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国税不服審判所の役割とその存在意義 その28

2022/01/04

本論からは少し離れていましたが、再度戻って、次に、裁決書29頁ロの「認定事実」の()について検討してみたいと思います。既に触れているように、平成2525日の税務調査において原処分庁の調査官らがC氏に回答した内容、及び同調査に基づく修正申告の内容に関しての事実等を平成27917日の税務調査の際には同処分庁(札幌南税務署)は「前回の調査記録はない」と全面否定しています。これに対し、C氏は、前回調査時の同処分庁の対応及び回答内容等を検討した記録を処分庁内部で再確認して欲しい旨を臨場した調査官のO氏に申し出ていますが、同調査官は「前回の記録は存在しません」と重ねて鰾膠(にべ)もない回答をしています。前回税務調査時には、原処分庁は関係法人の存在ないしその適法性について是認していたと思われるにも拘らず、札幌国税局査察第3部門に調査が移行後は、何らの直接証拠を示すことなく強引かつ一方的に「本件関係法人には事業実体がない」と当初の札幌南税務署とは正反対の判断に変更され、この作出された虚偽事実が独り歩きし、それを審判所は、そのまま認定事実としています。

 

よって、その後の原処分庁の対応には、至る所に齟齬が見られ、従前の所轄税務署レベルの判断、回答及び指導と異なる矛盾した回答や主張が目立ちます。上記前回調査について言えば、請求人が審査請求を通じて原処分庁に質していた事項の回答が曖昧で適正性の判断が不利に展開しそうな趨勢となるや、原処分庁はそれまで「前回の調査記録はない」とし、その存在さえも否定してきていたにも拘らず、突然に「前回調査経過記録書」なる、(一方的で恣意的かつ全くの真実性、信用性を欠く)書類が存在していたとして、これを提示し、審判所もその内容を盲目的に支持し、裁決書にその旨を記載しているのです。租税行政庁にとって、あまりに都合が良過ぎて捏造が強く疑われるところです。そうではないとしても、当該前回調査経過記録書は、原処分庁側の主張を一方的に自らに有利に作用させようとする意図で作出されたものであり、恣意的であるのはもとより、その内容は、真実性、信用性を全く欠く、胡散臭さだけの後味がするものとなっています。

 

その「『平成2525日』欄には、①前回調査担当職員が請求人の事務所に臨場したこと、②事業概況、③会計ソフトの利用状況及び会計事務所の関与度合い、④消費税の経理方式、⑤売上に関する検討状況、及び⑥雑収入に関する検討状況が、『平成2526日』欄には、①売上に関する検討状況及び②売上原価に関する検討状況が、『平成2527日』欄には、①人件費に関する検討状況、②経費に関する検討状況、③消費税の可否判定に関する検討状況、及び④源泉所得税に関する検討状況が、『平成25212日』欄には、石狩工場における調査状況が、『平成25219日』欄には、1300I税理士が原処分庁を訪れ、依頼していた書類の提示を受けたことが、『平成25226日』欄には、①前回調査担当職員が請求人の事務所に臨場したこと、②交際費課税を免れるために福利厚生費に仮装したこと及びその事実に基づき申述録取書を作成したこと、及び③売上高繰延等の非違事項があることの各記載があった。」と裁決書には記載されています。

 

しかし、当該調査経過記録書が存在したこと自体、それまで原処分庁が請求人に説明、主張してきた内容とは全く異なっており、驚きを禁じ得ませんが、その提示された内容の真実性、信用性に関しては更に驚きを隠せず、原処分庁、審判所を含めた租税行政庁の回答、主張に、既視感のある書類の捏造を想起させられ、愕然とするばかりです。平成2525日から平成25226日の期間において摘示されている内容が具体的かつ広範囲に渡って記録されている反面、調査対象者がどのように応答したかはもとより、請求人と関係法人との取引について、とりわけ消費税の観点からは、原処分庁の最大の関心事であった筈であり、現に前回調査担当職員のS及びU両調査官は、C氏にそのことについて質問しています。その部分の記録として、当時のS調査官及びU調査官らとC氏とがそのことをめぐって核心に迫る遣り取りをした様子がC氏のメモには詳細に記録されているところ、どういうわけか上記調査経過記録書には、それらがすっぽり欠落しているのです。

 

