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国税不服審判所の役割とその存在意義 その3

2021/04/25

したがって、2「争点」に関して、裁決書に謂う争点1は、予てより「争点の確認表についての請求人の意見書」で申し入れていたように、本来、本件審査請求事件の最大の争点となるべきものであり、あくまでも理由附記の不備に係る可否判断についてとすべきものです。そして、裁決書に謂う争点2は、「本件各更正処分の理由付記に不備があるか否か」(の問題)ではなく、不備があったからこそ、原処分庁は自ら当初処分を取り消し、理由を追完したのであり、根本的に札幌国税不服審判所の争点の設定自体にも問題があります。また、同法令解釈について同審判所は、「通則法は、第7章の2≪国税の調査≫において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される」と、恣意的、一方的な解釈(言い逃れ)をしています。

 

先ず、平成26年の国税通則法の改正が、「申告納税制度の一層の充実・発展に資する観点及び課税庁の納税者に対する説明責任を強化する観点から行われたこと」、また、それが、「法定化された調査手続を遵守するとともに、調査はその公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることを十分認識」することを目的として行われており、原処分庁は、その趣旨を汲み取っているようには思えません。国税通則法に第7章の2≪国税の調査≫がわざわざ設けられ、平成267月からこれが施行されたことからすれば、従来の国税通則法24条等に加え第7章の2の規定、就中、国税通則法74条の112項に明示的に規定する「調査結果の内容の説明」をしなかった場合、課税処分の効力は無効になると考えるべきものです。

 

なお、具体的な説明内容については、調査結果の内容の説明をする時点において得られている情報に基づいて合理的に算定した課税標準等、税額等、加算税又は過怠税の額をいうものとされており、単に税務調査による非違の発見によって生じる課税標準等の変更に止まらず、理由をも説明することが法規定によって明示的に規定されています。この説明は修正申告への勧奨や更正決定等における前提となるべきものであり、この説明が充足されているか否かという点は、事前通知と並んで質問検査の行使において重要な手続であり、その充足等を判断するにあたって、この説明の意義は大きいと言えます。また、課税処分の基礎となる証拠収集手続に重大な違法がある本件法人税額等の更正処分等のような場合も、課税処分の取消事由になると考えられます。

 

そして、租税法(典)には、租税公平主義のみならず、租税法律主義が憲法30条及び84条に置かれており、これらが貫徹されていることを前提に、その上に成り立つ租税公平主義と考えられることから、原処分庁が自らにとって都合のいいときだけ租税公平主義を持ち出し、これのみを主張することは許されません。加えて、裁決書に謂う「課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合」としており、これは将に、これまでに当税務コラムで述べてきた本件更正処分等を行うに際しての原処分庁の調査が、そのまま当てはまります。すなわち、初めに結論ありきの調査、誘導・誤導に基づく調査対象者への申述の強要、調査対象者に虚偽の情報を与えて原処分庁側に都合のよい資料を引出して入手、その他証拠資料の捏造ないし偽造等々です。

 

ロ「認定事実」()「本件査察担当官は、本件質問調査対象者が質問てん末書の申述内容に誤りがないことを確認した上で署名・捺印又は指印した。また、質問てん末書の中には、その末尾において訂正等が行われたもの及び後日、訂正等が行われたものが存在する」としていますが、これは、査察担当官らが如何に強引に誘導・誤導し、調査対象者に虚偽の情報を与えてまで原処分庁側に都合のよい資料を入手、事実以外の申述を強要したかの一端を示しています。すなわち、本件質問調査対象者らは、その場の雰囲気に吞まれ、自らの記憶ないし思いとは違う方向を指し示す本件査察担当官の意思に、一旦は同意しつつも、熟考・熟慮の結果、その場で又は後日訂正したものと思われます。事実、筆者が本件質問調査対象者に再度、個別に面談して聞き取りした結果、全員から同旨の答えが得られています。

 

()においては、これまでの原処分庁の主張よりは若干、トーンダウンしているようですが、それでも、原処分庁内部資料の「調査経過記録書」なるものに、①10時に税務代理人(筆者)が来署したこと、②「調査結果の説明書」に基づき口頭で説明したこと、③修正申告を勧奨した上で、修正申告に伴う法的効果を説明し、本件交付書面を交付したこと、④税務代理人から現段階では修正申告に応じることはできず、更正するのであれば、そのまま進めてほしい旨の申出があったこと、⑤税務代理人が持参した「本件質問書面」を受領するとともに、本件質問書面の控えに収受印を押印した上で税務代理人へ手交したこと、及び⑥本件質問書面の収受はするが回答の有無を含め、この場で説明できることは、課税処理に関するもののみである旨説明し、了承を得た、としています。

 

同じく、原処分庁内部の資料である、「本件調査に関する調査手続きチェックシート」の①「調査結果の内容説明等」及び「実施場所」欄には1110日に署内で調査結果の内容説明をしたこと、②「説明等の相手方」欄には税務代理人に対してしたこと、③「法定手続として行うことの明示」欄には明示をしたこと、④「修正申告等に伴う法的効果の説明」欄には説明をしたこと、⑤「修正申告の勧奨」欄には勧奨をしたこと、⑥「法的効果を記載した書面の交付」欄には交付をしたこと、及び⑦「課税処理の状況等」欄には、更正を要する旨の各チェックがある、とし、なお、本件交付書面の控えの氏名欄には、税務代理人(筆者)の署名押印がある、としています。

 

これまでに、違う機会も含めて、幾度となく述べてきたように、税務代理人(筆者)は、原処分庁から調査結果の内容説明を受けたことはなく、法定手続を明示されたこともなく、それらは、明らかな原処分庁の嘘で、「本件交付書面」なる書面は、悪質な原処分庁による、いわゆる「捏造文書」です。何故なら、後に札幌国税不服審判所に対し「写し交付申出書」を提出し、当該書面(修正申告について)を確認したところ、日付欄の記入が筆者ではないことが判明しました。また、原処分庁が、税務代理人に調査結果の説明をしたとする当日の19日後の1650分に、札幌国税局調査査察部査察第3部門主査佐々木司氏より、本件に係る「税務調査の調査結果やこれまでの経緯等についての説明はしないことになりました。」との電話連絡を税務代理人は受けています。

 

原処分庁が説明をしたとする当時は、別件の刑事裁判がヤマ場を迎えて(判決期日は平成291128日)、これを意識した当局が徹底した情報管理(情報隠し)を図っており、その一環として、本来、不利益処分(更正処分)に先立って行うべき、税務調査結果の説明及び査察調査結果の説明をもスルーしたものと思われ、明らかに原処分庁の主張には、虚偽や矛盾があります。また、上記刑事裁判の終結後間もなくの、更正処分取消請求事件の再調査請求の段階で、原処分庁がいわゆる架空給与の支払額として認定した約3,500万円について、その認定根拠及び算出根拠等について、本件更正処分等に関する他の税務代理人が情報公開法を利用して原処分庁に対して開示請求をしましたが、却下されており、その隠ぺい体質は、同根と考えています。もとより、逋脱行為は許されるものではありませんが、重要な事実に嘘ないし虚偽があり、認定事実の信頼性に疑問の生ずる公権力の行使もまた、許されるものではありません。(つづく)

文責(G.K

 

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