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国税不服審判所の役割とその存在意義 その35

2022/03/14

原処分庁を含む税務行政庁は、本件各関係法人には事業の実体がないとして新設法人に係る基準期間の納税義務の免除制度を適用することなく、調査等において請求人の利害関係者等の被質問者に供述、申述を強要したり誘導、誤導したりして、それによって得られた事実の基礎となる重要な部分に誤りのある申述(証言)を基に隠ぺい・仮装があったと事実認定し、結果として、誤った法律の適用をしているように思われます。これまでにも幾度となく述べてきたように、本件各関係法人は、いずれも適法に設立され、独立して企業活動を行う実体を有しており、一次下請業者である請求人からの受注工事を二次下請として実際の工事施工をしてきています。また、原処分庁は、消費税法に行為計算否認規定がないにも拘らず、根拠法令を示すことなく請求人から本件各関係法人への正常な外注費を否認して請求人の計算に引き戻し、人件費として計算し直しており、審判所はそれをそのまま認めています。

 

これまでに繰り返し述べているように、本件各関係法人は、いずれも独立して企業活動を行っていた実績があり、請求人が受注工事の積算、安全管理、進捗状況の管理、人工(にんく)の管理等を担当し、二次下請としての関係法人は、実際に現場での工事施工を担当しており、それらの業務内容は密接な関係を維持しながらも独立して業務を遂行しています。また、消費税法においても、二次下請である関係法人には事業実体がないとしてその直接証拠を示すことなく、「偽りその他不正の行為により税額を免れた」とし、また、本件更正処分等に至らしめる根拠法令が存在しないにも拘わらず、請求人から関係法人への正常な外注費を否認して請求人の計算に引き戻し、計算を引き直しているのです。このことは、明らかに日本国憲法84条が規定する租税法律主義に反するものです。

 

したがって、そもそも原処分庁がした本件税務調査に係る調査手続には違法がある上、本件各更正処分の理由付記には不備があり、本件当初各更正処分を取り消し、処分理由を差し替えて本件各更正処分をしたことは最高裁判決に反するものです。また、本件各更正処分等は信義則を蔑ろにした違法な処分であると認められ、請求人は通則法第70条第4項第1号に規定する偽りその他不正の行為によりその一部の税額を免れていたものでもありません。加えて、本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用等に係る業務及び取引は、請求人が行ったものとは到底認められず、既述したとおり、「当審判所において、本件各課税期間の消費税の課税標準額、納付すべき税額及び地方消費税の納付すべき税額を計算すると、原処分の額といずれも同額となる。また、本件消費税等各更正処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められないから、本件消費税各更正処分はいずれも適法である。」としているのは、審判所が独自の調査等を行なわず、恰も原処分庁の結論を自らが出した結論かのようにして、そのまま受け容れて裁決書に記載したものとしか言いようがありません。

 

このようにして、示された審判所の判断(裁決)は、自らの認定事実が絶対的正義であるかのように、「当審判所において、本件各課税期間の消費税の課税標準額、納付すべき税額及び地方消費税の納付すべき税額を計算すると、原処分庁の額といずれも同額となる」と結論付けていますが、既述したとおり、そうだとすると、原処分庁及び審判所のダブルで計算を誤っていることになります。計算を誤っているからこそ、請求人は、現在、更正の請求を経て審査請求を行い、そのうちの一部について誤りを認め、還付金が振り込まれ、その他については、現在も争訟中であることが何よりの証になります。このように、原処分庁はもとより、審判所の結論に至る立論には、ここまでみてきたように、数多くの誤謬が存在しています。

 

すなわち、当該立論は、「本件各関係法人に法人の事業の実体」がないことを前提とするものであり、その前提は、決して客観的事実を前提とするものではない、信頼性の低い、課税行政庁内部における主観を「事実」の基礎に置くものであるからです。よって、前提が崩れれば、一挙に、立論も崩壊します。上記に請求人が述べたような情況にあって、審判所は、その主体的判断として、「行政手続法第14条第1項本文の要求する理由の提示として欠けるものではない」とし、「請求人の主張は採用できない」と裁決(結論)することが可能であると考えているのでしょうか?