また、当該調査経過記録書の平成2527日欄には、①人件費に関する検討状況、②経費に関する検討状況、③消費税の可否判定に関する検討状況、及び④源泉所得税に関する検討状況、とされており、原処分庁内で検討されていた旨の記載があるところ、実際には、税務調査当時において取り立てて問題となっていませんでした。それにも拘らず、原処分庁は、「消費税については原処分庁内で検討していなかった(だから、請求人と関係法人との取引の適法性、実体性を認めたものではない)と全く不自然で、不合理で、信用性を欠く主張、記載をしています。この原処分庁の不合理な虚偽の言い分をそのまま何らの吟味、検討もすることなく審判所が認定事実としていますが、これは明らかな虚偽事実の認定であり、国民(納税者)の国税不服審判所に対する信用、信頼性を裏切り、失墜させるもので、極めて遺憾に思われるところです。

 

加えて、原処分庁が「会計ソフトの利用状況及び会計事務所の関与度合い」を検討していたのであれば、I税理士が採る変則的期中現金主義の会計方式の経理処理、税務処理の特徴及びその危険性については、当然に把握できた筈です。そうだとすれば、漫然と事態をやり過ごすのではなく、その時点で、I税理士の営む会計事務所に対し法人税法、会社法及び企業会計原則の規定に則った会計処理方式、いわゆる「公正処理基準」を採用するよう促す行政指導をするべきです。また、「消費税の経理方式」、「売上に関する検討」をしたのであれば、後に、どうして取引先からの入金額から離れて、請求人が税込経理をしていることを理由に、元請事業者からの実際の入金額に対応する消費税額分が売上計上漏れだと認定し、請求人の所得に加算する更正を強行したのか、それらに対する疑問は尽きません。

 

裁決書29()の記載「前回調査に関する準備調査書の『問題点及び調査展開等』欄及び『統括官等指示事項』欄等には、請求人と関係法人との取引に関する記載はなかった。」としています。しかし、そのことが当時の原処分庁内部で、請求人と関係法人との取引の適法性、実体性を認めていなかったとの証明にはなり得ません。その時点では取り立てて問題にならなかった、すなわち是認していた、若しくは、「だって、この会社がなかったら困るんでしょう、だったら、続けるしかないでしょ」と指導した調査官の言質を、敢えて不都合な事実として、記載しなかったことを疑うに十分な間接証拠と評価されるからです。むしろ、上記の前回調査に関する調査経過記録書に係る原処分庁の調査担当職員の対応(回答)から、関係法人の存在を是認していたと認めるに十分な合理性があると言えます。要するに、原処分庁の主張は、客観性が全く担保されていない(租税行政庁にとって不都合な事実等は徹底的に捨象する)ものであり、言わば自己弁護的主張のみを展開するものであり、真実性、信頼性を極めて欠くからです。

 

同じく裁決書29()については、「本件前回調査経過記録書と前回調査に係る調査手続きチェックシートを突合したところ各記載内容は一致していた。」としています。しかし、これまでにも繰り返し述べているように、本件事案に係る審判所を含めた租税行政庁の回答、主張及びそれらを記載した書面、書類等には、恣意的なものばかりか虚偽、ないしは明らかな嘘が多く含まれており、全く客観性が担保されていません。その恣意的で、全く真実性が保障されない調査経過記録書とチェックシートを持出し、それらを突合して一致したと主張したところで、より真実からは離れていくのみです。よって、この記載についても、上記と同様、客観性が全く担保されておらず、その真実性、信用性は皆無と思われるところです。

 

次に、裁決書30頁のハ「当てはめ及び請求人の主張に係る検討」の()の記載についての請求人(代理人)の反論を述べてみたいと思います。裁決書は、「請求人は、別紙3の6の(1)のイないしハのとおり、①原処分庁は、前回調査担当職員が関係法人の存在を是認する発言をしたにもかかわらず当該発言を後になって翻し、変更することは、信義則に明確に反する旨及び②調査資料に是認事項は一般に記載・記録されないことを念頭に置き、前回調査において原処分庁は関係法人との取引を否認していない修正申告を是認処理するなど、関係法人の存在を是認したと認めるに十分な間接証拠の存在を認めるべきである旨主張する。しかしながら、上記ロのとおり、本件前回調査経過記録書における各記載は、前回調査に係る調査手続チェックシート及び準備調査経過記録書に記載された内容と一致するなど、他の証拠と整合することからすると、本件前回調査経過記録書には信用性が認められるところ、本件前回調査経過記録書には請求人主張の関係法人の存在を是認する旨の記載は見当たらない。」と、これまた前回調査経過記録書等の信用性を前提とした手前味噌の論理と表現であり、当該書面等を前提とする立論自体が既に崩壊しており、全く論評に値せず、審判所の主張に全幅の信頼性、信用性を見出すことはできません。(つづく)

文責(G.K

 

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