の争いのない事実に原処分庁等の調査担当者が平成291110日、請求人の代理人であるK税理士に「修正申告について」と題する文書を交付した、とする表記が削除されていました。

 

これについては、K税理士が署名押印したとする原処分庁による虚偽主張とそれを証拠立てる書面であるとして原処分庁がその捏造した文書の写しを交付したことをめぐって反論し、争っていたにも拘らず、S審判所は、第1回目の確認表中の「争いのない事実」に「原処分庁等の調査担当者が平成291110日、請求人の代理人であるK税理士に『修正申告について』と題する文書を交付した」とする表記をしていたものです。したがって、原処分庁と請求人間にあまりにも明らかな争いがあるにも拘らず、S審判所が争いのない事実としていたもので、S審判所が、如何に原処分庁側に与したいとしても、これは当然に争いのある事実と判断すべきと考えられます。

 

上記以外の第2回目の確認表の内容においても、第1回目の確認表と大きく変わるところがなく、請求人のある種の期待を裏切るものでした。と言うのも、第1回目の確認表に対する請求人(代理人)の反論、指摘を受け、S審判所は、本来の存在理由(役割)である「納税者の正当な権利利益の救済を図る」方向に考え方をシフトさせているであろうと淡い期待をしていたからですが、それは見事に裏切られました。実際には、それとは程遠く、全体的には依然として第2回目の確認表においても第1回目の確認表を踏襲するもので原処分庁等の嘘を補強するかのような表記が大半であるとの印象を持ちました。当然、第2回目の確認表に対する反論、主張及び指摘としての「争点の確認表についての請求人の意見書」を令和2年11月4日付でS審判所宛てに提出しています。その概要は、この意見書に先立つ意見書の内容と重複する箇所が少なくありませんが、請求人としては、おそらく当該意見書が最後のS審判所に提出する意見書になると思われたので、重要と考えられるものについては、重複を恐れず、割愛することなく述べることにします。

 

本争点の確認表についての請求人の意見書では、原処分庁の「事実」と主張するものの不合理性、請求人の事実の捉え方及び考え方、S審判所に対する要望等を以下のように述べています。すなわち、請求人は、一貫して法律的観点からの公平・中立な審理を求めていますが、原処分庁の主張は、依然として不合理な「事実」、違法証拠収集手段による「事実」又は誘導、誤導に基づく「事実」、伝聞、憶測に基づく「事実」等、その殆どが法令違反の疑いが濃厚な「虚偽事実」等に基づくものであり、その実態はそれらの虚偽「事実」の羅列に過ぎません。S審判所は、確認表の送付書の記載どおりに、原処分庁と請求人との間に立つ公正な第三者的機関として審査請求の審理に当たっては、双方の主張を十分に聞いた上で、公正妥当な結論を得るよう努めるべきです。また、S審判所は、原処分庁の慣習的、情緒的主張を前提とすることなく、あくまでも論理的に法的観点から確認表に原処分庁、請求人双方の主張の概要を掲載すべきです。

 

以下、請求人の考え方、意見等を具体的に示したいと思います。第2回目に送達を受けた、確認表中の「争いのない事実」には、本件当初青色取消処分及び本件当初更正処分等に係る通知書の記載が不十分であったとして、との記載がありますが、これまでの請求人の主張を踏まえ、当該文言の後に、再調査の請求に対する処理に先立ってと付け加えて頂きたい。請求人は審査請求の理由書において「原処分庁は課税更正当初処分における理由附記の不備に気づき、それを治癒させるべく取消処分を行ったものであることは明白(中略)、請求人が行った再調査請求は、再調査の請求理由があり、原処分庁は、国税通則法83条3項に基づき、『当該再調査の請求に係る処分の全部若しくは一部を取り消さなければならない』」と主張していますが、原処分庁は、法的手続き面の是非には一切反論していません。

 

次に争点についてですが、請求人は、租税法律主義のもと、原処分に係る適用法令が明確となることを強く望むものであり、確認表中の「争点」に、新たな争点として「実質的な費用収益等の帰属主体の判定を法人税法11条又は22条をもって行うことができるのか。」を追加することを求めています。また、確認表中の「争点」には、「本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用に係る業務及び取引は、請求人が行ったものであるか否か。」と記載されていますが、請求人がこれまでにも主張しているとおり、法的観点からの審理をして頂くべく、「本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用に係る業務及び取引を、請求人が行ったものであるとして原処分庁がなした行為計算等の否認は、違法か否か。また、本件各関係法人の納税義務が免除される課税期間に係る基準期間の取引分を、当該取引の発注元法人に『消費税法第30条第7項所定の帳簿及び請求書等の保存がなかったことを理由としてなした処分』は違法か否か。」に変更、訂正するよう求めています。同様に、確認表中の「争点」に「請求人に国税通則法68条1項に規定する『隠蔽し、又は仮装し』に該当する事実があったか否か」を、また、「請求人に国税通則法68条1項に規定する『隠蔽し、又は仮装し』に該当する事実があったとして原処分庁がなした本件処分は違法か否か」に変更、訂正することを、更に、確認表中の「争点」に「本件各更正処分等は、信義則に反する違法な処分であるか否か」を、「先に行われた税務調査での調査官の指導(発言)を、後の税務調査で税務署を代表するものではないと覆してなした処分は、禁反言の原則(信義則)に反する違法な処分か否か」に変更、訂正するよう求めています。(つづく)

文責(G.K

 

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