 

繰り返し述べてきているとおり、原処分庁は本件当初各更正処分等を取消し、処分理由を差し替えて本件各更正処分等としています。しかし、猶、本件各更正処分の理由附記には不備が多く、税額算出の計算過程が明らかではない上に税額の計算には誤りが多く、しかもその額は多額であり、加えて、本件各更正処分等は信義則に反しており、違法な処分との評価は免れません。また、本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用に係る業務及び取引は、請求人が行ったものではなく、この点、審判所がなした本件各課税期間の消費税の課税標準額、納付すべき税額及び地方消費税の納付すべき税額のいずれにおいても認定を誤っています(その詳細については、これまでに述べてきたところであり、省略します。)。したがって、本件消費税等各更正処分は絶対的正義どころか、いずれも適法性を欠きます。

 

例えば、既に累度に渡って述べてきましたが、原処分庁からの更正通知書によれば、請求書がないことを理由に借方の外注費は架空の外注費であるとして否認し、その一方で、貸方の同額の売上は、計上漏れとして所得に加算しています。これについては、既に述べてきているように、I税理士が売上を上げるためにそのような処理をしたと申述しており、C氏も「売上と外注費について正しい金額ではない」と申述しており、更正処分をするに当たって、当然、当該外注費相当分の過大計上額は正されるべきであり、そうすると、平成253月期の消費税の計算は、借方の外注費を1,000万円減少させるとともに、貸方の売上も1,000万円減少させなければならず、これに伴う正しい処理は、外注費、売上双方とも減少させなければならず、外注費だけを減少させる処理は誤りです。したがって、仕入税額が減少すれば、課税売上に係る消費税額分も減少させなければならないことになります。

 

次に、裁決書の34頁ロ過少申告加算税について述べたいと思います。審判所は、()法人税につき、「上記(7)のイのとおり、平成25年3月期及び平成26年3月期の法人税の各更正処分はいずれも適法であり、平成27年3月期の法人税の更正処分はその一部を取り消すべきであるが、過少申告加算税の基礎となる税額について更正処分の額と変動はない。また、本件法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、当審判所において、同条第1項又は第2項の規定に基づいて請求人の本件法人税各更正処分に係る過少申告加算税の額を計算すると原処分の額といずれも同額となることから、本件各事業年度の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。」としています。

 

しかしながら、法人税については、これまでにも述べているとおり、平成25年3月期、平成26年3月期、平成27年3月期及び平成28年3月期のいずれの期にも事実誤認及び計算誤りがあったからこそ、請求人は、それらについての更正の請求を行い、一部については還付加算金を付加した還付金を受取り、その他については、現在、「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知」処分の取消を求める審査請求を係属中です。また、「通則法第65条第4項に規定する正当な理由」が何を指すのかよく分かりませんが、おそらく、審判所、原処分庁を含む租税行政庁の主張は誤っているものと思われます。原処分庁の計算結果と審判所のそれとが同額であったことが、絶対的正義の如くの記載ですが、決して、そのことが「適法であること」を意味するものではなく、単なる強弁でしかなく、現に、原処分庁と審判所のダブルで判断と計算を誤っており、不適法としか言いようがありません。したがって、審判所のこの点の判断(裁決)も、明らかな誤りです。

 

続いて、裁決書の34頁ロ過少申告加算税についての()復興特別法人税について述べてみたいと思います。審判所は、「上記(7)のロのとおり、本件復興特別法人税各更正処分はいずれも適法であり、また、本件復興特別法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件復興特別法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、当審判所において、同条第1項又は第2項の規定に基づいて請求人の本件復興特別法人税各更正処分に係る過少申告加算税の額を計算すると原処分の額といずれも同額となることから、本件各事業年度の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。」としています。しかしながら、上記と同様の論理で、審判所の判断には明らかな誤謬が存在し、請求人においてこれを受け容れることはできません。(つづく)

文責(G.K

 

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