Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その12)

租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その12)

2021/01/27

すなわち、「これまでに納税者たる請求人は、『審査請求書』、『反論書』、累度にわたる『原処分庁の請求人に対する意見書に対する請求人の意見』、『証拠説明書』及び二度にわたる『争点の確認表(以下、「確認表」という。)についての請求人の意見書』等に至るまで一貫して法律的観点からの公平・中立な審理を求めてきた。これは、令和元年1218日の第1回打合せ時にS国税不服審判所(以下、「S審判所」という。)においてのHS副審判官の説明、すなわちS審判所においては、事実に基づき、『税務行政上に係る事項の判断をするのではなく、(事実についての)純法律的な判断をする』との発言があったことから、請求人は、これまで原処分庁の主張に対してその視点からの説明を求め、質問をし、自らも法的視点から回答し、主張してきたところである。」

 

「しかし、原処分庁はもとより、本来、執行機関である国税局や税務署から分離・独立した第三者的な立場で請求人によるそれらの法的側面からの質問等に対応する筈の審判官が、裁決を前にして、それを疑うような態度をとっている。すなわち、KT審判官は、令和2年11月4日1520分頃、審判所において、これまでに請求人が時間と労力をかけて書き上げた、上記の審査請求書、反論書、累度にわたる原処分庁の請求人に対する意見書に対する請求人の意見書、証拠説明書及び確認表についての請求人の意見についてさえも、読んだかどうかを明らかにすることもなく、また、新たに提出した『確認表についての請求人の意見』を反映した審判所からの確認表は送らないことを明らかにした。」

 

「剰え、令和2年1116日9時50分頃には代理人であるK税理士に電話連絡を取り、予ての代理人らの国税通則法第97条第1項に基づく検査等の申立てに対し、これを行わないことを明示したのである。本件検査等の申立ては、国家権力による重大な刑法犯罪等を構成する虚偽事実の告知及び公文書の偽造、改造の存否を検証するものであり、徹底した調査が求められるなどの情況がある。因みに、国税通則法第97条第1項は、『担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。』と規定しており、行政救済法の『国民(市民)の権利が、違法か適法かを問わず租税を課すなどの侵害的行政行為によって侵害された場合、その権利を救済する』とする趣旨であることから、この申立てを入り口で拒絶することは、その趣旨を没却することになる。」

 

「その他、令和2年11月4日付で審判所に提出した『争点の確認表についての請求人の意見書』中の請求人の意見は、すべて国税通則法に基づくものであるところ、KT審判官はそのことが全く念頭にないのである。請求人は、一貫して法律的観点からの公平・中立な審理を求めてきているところであるが、これは、原処分庁の主張が、違法証拠収集手段によるもの又は誘導、誤導に基づくもの、伝聞による憶測に基づくもの等々、その殆どが法令違反の疑いの濃厚な『虚偽事実』等の羅列に基づくものであり、それらについては、これまでに請求人が逐一証拠に基づいて反論、糾弾、主張してきた事実(不合理)等であるからである。KT審判官は、確認表の送付書にも記載されているとおり、原処分庁と請求人との間に立つ『公正な第三者的機関』であり、審査請求の審理に当たっては、『双方の主張を十分に聞いた上で、公正妥当な結論』を得るよう努めるとしているが、実態は全く違う対応をしており、代理人らは愕然としているものである。」

 

「上記の送付書の趣旨のとおり、本来、KT審判官は、原処分庁の慣習的、情緒的主張を前提とすることなく、あくまでも論理的に法的観点から、確認表に原処分庁、請求人双方の主張の概要を掲載すべきである。仮に今次送付のKT審判官(審判所)作成の確認表を合議体構成員が事実確認することなく、書面上のみで判断することになれば、誰の目で見ても、請求人が単なる言い逃れをしているかのように判断されるであろう。『国税不服審判所の50年 第6章国税不服審判所の審査手続等』によれば、『合議体の構成員に対する審査請求人からの忌避の申立ては許されない。』と表示されているところ、通則法には忌避申立に関する直接の規定は置かれておらず、行政救済法の趣旨からは『できる』と解釈すべきと考えられるべきであろう。そうすると、KT審判官の本件審査請求事件における考え方、態度は、国税通則法その他の法令の趣旨を没却し、また、それらの趣旨からは著しく逸脱するものであり、ここに同審判官の忌避を申立てするものである。」とする請求人の概ね上記を内容とする申立てをしました。

