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国税不服審判所の役割とその存在意義 その14

2021/08/15

前回に触れた「申立書」は以下を内容とするものです。すなわち、「私ことHは、平成281212日の札幌国税局職員からの質問に対し、回答したことのうち、事実に反することをなぜ申述したのかについて申し述べます。当日、私はS関係法人から仕事を請けたことがない旨を回答しましたが、①当時は、1年にも及ぶ査察調査を受けた直後であり、再度嫌な思いをすることを避けたかったこと、②札幌国税局職員が、請求人の脱税を前提としているような質問に終始していたこともあり、累が再度当社に及ぶ懸念から、当該国税局職員が言うままの内容に、同意してしまったこと、及び③ゼネコンの了解を得て請求人に仲介を依頼しつつも、扱い業種の違い等の理由により、最終的にS関係法人の口座を通すことになったこと。以上が事実であることを、当社監査役であるSとともに確認し、私の誤った申述等により札幌国税局査察部及び札幌南税務署並びに請求人に多大なる迷惑をお掛けしたことを反省し、今般、審査請求審理中であることを聞き、この機会に、謝罪のために本書で真実の申述内容に訂正させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。」とする申立書です。このように、原処分庁及び審判所の事実認定の基礎となる事実には、その要素に多くに誤り(高圧的態度での誘導、誤導)があります。

 

続いて裁決書16()本件各関係法人の業務内容のBについて述べたいと思いますが、ここにおける表記も事実を捻じ曲げ、ないしは誇張するもので事実となるべき要素に誤りがあります。原処分庁及び審判所は、「工場業務及び現場業務に本件各関係法人の代表取締役等の役員が関与することはなく、請求人及び本件各関係法人3社の従業員の業務による違いもなかった」としていますが、請求人であれ、関係法人であれ、それらの法人役員が直接現場業務に携わることは稀であり、一般的企業においてもそれは同様であり、それが本件各関係法人に特有な事情であり、そのことが事業実体の有無を左右するものではありません。また、受注工事の内容によっては、請求人にも本隊と呼ばれる本社直属の組織が組成されることがあり、その場合は、本隊と関係法人との従業員(労働者)の業務内容には大差がないことも当然と言えます。更には、本隊は請求人の本社直属であることから、業務遂行上、関係法人とは異なる組織編成を採っていることから、原処分庁及び審判所は、法人の実態を考慮することなく事務的に事実認定を行っており、認定の基礎となるべき「事実」の要素を誤って認識しています。

 

Cについては、K関係法人の代表取締役であったOS氏と請求人の代表取締役であったA氏の長女であるSS氏は婚姻関係にあったが、離婚することになり、それに伴ってK関係法人の業務内容も変化せざるを得なくなり、終には工場業務のみになったものであり、そのような事情からK関係法人は解散を余儀なくされ、急遽、H関係法人が設立されています。しかし、当該関係法人の代表取締役のSM氏の都合から1年で退社したため、同社は解散のやむなきに至り、その後、O氏を代表取締役とするS関係法人が設立され、現在に至っています。これらについても、本件各関係法人の事業実体の有無を左右する要素となるものではありません。

 

また、Dにおいて、「S関係法人の設立1期目に在籍していた従業員が57名に対して2期目には18人になっている」とし、請求人の都合で移籍させたかのような記載は、原処分庁の印象操作であり、審判所はそれを検討することもなく、そのまま認定しています。S関係法人と請求人の取引は正常なものであり、況して同法人は現在も存続中であり、原処分庁及び審判所から何らの咎めを受ける理由はありません。それを、はじめに「結論ありき」の方針の下、関係法人を一括りにして、S関係法人の正常な取引の全てを否認し、根拠法すら明示することなく、請求人の行為・計算としています。ともあれ、平成27年の税務調査時の(行政)指導を受けて、従業員の殆どを請求人の所属とするように異動させたため、平成27年、1期目の1月期には57人であったものが、2期目の平成281月期には18人に減少させざるを得なかったものです。繰り返しになりますが、法人自身の都合によるような表記がなされていますが、法人の都合ではなく、あくまでも、原処分庁の強い行政指導を受けて措置したものです。

 

