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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その10)

2021/01/14

先ず、当コラムの前回までの表記で、確認表とすべきところを確認書としてしまい、表記を誤っていましたこと、心よりお詫びし、訂正させて頂きたいと思います、誠に申し訳ありませんでした。さて、前回の⑷争点4の続きですが、審判所は、確認表の争点の対照表中の原処分庁欄に、下請先のH社長の申述として、断定的な表現で、「請求人の関係法人から仕事を受注したことがないにも拘わらず、請求人の当時社長であったA氏に指示されて請求書の宛名を当該関係法人とした」旨の表記をしています。そして、請求人欄には、同人の申述の概要として、「査察担当官に『思い付きです』と回答したにも拘らず、A氏からの指示に基づくものとされた」旨の記載がなされています。

 

これを、審判所は実際に調査をすることなく、机上の確認表の上記対照表のみで判断するとすればどのような結論を出すのでしょうか?仮にそうだとしたら、明らかに請求人の主張は、「単なる言い訳」にしか思えないのではないでしょうか。そこで、請求人欄に審判所が概略表記した当該部分を削除し、新たに、「H社長は、査察調査の際、S国税局査察調査担当者の、請求人による脱税を前提とした強引な誘導があり、累が自らにも及ぶ可能性をも示唆されたことなどから当該調査担当者の言うままの申述内容になってしまったこと、及び元請の了解を得て請求人に仲介を依頼したが、請求人の扱い業種が違うことから、最終的に当該関係法人の口座を通すことになった旨を明らかにしており、原処分庁の主張は意図的な虚偽事実の主張、虚偽記載である。H社長の会社の監査役との連名の令和2年6月24日付のS審判所担当審判官宛『申立書』において述べているように、同社監査役も本件査察調査の一部に同席していた。」を追加し、訂正することを求めました。

 

また、確認表における消費税に関する請求人の主張に、「わが国の消費税が、免税事業者制度を温存する帳簿方式を採る限り、その判定には基準期間(免税期間)を設けることが必須となるが、それは制度の持つ宿命である。わが国は、政治的妥協から様々な特例を敢えて設けており、当該制度の善意・合法的利用についての問題点は、消費税導入以前から懸念されており、これに対して法的制裁が及ばないのは、『法の欠缺』であり、わが国の消費税制度の持つ欠陥でもある。この『法の不備』に由来する責任を、他の根拠のない法令を強引に当て嵌め、納税者に転嫁することは、明らかにわが国の憲法の規定に違反する」を追加し、訂正するよう求めています。この点は審査請求書、反論書他累度にわたる意見書においても言及しているところです。 

  

⑸争点5(請求人に国税通則法(以下「通則法」という。)第68条第1項に規定する『隠蔽し、又は仮装し』に該当する事実があったとして原処分庁がなした本件処分は違法か否か。)については、確認表の争点の対照表中の原処分庁欄に審判所は、「A氏及びC氏夫妻(元請求人の社長と専務)は、本件各関係法人に事業実体はなく、本件各外注取引は存在しない架空の取引であることを認識していたにも拘らず、辻褄を合わせるために請求人宛の請求書を作成した」としています。他方で、同対照表中の請求人欄には、「A氏、C氏夫妻は、請求人と本件各関係法人との取引について、適法と認識しており、真実でないものを真実らしく装った事実はない。」としていますが、これを「A氏、C氏夫妻は、請求人と本件各関係法人との取引について、前回調査の際の担当者の指導を信頼し、適法と認識しているのであり、真実でないものを真実らしく装った事実はない。」と概略表記を訂正するよう求めています。

 

また、同対照表中の請求人欄の、「A氏、C氏夫妻は、『期ズレ』は許されると誤認したI税理士に利益の平準化を勧められ、応じたものであって脱税行為であるとの認識はない。」との審判所がなした概略記載を「『期ズレ』は許されると誤認したI税理士の処理によるものであり、A氏、C氏夫妻は脱税行為であるとの認識はない。」と表記を訂正することを求めています。同じく、対照表中の審判所による概略表記については、「原処分庁が認定したA氏、C氏夫妻が、利益を減らすようにI税理士に伝え、『利益が少なくなるように決算書を作成してもらった』という事実は存在せず、また、I税理士の『社長が言っていたことではないです』との訂正申入れを行った事実を敢えて隠蔽して、誤った認定をしており、原処分庁が公権力を濫用し、故意に悪性を創出し、無実の罪で納税者を陥れようとする不実記載である。」と概略表記を訂正するよう求めています。この点については、9月16日付意見書においても述べているところです。