 

請求人からS審判所に本件審査請求以降、累度にわたる提出書面において毎回のように主張してきた、原処分庁等による不法資料収集及び証拠捏造等の不正行為を、黙認し、あるいはそれらを裏打ちするかの言動をしてきたKT審判官に、審判所の「公正な第三者的機関」としての役割を担うことができるのでしょうか。聊か古い話で恐縮ですが、昭和45年法律第八号による国税通則法の一部改正が行なわれた際に、衆議院及び参議院の大蔵委員会は、国税不服審判所の職員の質問検査権の行使につき、それが納税者の権利救済の趣旨に反しないよう十分配慮すべきとする旨の決議をしています。この決議の趣旨を審判所職員の「質問・検査等を一方的に禁止、若しくは抑制」するものと捉えるのではなく、「疑うに足りる十分な理由」が存在するのであれば、むしろ積極的に行うべきと捉え、納税者の権利救済に努めることこそが、国民が期待する「国税不服審判所の役割と機能」ではないでしょうか。

 

令和2年1117日付で請求人(代理人)がなした、上記の本件審判官忌避の申立てに対する回答として、令和2年12月9日に、S審判所首席国税審判官から「担当審判官を忌避する申立ては、法律上認められていません。」とする内容の書面が届きました。ある程度は想定していたとは言え、聊か、簡単過ぎる回答で呆気に取られましたが、請求人(代理人)の最大の関心事は、本件審判官忌避の申立ての名宛人を国税不服審判所長としており、S審判所の長たる首席審判官宛ではありません。これはこれまでのS審判所の対応が、国税不服審判所の支部においてのみの方針、判断であるのか、それとも本部も含めて国税不服審判所の方針、判断は公表されているものと全く相違のあるものかを確認する意味合いがあったからでした。

 

因みに、S審判所の首席国税審判官からの、「担当審判官を忌避する申立ては、法律上認められていません。」とする回答は、正しくは、「法律上」ではなく、「『法律の解釈上』認められていません。」とすべきと思われます。わが国の現行の法体系上は、裁判のように、司法権の作用として行われるものではなく、本件は、あくまでも行政権の作用としての裁決機関で行われるものであるところから、除斥及び忌避等の規定を一概に準用若しくは類推適用することは、確かに無理があるかもしれません。そうだとしても、準司法手続きとしての審判所における審理は、これに当たる者の職務執行の厳正さ、公正さ及び中立性が要求されることはもちろんのこと、予断は徹底して排除されなければなりません。

 

少なくともS審判所における本件審査請求事件の審理の実態は、国税庁、税務署等の執行機関から独立した「第三者的機関」と言うよりは、「原処分庁の出先機関」に近い役割と機能を果たし、確実な証拠が存在し、明らかに虚偽であることを認識しつつも、それに関わった職員と自らの組織を守ることに汲々としているさまが見受けられます。令和2年12月9日には、S審判所の担当審判官であるKT氏から審理手続を終結した旨の通知が請求人宛に届き、爾後の、通則法95条1項以下の行為等ができないことになりました。このままS審判所においてなされる本件事件の議決、それを受けての裁決が予定されていますが、その基礎となる原処分庁の事実認定には、明らかに公正さを疑わせる資料収集手続上の違法がある他、主張する事実には明白な「嘘」が含まれています。

 

重複して恐縮ですが、原処分庁等の主張には、無辜の民を陥れようとする質の悪い嘘が存在していることを疑うに足りる十分な理由があるにも拘らず、それを明らかにする努力をしようとしないS審判所及びKT担当審判官による本件審査請求事件の審理、及びその結果となるべき議決、裁決も、自ずとその公正さが疑われるものと想定されるところです。このような納税者の権利救済のための法制度改革の見地から、立法機関による今後の国税不服審判所に関する規定の改革、就中担当審判官に対する請求人等からの忌避の申立てを可能とする法制度の改正、立法化が望まれるところです。(つづく)

 文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