次に、裁決書17()本件各関係法人の人事管理の状況について述べたいと思います。Aとして、「本件各関係法人の所属とされる従業員の管理は、以下のとおり、請求人が行っていた」とし、(A)から(H)までを列挙しています。そこで、以下にそれぞれについて反論したいと思います。(A)の「作業日報の作成、報告」は一次下請としては当然把握すべきことで、人工(にんく)の欠員によって完成時期が遅れないよう管理することもまた、一次下請としては当然のことと言えます。(B)の二次下請である本件各関係法人の「従業員の勤務時間及び休暇の管理」も上記と同様の理由です。また、S関係法人の「給与計算をC氏、SS氏が行っていた」のは、前回にも述べたような理由によるものです。(C)A氏が「品質管理」等の指示を「重要事項及び連絡」として管理職従業員及び職長に行い、当該指示等が「従業員の所属を問わず行われていた」ことも、一次下請の総責任者として二次下請の管理、掌握は当然の業務の範疇と言えます。

 

(D)記載の、後にS関係法人の代表取締役に就任したO氏が「社長・専務(宛)」と題した書面で、K関係法人所属の従業員の職務手当の支給や昇給について質問したのは、O氏が甥(A氏)の経営する鉄筋工事業(請求人)に転職して間もないことから、甥夫妻に質問をしたものであり、何らの不合理もありません。(E)記載の「健康診断表」の管理及び(F)の「社会保険加入の有無」による従業員の所属、(G)の「従業員の所属の認識」及び(H)の「社会保険料」控除に伴う所属の違いに係る記述も、特に、本件各関係法人の事業実体の有無を左右する要素となるものではありません。蓋し、請求人は一次下請事業者として、受注業務の積算、安全管理、工事進捗状況の管理、人工の管理等、健康管理等、幅広く受注業務の管理面を担当することから、当然の役割を果たしているからです。

 

Bとして記載されている、O氏の業務の評価については、S関係法人の代表取締役としての役割と同時に工場長としての役割があり、OSSM氏を例に挙げるまでもなく、裁決書における記載は、穿った、「結論が先に存在した」見方と言えます。また、Cとして記載されているS関係法人に関する記述は、偶々、確認できなかっただけのことであり、他の各関係法人のそれらは、散逸して完全な状態での保存ではないものの、存在しているところから、その存在は十分予測できます。

 

次に、裁決書18()の本件各関係法人の対外的関係等について述べたいと思います。 Aとして、「A氏又は請求人の管理職従業員は、売上先に対し本件各関係法人の所属とされる従業員を請求人の従業員と伝え現場業務に従事させていた」また、「本件各関係法人ではなく請求人のヘルメットを使用していた」と記載し、まるで違法行為をしているかのような表示をしています。既に述べているように、請求人は一次下請業者であり、しかも本隊と呼ばれる直属の組織も存在していたことから、その現場で仕事に従事する中に本隊に所属する従業員がいれば、当然、請求人の従業員と伝えるでしょうし、請求人の名称の入ったヘルメットを着用することになり、そのことに何らの問題はありません。原処分庁及び審判所は、「初めに始めに結論ありき」の下、それを違法行為の如く取りあげて、悪質性の印象操作に利用しているに過ぎません。

 

裁決書19頁にBとして記載されている、A氏が対内的に、「本件各関係法人を除いた外注先を本件協力業者」と呼んでいたのは誤りではありませんが、既に述べてきているように、「本隊」の概念定義については明らかな誤りです。また、Cとして記載されている、「下請負業者編成表」、「建設業法・雇用改善法等に基づく届出書」等の売上先への提出書類については、これまで累度に渡り述べているように、受注業務の関係で、請求人直属の組織、すなわち本隊のみでの業務遂行時には当然ながら、「下請負業者編成表」には、本件各関係法人については記載しないことになります。また、「余人を以て代えがたい」スキルを備えた人材に限っては、「経営判断の原則」から当然に請求人と関係法人との双方のその資源が利用されており、二重在籍者がいたのも当然です。

 

Dとして裁決書謄本に記載されている「請求人と本件協力業者との取引であるにも拘らずS関係法人宛の請求書を発行するよう本件協力業者に対して依頼していた事実」はありません。また、Eについては、下請けの形態、規模(1現場の1区分金額500万以下)によっては、建設業許可が不要です。繰り返しになりますが、これらの事実等が本件各関係法人の事業実体の有無を直接左右する要素とはなり得ません。(つづく)

文責(G.K

 

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