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軽減税率導入論議の行方 その2

2015/09/15
再来年度に消費税率が10%に引き上げされることに伴い、軽減税率の導入論議で財務省が示した案を、自民・公明両党の与党税制協議会が議論していると報道されています。

ところが、財務省が示したその案は、インターネットを利用した枠組みが前提となるもので、国民(消費者=納税者)に煩雑な手続きを強いるものであるところから、与党内からすらも、高齢者への配慮が欠如しているとして批判が高まっているようです。

 

財務省案の骨子は、消費者が小売店の店頭で「酒類を除く飲食料品」を購入する度にレジでマイナンバーカードを提示して消費税10%を支払うと、税率2%分の金額データが政府に新設されるデータセンターに集積されます。後日、パソコンなどで申請すれば、2%相当分が給付されますが、この給付の上限は4000円程度とされています。この他、全国の小売店や飲食店など約90万店にマイナンバーが読み取れる情報端末を整備、配置することになり、中小事業者には、その情報端末導入を補助するというものです。

 

この案が公表されるや、マスコミ各社は、連日、批判を展開しています。それには、消費者が買い物をするに当たり、大人も子供もマイナンバーカードを持ち歩かなければならない、事業者の情報端末導入の費用負担、負担緩和対象商品とそうでない商品との区分の適正性の検証等の諸問題点に対し明確で、有効な解決策が提示されていないことが挙げられます。また、与党内からも、「足腰の弱った人は外出もままならず、マイナンバーカードで買い物できない」「軽減税率のまがい物」といった批判が巻き起こっているようです。

 

元衆院議長であった自民党の長老は、財務省案の負担緩和策である給付案について、「財務省案の内容は率直に言って、財務省が考えるにしては非常にみっともない案です。というのは、農水省の統計によれば、食料の最終消費量は90兆円...?そんなあるの?例えば2%とすると、90兆だから1兆8千億でしょ。ところが、今度還付をするという金額は、4000円とすれば、日本人が1億3000万人いるから5千数百億円でしょ。1兆いくらの差は何なんだというのは必ず出てくる」として痛烈な批判を展開していると伝えられてもいます。

 

このように、財務省案は、消費者が小売店の店頭で「酒類を除く飲食料品」を購入する際に税率10%分の支払いを済ませ、後日、2%分に見合う金額の給付を申請する仕組みですが、給付額の確認や口座への振り込み申請については、インターネットを通じて手続きをすることが求められているところから、高齢者あるいはインターネットに不慣れな人には難しい制度となっています。

加えて、この負担緩和策は、多くの国民にとって、負担額が給付額を上回る見通しであることが明らかになったとする報道もなされています。

 

いずれにしても、軽減税率導入論議で飛び出した財務省の増税負担緩和策は唐突で拙速感の否めないものであり、それは、近い将来、銀行口座と個人のマイナンバーを紐付けて、個人の財産を国が正確に把握できるようになることに不安感と不信感を抱かせるものにもなっています。それに併せ、国民の買い物の情報を管理できるようになることは、重要な情報の漏えいの危険やプライバシー保護の問題に加え、国家の裁量が一層増えることに繋がることは間違いありません。

再度、識者、実務家や現場の声を十分に組み上げ、机上の議論に止まることなく、実効性のある制度を構築し、我が国を行き過ぎた監視国家にならないようにする必要があると考えています。


文責 (G・K)

 

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