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国税不服審判所の役割とその存在意義 その21

2021/10/25

処分庁は確かに札幌南税務署ですが、本件更正処分を実質的に主導しているのは、あくまで札幌国税局の調査査察部であり、札幌南税務署は事情も分からなければ、調査関係の資料を閲覧することすらできない状況にあるように感じました。実のところ、請求人の代理人(筆者)も、本件事案の当初から関与していたわけではなく、その経緯についても関係者の一部の聞き取りを通して知り得た範囲内の情報及び別件の刑事裁判を通して得た情報しか持ち合わせておらず、当方から更正の請求をすることになれば、先ず、そのための資料を改めて収集することから始めなければなりませんでした。ともあれ、札幌南税務署のMT審理担当官に時間的猶予をお願いして札幌国税局から請求人に返還されていた資料を探しましたが、既に散逸していたため、別件の刑事裁判で検察庁が押収した資料を開示請求して入手した資料を探し出し、その資料に基づいて更正の請求書を作成しました。

 

請求人が、当該更正の請求書を作成提出するまでには、若干の時間が掛かり、その間に札幌南税務署のMT審理担当官と打ち合わせを何度かすることになりました。その打ち合わせの中で、同審理担当官は、「更正の請求よりも、これ(販促費の性格を有する貸付金)については、そちらから自主的にS関係法人に返還されていますので、その分の約3,500万円を自己否認して残高を0にしたらどうですか」と処分庁の審理担当官は、国税当局の責任を回避し、納税者にその責任を転嫁するかのような信じられない提案、発言をしました。臭いものに蓋をする税務行政庁のやり方に義憤し、請求人は、意地で当時の資料を漁り、後日改めて原処分庁のMT審理担当官を訪れ、「処分をしたのはそちらなので、それに対する納税者側からの自己否認はしない」旨を伝えました。

 

更正の請求は令和35月に札幌南税務署に提出していますが、既に触れているように、請求人の代理人は、本件更正事案の当初から関与していたわけではなく、その経緯について詳細を知る立場ではありませんでした。このことから、原処分庁から「更正の請求」を指示されたことを機に、改めて原処分庁が更正処分をするに当たって作成していた資料等を念入りに見ていくと、給与手当の過大計上の疑い以外にも、処分庁による単純なミスや意図的と思われる誤った処理が随所に見られ、それらの一部についても、「更正の請求」に盛り込むことにして、以下の更正の請求に係る書類を原処分庁に提出しました。

 

更正の請求をする理由として、請求人は、「平成253月期から273月期までについての法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書につき再調査の請求を経由して、審判所に審査請求をしていたところ、当該審査請求について令和3310日付で裁決があり、当該裁決書の謄本は同月13日に送達された。このうち、1.平成253月期の法人税額等の更正通知書における加算項目1(9)平成25331日に外注費の過大計上額として当事業年度の所得金額に加算された10,000,000円は、総勘定元帳の「外注費」の貸方に同日、同額が売上として計上されており、これについては、法解釈を伴うまでもなく、課税当局の単なる見落としによる誤処理であり、所得金額に加算すべきものではない。(資料1参照。)」

 

「その仕訳を示すと以下のとおりとなり、結果として、損益は0となる(この処理を行っていた当時の関与税理士であるI税理士の質問応答書が存在する)。(資料2参照。)

 3/31 (借方)外注費10,000,000/(貸方)売上10,000,000(なお、一般的にはこのような仕訳は行わない。)したがって、平成253月期の所得金額は10,000,000円減少することになり、課税売上高が減少すれば法人税等及び消費税等並びに加算税等の付帯税も減少することからそれらに対応する税額は還付されなければならない。」

 