 

また、請求人欄の本件架空給与についての審判所による概要表記を、「そもそも本件架空給与なる用語、文言は、質問てん末書等を作成したS国税局職員が言い出したものであり、質問調査対象者が自ら発言したものではないとの請求人の主張に対し、原処分庁は、これまで適切、適正な時期に、何らの主張、反論をしていない。また、その本質は、旧関与税理士主導の誤った経理処理から、法人の交際費の性格を持つ金員とA氏、C氏夫妻の個人的出捐による貸付金とが混然一体となったものが、外観上、隠ぺい又は仮装と原処分庁に判断されたものである。これについては、逋脱の意図や故意がないのはもとより、税理士の事実誤認による指示誤りによる処理ミスであり、重加算税の対象となるものではない。ともあれ、所轄税務署(原処分庁)による税務調査時の指導に従って、既にA氏、C氏夫妻の個人的金員及び請求人(法人)に対する貸付金を相殺する方法で合計3,100万円を関係法人の口座に返還し、同額を関係法人の総勘定元帳の給与手当勘定から減額していたもので、原処分庁の主張は、国家の税務行政を司る機関による、請求人を陥れようとする悪意に満ちた虚偽事実及び不実記載である。」に差し替えるよう求めています。

 

⑹争点6(請求人に、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったか否か。また、当初青色申告取消処分を取り消し、処分理由を差し替えて本件青色取消処分をしたことは、違法か否か。)については、確認表の請求人欄の「次のとおり、請求人には『隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し』について」、を削除するとともに、項だてをなくし、「本件青色取消処分は、理由の差し替えを目的とした処分であることは明らかであり、法の趣旨を無視した違法な処分である。」の後に、「また、青色申告との関連での理由附記の不備を認めないとする裁判例としては、『他の論点について判断を加えるまでもなく、原判決は破棄を免れず、そして、本件更正を違法として取り消』すとする判決がある(最判昭和381227日民集17121871頁)。」を追加するよう求めています。なお、処分理由の差替えが認められないことについては、審査請求の理由書及び7月27日付意見書等で近時の判例等を示しつつ、繰り返し主張しています。

 

⑺争点7(先に行われた税務調査での調査官の指導(発言)を、後の税務調査で税務署を代表するものではないと覆してした処分は、禁反言の原則(信義則)に反する違法な処分か否か。)については、確認表の請求人欄の「税務調査時の調査官の発言等は、公式見解の表示ではない旨の原処分庁の主張は、論外の詭弁である。」の後に「原処分庁は、税務調査時の調査官の発言等は公式見解の表示ではない旨の発言をするが(中略)、単に当該税務調査における調査官の発言の公式性を否定するのみならず、通則法74条の2に根拠規定を置く質問検査権の行使に基づく税務調査を課税行政庁自ら自己否定し、法令を無視することになる。」、また、「原処分庁は、『平成25年2月調査において(中略)、本件各関係法人との取引内容を検討し、本件各関係法人の事業実体をつまびらかにしたと確認できない。』としているが、保存されている調査資料からみて『確認できないとするのであれば、調査資料に是認事項は一般に記載・記録されないことを念頭に置き、I税理士及びC氏の申述に、当時の調査担当者が関係法人を時系列に記載した資料を持参し、調査・質問した結果、その取引を否認しなかったこと、関係法人との取引を否認されていない修正申告書を是認している(その後に更正処分を行っていない)ことといった是認したと認めるに十分な間接証拠の存在を認め、適正な判断を行うべきである。」、及び「原処分庁は、請求人に対する平成279月の約1週間に及ぶ税務調査の最終盤において、当時の請求人の社長であったA氏に、『(今回の調査では)本来は青色申告(の承認)を取消されるんだけども、初犯であるし、今回は税務署長宛てに誓約書を書き、1億円を納めてお咎めなしという、これで終わりということです。』と青色申告の承認の取消しは行わないとする旨を約し、そのための必要書類を提出させている。しかし、そのおよそ1ヶ月後に、唐突にS国税局による査察調査があり、上記税務調査に伴う、いわば原処分庁の『行政指導』を税務官庁自らが破棄し、脱税嫌疑の告発を行っている。」を追加するよう求めており、これらについては、7月27日付意見書で述べているものです。(つづく)

文責(G.K

 

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