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来年度予算(案)と税収見込み 雑感

2015/12/29
来年度予算案が、過日、閣議決定され、一般会計の総額が96兆7218億円と過去最大となりました。歳出面で気になるところとして、まず「社会保障費」が高齢化の進展を要因とし、今年度より4412億円増の31兆9738億円となっていて、財政健全化のため社会保障費の伸びを5000億円程度に抑えるという政府の方針に沿う形となってはいますが、今後、益々の増大が気になるところです。次いで、国債の償還や利払いに充当する「国債費」が、これまでに発行した国債の残高が増えていることもあり、今年度より1614億円増の23兆6121億円となっています。また、「地方交付税」は今年度より2547億円減の15兆2811億円となり、これはリーマンショック後の、地方の税収不足を補うため上乗せしてきた「別枠加算」を廃止したこと等によるものといえます。

 

防災・減災対策やインフラの老朽化対策などとされる「公共事業費」は、前年度比ほぼ横ばいの5兆9737億円になっていますが、「防衛費」は、中国の海洋進出に備えた装備品の購入や周辺海空域の警戒監視能力等を強化し、沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古沖への移転工事を本格化させること、安保法の成立等で膨らみ、5兆541億円と初めて5兆円を超えています。このほか、「ODA」は5519億円で17年ぶりの増加が見られます。

 

このような来年度予算案が閣議決定された結果、「社会保障費」、「国債費」、「地方交付税」の3つの経費を合わせた額は、歳出全体に占める割合が73.3%となり、当初予算として7年連続で70%を超え、他の政策への予算配分が制約されざるを得なくなる「財政の硬直化」が続くことになっています。

 

一方、歳入面では、「税収」が引き続き好調な企業業績を受けて、今年度より3兆円余り増えて57兆6040億円となり、平成3年度以来の高い水準が見込まれています。また、新たな国の借金としての国債の新規発行額は、今年度より2兆4310億円減の34兆4320億円に抑えられ、これにより歳入全体に占める国債の割合は、今年度より3ポイント近く低下した35.6%になりましたが、それでも、歳入の3分の1以上を国債に依存する赤字体質からの脱却は依然として難しく、厳しい財政状況が続くことになっています。なお、この来年度予算案は、政府によって、年明けの通常国会に提出されることになっています。

 

因みに、政府の「国債発行計画」によれば、来年度の国債の発行総額は、今年度当初より7兆8212億円少ない162兆2028億円となり、2年連続で前年度を下回ることにはなりますが、国債の発行残高は、今年度末の812兆円程度が来年度末には838兆円程度に膨らむ見通しです。これは、来年度に見込まれる税収の約15年分に相当し、国債だけで国民1人当たり約664万円の借金を抱えている計算となっています。

 

このような状況下で、政府は、歳入不足を穴埋めするため、その発行には特別な法律が必要な「赤字国債」を来年度から5年間にわたって発行できるようにするための法案を、来年度予算案と合わせて年明けの通常国会に提出する方針であると報道されています。一方で、高成長を続けてきた中国経済の景気減速が鮮明になり、他方で、米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利政策を解除し、また、原油価格の下落に拍車がかかり、世界経済は安定感を欠いているように思われます。世界経済の不安定要素が日本経済にまで波及することになれば、税収の伸びは期待できないどころか、政府が目論む「経済成長と財政健全化の両立」は根底から覆ることになりますが、それは筆者の杞憂でしょうか。 

文責 (G・K)

 

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