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国税不服審判所の役割とその存在意義 その7

2021/06/06

次に() 認定事実について触れてみたいと思います。札幌国税不服審判所は、「本件各更正処分の理由付記についてみると、以下の事項について具体的に記載されている。」とし、A 本件法人税各更正処分の(A)として、「本件各関係法人は、法人としての事業の実体を有していないと原処分庁が認定した理由」、(B)として、「本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用等に係る業務及び取引は、請求人が行ったものであるとして原処分庁が認定した各加算減算項目、金額、日付及び理由並びに根拠法令」、(C)として、「原処分庁が認定した本件各事業年度の売上金額、日付、内容及び当該認定に伴い発生した売上計上漏れの金額、計算過程並びに根拠法令」、(D)として、「平成273月期における給与手当の過大計上額、日付、内容、計算過程及び根拠法令」、(E)として、「通則法第70条第4項の適用理由」を列記しています。

 

しかし、同審判所がその裁決書で述べているように、A(A)から(E)までに列記した事項について具体的に記載されているものは全くなく、同審判所は何を見てそのように認定(判断)したのでしょうか。多分、何も見ることなく、また、何も検討、考慮することもなく形式的に判断したのではないかと考えられるところから、以下に事実と照合し、反論したいと思います。(A)に挙げられている本件各関係法人の「法人としての事業の実体」について言うのであれば、請求人が審判所を経由して原処分庁に証拠を示しているように、それぞれに、れっきとした事業実体を有しています。すなわち、証拠で示すとおり登記され、税務申告が行われ、それに基づき実際に納税もされ、従業員を雇用し、社会保険料負担の実態があります。

 

原処分庁は、「事業の実体」と「法人の実体」を混同した主張を展開するのみで、何一つ具体的な直接証拠を挙げて請求人が示した事柄等(事実)に対する反論をすることなく、事業の実体性についての主張かと思いきや、法人の実体を否定する主張をしたりと、恣意的、曖昧な反論、回答を繰り返しています。仮に、法人の実体を否定し、法人に実体がないと主張するのであれば、「法人」は元々、法律によって擬制された組織体であることから、原処分庁の主張には背理があることになります。いずれにしても、本件更正処分等において、実体論と租税法違反とが直接的な結び付きを有するものではなく、同審判所が述べるような、具体的に請求人が納得するような挙証をし、その理由を推知できる理由付記とは、到底、評価できるものではありません。

 

(B)として裁決書に述べられている事項は、実態とはまるで相違し、上記に札幌国税不服審判所が認定した原処分庁が挙げる間接証拠では、本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用等に係る業務及び取引を請求人が行った取引として直接に結び付けることはできず、しかも加算減算項目たるや曖昧、杜撰そのもので算出額に信頼性がありません。すなわち、ある取引とその取引に係る費用・収益を計算したとする金額とが結び付かず、その多くは、調査対象者に虚偽の情報を与えて心理的圧力をかけ、虚偽性の高い、ないし虚偽の申述を引出したものです。また、(半強制的な誘導・誤導によって引き出した)調査対象者の申述を基に計算したとしながら、実際には、不確かな伝票類を集計した曖昧な合計額を証拠としたもの、また、あるときは総勘定元帳の誤った記帳に依拠したり、そしてある時は経理担当者の備忘録に依拠し、当該資料等と請求書との差額を認定金額としたりしており、後に、金額、日付を遡って検証することが不可能です。

 

その理由は、当時の関与税理士が変則的期中現金主義を採用しており、原処分庁はそれまでに行われていた税務調査において、これを黙認しており、当然の帰結として、原処分庁からの理由並びに根拠法令等についての言及がないものが多く、あったとしても不正確、曖昧なのがその実態であり、どうしてそれらが不利益処分である更正処分における(その理由を推知できる)具体的な理由付記と判断できる、と札幌国税不服審判所は言えるのでしょうか。本件各関係法人については、いずれも、適法に設立され、独立した実体を有して事業を継続していましたが、原処分庁は、誤った事実の基礎となる事柄を調査対象者(関係者)から強引に引き出し、そうした申述等を事実認定し、本件各関係法人には事業実体がないとして、根拠のない法令を当て嵌め、請求人の会社の計算に引き直して加算しています。

 

これにより本件各関係法人の事業に係る殆ど全ての項目(法人税に関しては、売上、経費、仕入、その他の費用等)、関係法人の消費税に関しては、新設法人の納税義務の免除特例を否認して、課税標準、控除対象仕入税額等の殆ど全ての項目を、請求人に付け替えました。また、その際、本件各関係法人の消費税については、請求人の名義で帳簿及び請求書が作成されていないとして(仮に作成されていれば、二重帳簿である)不可能を押し付け仕入税額控除も否認しています。このうち、法人税について、請求人は審査請求書において、原処分庁がこれを否認し、請求人に付け替えを行ったその根拠規定を法人税法222項としていることについて、札幌国税不服審判所を経由して原処分庁に疑問がある旨を主張しました。

 

これに対し原処分庁は、答弁書において、法人税法222とし、更正通知書にはなかった「等」の一文字を密かに忍ばせ、その内容を法人税法11条及び消費税法131項であると主張しました。請求人は当該答弁書に対して更なる反論をすると、原処分庁は「…法人税法11条及び消費税法13条の観点から検討はしているものの、これらの規定に基づき判断したものではなく、総合的に勘案した上で…、222項に基づき、7つの基準に照らして判断した」と主張を変遷させました。しかしながら、法人税法22条は「法人の所得金額は、益金の額から損金の額を控除した金額」とし、その2項は、「法人の所得金額の計算上、益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る収益の額とする」とする、いわゆる計算規定です。

 

しかも、それら7つの基準は、「一般に認められた基準」ではなく、このケースで、原処分庁が課税をするために「勝手に定めた7つの基準」を持ち出して、それらを222項に照らして判断したとしています。222項は計算規定であり、これに否認規定の役割を担わせ、独立した2法人間の取引の一方を否認し、他の法人の計算として引き直してよいとまでは、当該条文の文言からは読み取ることはできず、またその権限が原処分庁に与えられていると読み取ることは不可能です。このように、原処分庁の主張には一貫性がなく、常に変遷しており、本件更正処分等に係る根拠法令に関する説明も曖昧、不明確であり、課税要件明確主義の観点からも本件更正処分等自体の真実性、信頼性には大いに疑問があります。

 

(C)の「原処分庁が認定した本件各事業年度の売上金額、日付、内容及び当該認定に伴い発生した売上計上漏れの金額、計算過程並びに根拠法令」についても、上記(B)と同様、

原処分庁の認定は、恣意的、曖昧、杜撰そのものであり、例えば、平成253月期の外注費1,000万円が請求書がないことを理由に架空外注費として否認していますが、これは同年同月同日付で同額の売上が計上されており、請求書しか見ず、元帳を見なかったことから、元帳の同年同月同日の売上10,000,000円を単純に見落としており、損益は0となるべきものです。これは正常な仕訳とは言えませんが、当時の関与税理士は、以下のように仕訳していました。25/3/31(借方)外注費10,000,000 / (貸方)売上10,000,000 したがって、更正通知書における、平成253月期の消費税の計算上は、外注費を1,000万円減少させるとともに、売上も1,000万円減少されなければならないことになります。(つづく)

文責(G.K

 

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