「2.また、平成263月期の法人税額等の更正通知書における加算項目1(9)平成251125日付のM社に対する外注費113,400円は二重計上しているとして、その額を当事業年度の所得金額に加算している。しかしながら、当方で請求書、総勘定元帳を調査、確認したところ、真の意味の113,400円の二重計上の事実は確認されなかった。(資料3参照。)加えて、当時の関与税理士のI氏は、請求人の会計処理に変則的な期中現金主義(基本的に売上のみを発生主義としていた)を採用し、期中での処理をしたり、しなかったりしつつ、支払日及び期末には相殺という形で残高を消滅させ、ないしは貸方残と同額を(機械的に)借方に立て、洗い替えをしていたことから、仮に、二重計上され、支払日に相殺されていたり、残高が計上されたまま期末まで残っていたとしても損益に影響はなく(会計上の本質的な問題はあるにせよ)、これを、二重計上として所得の金額に加算すると、その分、帳尻が合わなくなるのである。したがって、加算された113,400円に対応する法人税等及び消費税等並びに加算税の額は還付されなければならない。」

 

「3.次に、平成273月期の所得金額には、平成283月期への繰り延べ分53,051,006円(3月売掛金不足分49,465,263円及びk社分3,585,741円、同2円)が含まれている。(資料4参照。)したがって、平成283月期の所得金額は53,051,006円を減額すると同時に、これに対応する法人税等及び消費税等並びに重加算税等の額は還付されなければならない。」

 

「4.更に、平成273月期の更正通知書の加算項目1外注費の過大計上額として認定された4,131,327円は、曩の2.で述べたように、当方で請求書、総勘定元帳を調査、確認したところ、真の意味の413,136,141円の二重計上の事実は確認されず、I税理士が当時採用していた変則的期中現金主義による会計方式のためと思料される。」

 

「5.加えて、同更正通知書の加算項目5給与手当の過大計上額として認定された35,536,282円は、平成2711月札幌国税局査察第3部門総括主査YS氏及び主査AK氏らの調査及びその後の指導に従って、処理済みのものが当事業年度の所得金額に加算されている(後に審判所が35,435,232円と認定している。)。その内訳は、平成265231,600,000円、同年6251,589,670円(審判所認定額1,488,620円)、同年7251,523,830円、同年8251,500,000円、同年9251,500,000円、同年10241,500,000円、同年11254,038,899円、同年12253,000,000円、平成271233,000,000円、同年2258,817,070円、同年3253,000,000円及び同年331日に計上した4,466,813円であり、合計35,536,282円(審判所認定額35,435,232円)である。(資料5参照。)」

 

「これについては、札幌国税局職員のYS氏及びAK氏と当時の請求人及びその関係法人の関与税理士であったI氏との打ち合わせ、調整(資料6参照。)がなされた結果、それに基づいて示された指示に従って、A氏に対する認定給与として、同人の金員を平成271214800万円、同月16800万円、同月18400万円、同月24200万円、平成28113500万円及び同月20400万円、合計3,100万円をS関係法人の口座に返還し(資料7参照。)、平成281月期で総勘定元帳の給与手当勘定を3,100万円減額し(資料8参照。)、残額については、A氏のS関係法人に対する貸付金を減額する形で決着が図られていた。」

 

「その後、平成291122日付で原処分庁によるS関係法人の平成271月期及び平成281月期の法人税額等及び消費税額等の更正処分が行われ、これにより、当該期の収益及び費用等(35,435,232円については、全額交際費)の帰属はすべて請求人とされ、札幌国税不服審判所もこれを認定している(資料9参照。)。令和3317日、請求人の税務代理人は、本件各更正処分等に係る更正の請求に関する事前相談に札幌南税務署を訪れたが、応対した同署の審理担当官のMT氏は、原処分庁サイドとして、かような相談を受けたことやそのような指導をした記録はなく、自主的に返還されていますので「35,435,232円全額の自己否認をしてはどうか」との指導、発言をした。」

 

「しかし、その発言は既視感のある、税務行政庁の責任を放棄、その責任を納税者に転嫁し、「更正の請求」の制度趣旨を没却することを意味することに他ならない。請求人の平成273月期の給与手当の過大計上分とされ、A氏に対する認定給与として返還を求められた35,435,232円については、請求人の平成283月期の所得金額114,730,802円から減算されると同時に、これに対応する当該決算期の法人税等及び消費税等並びに重加算税等は還付されるべきものである。なお、上記1.2.3.4.及び5.の事案については、いずれも国税通則法2321号が適用されることは言うまでもない。」とする内容の「更正の請求をする理由」を挙げています。(つづく)

文責(G.K

 

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