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富裕層への課税とキャピタルフライト

2015/09/10
先日の新聞※に、国税当局の富裕層(大口資産家)への課税強化についての興味深い報道がなされていました。
課税強化といえば、確かに、本年1月には所得税や相続税の最高税率を引き上げられ、7月には有価証券1億円以上の保有者の海外移住による課税逃れを防止する「出国税」が導入されています。
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※2015年9月3日 日本経済新聞
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この出国税の趣旨は、株式などの有価証券に係る金額の合計額を1億円以上保有している者(富裕層)が出国しようとする(非居住者となる)ときは、その時点において、株式などの有価証券を譲渡したものとみなして課税しようとするもので、富裕層のキャピタルフライト(資本逃避)の防止を図ったものといえます。

今や国の借金が1,000兆円を超えており、課税庁としては、いわゆる「取れるところから取る」という強い姿勢が求められるのは当然のこととして、問題は、その富裕層の選定基準にあるように思います。国税当局が注視するその富裕層の選定基準については、10の選定基準があるとのこと、また、各税務署にあっては、「継2(けいに)管理事案」という区分で管理、「個人調査ファイル」を作成して大口資産家の資産状況や資金の流れを厳密に管理しているとのことです。
  
税務署では、「確定申告書」や所得2千万円超の納税者に提出を義務づける「財産債務明細書」、金融機関などが個人との取引内容を報告する「支払調書」などの資料を基に対象者を抽出し、その中から保有資産の収益性や流動性が高い人物を重点対象としてリストアップし、税務調査していると報道されていますが、その選定基準について国税庁は、「コメントは差し控える」としているようです。

そこで、富裕層といわれる大口資産家は国内に何人いるのか興味があるところですが、その正確な統計はないものの、国税OB らによれば、国内の大口資産家は「少なくとも2万人は超えている」というのが共通した見解のようです。
富裕層は国内外に資産を持ち、高度な節税対策を講じているケースが多いと思われているところから、課税庁としては税務調査の体制も強化しているようです。


 「超富裕層」といわれる国内外に数十億円規模の資産を持つ大口資産家について、国税当局は、昨年7月から東京、大阪、名古屋の各国税局に専門チームを設置して情報を収集しているようです。
先に触れたように、国の借金が1,000兆円を超えているところから、将来的には、大口資産家の選定基準が下がることも考えられ、その程度によっては、締め付けのきつい日本から税率の低い新興国などに富裕層のキャピタルフライトが増えるかもしれません。
ともあれ、国税当局と富裕層の財産をめぐる「闘い」は始まったばかりのようです。

文責 (G・K)

 

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