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国税不服審判所の役割とその存在意義 その22

2021/11/05

本来のテーマからは少しズレますが、審判所の認定事実と原処分庁の判断(認定)との関係から前回の「更正の請求」の続きをもう少し述べてみたいと思います。請求人は、前回のコラムに挙げた理由により、令和357日に原処分庁である札幌南税務署に更正の請求書を提出していたところ、令和31019日付で、請求人からの更正の請求に基づく処分としての法人税額等の更正通知書が送達されました。その内容は、予て更正の請求をしていたうちの、平成283月期への繰り延べ分53,051,006円(平成283月期の法人税額等12,679,200円、地方法人税額等557,900円、消費税及び地方消費税額等3,929,600円)を認めて、それぞれを減少させ、本税部分の還付合計額17,166,700円とし、その他の下記Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ及びⅣの一部については、更正をすべき理由があるとは認められないとするものでした。

 

Ⅰ 処分庁である札幌南税務署は、上記のうちの平成253月期分の法人税に係る更正の請求につき、その概要を「請求人は、次の1ないし4を更正の請求をする理由としています。1令和3310日付で裁決があったこと。2平成253月期の法人税額等の更正通知書の加算項目に『外注費の過大計上額』10,000,000円が当事業年度の所得金額に加算されていること。3当該外注費は、総勘定元帳の『外注費』の貸方に同日、同額が売上として計上されており、課税当局の単なる見落としによる誤処理であること。4国税通則法第23条第2項第1号が適用されること。」

 

Ⅱ また、同平成263月期分の法人税に係る更正の請求につき、その概要を「請求人は、次の1ないし4を更正の請求をする理由としています。1令和3310日付で裁決があったこと。2平成263月期の法人税額等の更正通知書の加算項目に『E社に対する外注費』113,400円は二重計上であるとして当事業年度の所得金額に加算されていること。3当該外注費について、請求人が調査、確認したところ、その事実は確認されなかったこと。4国税通則法第23条第2項第1号が適用されること。」

 

 同平成273月期分の法人税に係る更正の請求については、その概要を「請求人は、次の1ないし4を更正の請求をする理由としています。1令和3310日付で裁決があったこと。2平成273月期の法人税額等の更正通知書の加算項目に『外注費の過大計上額』4,131,327円が当事業年度の所得金額に加算されていること。3当該外注費について、請求人が調査、確認したところ二重計上の事実は確認されなかったこと。4国税通則法第23条第2項第1号が適用されること。」とそれぞれしています。

 

そして、上記に続き、ないしに共通して、処分庁は、「しかしながら、請求人が更正の請求書に記載していた上記1ないし4の理由は、国税通則法第23条第2項第1号に定める『その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき』に該当しません。また、国税通則法第23条第1項に定める更正の請求を行うことができる期限(法定申告期限から5年)を経過していることから、請求人からの更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」としています。

 

 次に処分庁は、平成283月期分の法人税に係る更正の請求につき、以下の3項目を挙げ、調査の結果、本件更正の請求の一部については、下記のとおり更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められないとしています。1項目目の平成283月期への「繰り延べ分」の還付については、既に認容されていることからここでは省略します。2項目目の平成273月期の「売上計上漏れ」について、処分庁は、その概要を「14,968,141円については、売上明細書の各金額(消費税込)及び平成283月期の請求人の総勘定元帳の科目『812売上』に記載されているものと一致するものはありません。なお、14,968,141円が、平成283月期の所得金額から減算されなければならないことが確認できる資料について、令和3630日、同年75日、及び同月9日の3回にわたり、提出を求めましたが、令和31019日現在、提出がありません。したがって、14,968,141円については、本件更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」

 

続いて、3項目目の平成273月期の「給与手当の過大計上額」について、処分庁は、その概要を「35,536,282円(審判所認定額35,435,232円)を平成283月期の所得金額から減算しなければならない合理的な理由は認められず、また、平成273月期の法人税に係る更正の請求については、国税通則法第23条第1項に定める更正の請求を行うことができる期限(法定申告期限から5年)を経過しており、同条第2項にも該当しません。したがって、35,435,232円については、法人税更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」としています。

 

しかしながら、上記の法人税額等に係る更正の請求については、処分庁(札幌南税務署)の令和1107日付の法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定処分の取消通知及び同日付の法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知を受けて、令和11122日付で札幌国税不服審判所に審査請求の手続きをし、その裁決書が令和3310日付で発出され、同月13日付で請求人に送達されています。この間、原処分庁の賦課決定処分については、その通知書末尾の「不服申立て等について」なる文面に、裁決については、裁決書末尾の「取消訴訟の提起についてのお知らせ」なる文面に従って、切れ間なく、国民(納税者)に保障されている権利を行使しており、また、処分庁は法令解釈を誤っており、国税通則法第23条第1項括弧書き(第2号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、10年)に定める更正の請求を行うことができる期限を経過していることはありません。

 

加えて、審判所が認めた本件更正の請求の一部については、正に「裏金」、「架空給与」と認定した35,435,232円と原処分庁が集計ミスをして認定していた35,536,282円との差額部分です。しかも、貸付金として実際に手渡した額と処分庁が推計、算出した額との間には大きな開差がありながらも、A氏は、札幌国税局調査査察部第3部門の総括主査YM氏、同主査AK氏らによる行政指導に従って、請求人からのみなし給与等の受給分として速やかにS関係法人宛てに返還し、決着していました(証拠提出済)。しかしながら、処分庁は、存在する筈のない同金員を請求人による「架空給与」の支給であると虚偽の認定をして更正処分を行い、青色取消事由とし、重加算税の対象にもしました。これは、確信的に、誤った更正処分を行い強制的な徴収を行ったものです。したがって、平成283月期の「所得金額から減算しなければならない合理的な理由は認められ」ないとする札幌南税務署の主張は単なる言い逃れに過ぎないことになります。

 

因みに、国税通則法第23条第2項第1号の規定の趣旨は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を来し、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を図ろうとするものと解されます。本件を国税通則法第23条の各項各号に照らすと、通則法第23条第1項の規定により、「第2号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、10年以内に限り、税務署長に対し、当該更正後の課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる。」となります。そうすると、第23条第1項第1号により、「当該計算に誤りがあり、当該更正後の税額が過大であるとき」に該当することから、同条第2号の「前号に規定する理由により、当該更正後の純損失等の金額が過少であるとき」に該当します。したがって、札幌南税務署の令和31019日付の「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知書」は、法令解釈を誤っており、更正をすべき理由があることになります。

 

札幌南税務署を含む租税行政庁は、更正処分を行うに当たっては、納税者にその根拠を示す、いわゆる挙証責任を負いますが、本件更正の請求に係る打ち合わせにおいても、曩にも述べたような租税行政庁内部の業務統制方式を理由に挙げて、明確な証拠は一切提示することなく、逆に納税者側に証拠の提示を求めました。上記更正をすべき理由がない旨の通知書においても、明確な証拠を示すことなく、通則法第23条第1項及び同条2項第1号の適用はないとしています。しかしながら、本件更正の請求には、上記に見る処分庁の主張もさることながら、上記通則法第23条第1項及び同項第1号の規定が適用できることになります。このように、納税者(国民)が一見して理解可能な規定を策定することなく、納税者に対しては当該法規遵守の厳格性を求め、その一方で租税行政庁は、自らの判断については不都合な事実に目を瞑り、反対証拠を封殺し、その根拠(証拠)のない正当性のみを強調しており、審判所は、その裁決において、それをそのまま認定事実としていたことが分かります。(つづく)

文責(G.K

 

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